『鬼滅の刃 遊郭編』で戦い抜いた宇髄天元の実力を、空想科学的に考察したら、とんでもなかった!
こんにちは、空想科学研究所の柳田理科雄です。マンガやアニメ、特撮番組などを、空想科学の視点から、楽しく考察しています。さて、今日の研究レポートは……。
アニメ『鬼滅の刃 遊郭編』が、見事に完結した!
苦難に満ちた戦いが、華麗に描かれた全11話であった。最終話は、上弦の陸・妓夫太郎(ぎゅうたろう)と堕姫(だき)の過去が、あまりにも悲しかった。
しかし本稿では、やっぱり宇髄天元について考察したい。
忍の家系に生まれ、3人の妻を持つ、ド派手な“音柱”。
最初は高圧的なヤツ!?とも思ったけど、善逸や伊之助とも対等に言い合ったりして、ぜんぜん上から目線ではなかった。ムキムキねずみたちを育成していた。そして、妻たちに「俺は派手にハッキリと命の順序を決めている まずお前ら三人 次に堅気の人間たち そして俺だ」と言っていた。
すごくいいヤツだ!
そんな天元は、妓夫太郎に「選ばれた才能だなあ」と言われたときに「俺に才能なんてものがあるように見えるか?」と返しながら、悲鳴嶼行冥や、時透無一郎や、煉獄杏寿郎のことを思っていた。
実力は彼らに及ばない、と自ら認めていた……ようにも思われる。
だが筆者は、決してそんなことはないと断言できる。
劇中で描かれた凄絶な戦いっぷりからも充分伝わってくるが、空想科学的に考察すると、その実力はモノスゴイのだ。
◆日輪刀の二刀流!
派手なことの好きな天元は、日輪刀も派手である。
まるで包丁のような巨大な刃を持つ刀の2本組み。天元は身長198cmという堂々たる体躯だが、画面の描写から推定すると、この日輪刀の全長は天元の身長の7割ほどもある。ということは、一つが1m38cm!
細かく測定すると、刀身の長さは86cmで、幅は19.6cmもある。
その刀身には、長径16cm、短径8cmほどの楕円の穴があいている……など、形状を細かく観察して計算すれば、推定重量はなんと7.1kg。通常の日本刀は1kgほどだから、7本分だ。
しかもこれが1本の重さであり、天元は左右の手に1本ずつ持って振り回す。それだけでもすごい。
◆人間とは思えない握力
この2本の日輪刀、柄の部分が鎖でつながれているのだが、天元はオドロキの使用法を見せた。
上弦の陸・妓夫太郎は、天元の火薬玉を警戒して、充分な間合いを取っていた。
ところが、天元の日輪刀が頬を掠めた! 妓夫太郎には、刀身が伸びたかのように感じられたが、それは天元が片方の刃の先端を指で挟んで、もう片方の刀を飛ばしてきたから!
なるほど、こうすれば、刃先は「2本の刀の全長+鎖の長さ」まで届き、間合いを超えるだろう。鎖の長さが60cmなら、なんと全長は3m36cmになる!
だが、これを実践するのはメチャクチャ大変だ。妓夫太郎は「どういう握力してやがる」と驚いていたが、確かにすごい握力が必要である。
もっとも強い握力を必要とするのは、妓夫太郎に向かって飛んだ刀が、鎖が伸び切ってピタッと止まった瞬間だ。
「瞬間」とはいえ、高速で飛ぶ物体を距離ゼロで止めることはできないから、ここでは鎖が伸び切ってから、刀が静止するまでに動いた距離を1cmと仮定しよう。
刀はかなりの速度で飛んでいったから、そのスピードを時速150kmとすると、飛んでいった刀にかかったブレーキ力は63tで、それを指ではさみつけて支えた天元の指の力は126tだ! 信じられない!
しかも、このように両側からはさむ場合は、親指も人差し指も126tを発揮したはずである。もし他の指も同じ力を出せるとしたら、この“音柱”の握力(親指を除く4本の指による力)は、なんと504t。大人の平均的握力が50kg弱だから、その1万倍……!
◆刀で爆発を起こす!
もう一つ、天元の日輪刀の使い方で注目したいのは、地面に穴をあけたことだ。
屋根を走っていた天元は、地下に何かがあることに気づくと、地面に下りて「音の呼吸 壱ノ型 轟!!!」と唱えるや、2本の日輪刀を交叉させるように振った。
すると、ものすごい爆発が起こり、地面に直径2mほどの穴があいた!
原作マンガのナレーションによれば「二刀流の宇髄天元 その太刀は爆発する 桁違いの威力である 喰らって生き延びた者がいないので 今のところ仕組みは不明」。
オソロシすぎる話である。
天元は爆薬も使って戦うが、ここでの爆発はどうやら刀の一振りで起こしたと思われる。だが、そんなことが可能なのだろうか?
空気中で刀を振ると、空気抵抗によって運動エネルギーが失われ、熱に変わる。
通常はわずかなものだが、天元の二振りの速度がものすごかったら、瞬間的に莫大な熱が発生し、周囲の空気を急膨張させて、爆薬の爆発と同じ現象を起こした……のかもしれない。
かなり強引な解釈だけど、筆者にはこれしか思いつかない。
その場合、穴の深さを3mと仮定すれば、天元は505万J(ジュール)の熱を発生させたはずである。
そして、空気抵抗によってその熱が生まれるためには、彼は左右の日輪刀を秒速1万9400m=時速7万kmで振るった計算になる。
時速7万km=マッハ57! もしこの人が野球をやったら、そのホームランの打球はマッハ100を超え、地球どころか太陽の重力をも振り切って、宇宙の彼方へ……というワケのわからないことになる。ド派手すぎる!
――これほどまでにすごい天元が、妓夫太郎の“血鎌”の毒に冒され、片目と片腕を失ってしまった。上弦の鬼の強さには慄然とするが、相手が毒の鬼でなければ、もっとド派手な活躍ができたのではないかと思う。
だが、宇髄天元は生き延びた。柱を引退して、今後は後進を育成していく。派手に見えながら、実は堅実な天元の働きが、その後の鬼殺隊に欠かせないことは言うまでもない。