メタバースの本命と呼ばれる、フォートナイトとEpic Gamesの凄さ
Facebookグループが、Meta社に社名変更することを発表してから一躍脚光をあびた「メタバース」ですが、最近は一時の異様な注目は一段落して、少し落ち着きを見せているようです。
ただ、そんな中、メタバースの本命の一つといわれるフォートナイトにおいて、日本の起業家をモデルにしたゲームが、約100日間で100万人にプレイされてちょっとした話題になっているのをご存じでしょうか。
参考:フォートナイトで公開された「AI ロケスタくん」の来場者数が100万人を突破 暴走した巨大ボスと対決
もちろん、いわゆるゲームであれば100万人以上プレイしているゲームはたくさんありますので、約100日で100万人という数値は全く話題にならないでしょう。
ただ、このニュースの興味深いのは、フォートナイトの中において企業や一般人が作ったゲームが、こうやって世界中の大勢の人に遊んでもらえる可能性が見えている点です。
世界4億人のプラットフォーム
フォートナイトは、無料でプレイできるバトルロイヤルゲームであり、世界に4億人を超える登録ユーザーがいるといわれている巨大なプラットフォームです。
8300万人以上のプレイヤーが月に1回はログインしているといわれており、2021年の売上は58億ドルを超えているそうです。
ただ、フォートナイトがメタバースの本命の一つと呼ばれるのは、単にバトルロイヤルゲームが人気があるからだけではありません。
過去には米津玄師さんや星野源さんが、フォートナイト内でライブを開催したことも話題になりましたが、フォートナイトの中ではバトルロイヤル以外にもさまざまな活動が行われているのです。
参考:星野源バーチャルライブで考える、メタバース本命の1つであるフォートナイトの可能性
個人でもゲームを作れる「クリエイティブモード」
特にフォートナイトがメタバースと呼ばれる理由として象徴的なのは、フォートナイト内に「クリエイティブモード」とよばれる、自分で自由にコンテンツを作成するモードが存在する点でしょう。
この「クリエイティブモード」では、マインクラフトのように自分だけの島をデザインできるだけではなく、自分でバトルロイヤルとは全く別の独自のゲームを開発することすら可能になっているのです。
前述の100万人にプレイされたゲームというのも、この「クリエイティブモード」で製作されたゲーム。
フォートナイトに特化したメタバース製作スタジオNEIGHBORが、アル株式会社の代表でもある、けんすうさんこと古川健介氏のマスコットキャラクター「ロケスタくん」を様々な形でゲーム化したものの一つなのです。
参考:「クリエイターに使ってもらうクリエイティブ」を作るのがトレンドになってるらしい
すでに、フォートナイト内にはたくさんの「クリエイティブモード」のゲームが提供されており、日々多くのプレイヤーがプレイしています。
しかも、プレイヤーがクリエイターをサポートするという宣言をすると、そのプレイヤーの課金の一部がクリエイターに支払われるという、クリエイターにとっての収益モデルも確立されているのです。
先週には、Meta社のメタバースであるHorizon Worldsが、2022年末までに達成したい月間アクティブユーザー数を50万人から28万人に下方修正し、アクティブユーザーを集めるのに苦労しているという報道がされました。
参考:MetaのHorizon Worlds苦戦。目標登録者数を下方修正しているらしい
大金を投下しているMeta社ですらゼロからメタバース空間を作るのは、難しいことが良く分かるニュースと言えます。
一方で、フォートナイトには月間8300万ものプレイヤーがログインしているため、「ロケスタくん」のような世界的には知名度がなかったキャラクターのゲームが、世界中の100万人にプレイされるという現象が起こりうるわけです。
Epic Gamesはゲーム開発エンジンの開発元
さらにフォートナイトがメタバースの本命と目されている理由の一つが、フォートナイトの運営会社であるEpic Gamesが、ゲーム開発エンジンの開発もしている点です。
特に最新のゲーム開発エンジンのUnreal Engine 5が、映画マトリックスの世界を再現して話題になったのは記憶に新しい方も多いと思います。
参考:映画マトリックスの世界を完全再現するゲームデモに感じる「メタバース」の未来
現在のところフォートナイトの「クリエイティブモード」は、基本的にフォートナイトの中のツールでゲーム開発を行います。
そのため、Unreal Engine 5でつくったマトリックスのリアルなCG世界を簡単にフォートナイトに持ってくるというわけにはいかないようですが、すでにフォートナイトとUnreal Engine 5自体は連携済み。
10月にはフランスの歌手であるアヤ・ナカムラさんのバーチャルライブが、Unreal Engine 5を活用して提供され、多くのプレイヤーが楽しんでいました。
参考:Unreal Engine 5 を活用して Aya Nakamura がフォートナイト サウンドウェーブ シリーズで音楽のファンに感動を届ける
当然、今後フォートナイトの「クリエイティブモード」がよりUnreal Engine 5と連携を深めていき、よりリアルなゲームも開発できるようになる可能性は高いわけです。
ドラゴンボールとのコラボも成功
こうしたフォートナイトのメタバースとしての可能性には、既に多くの企業が注目しており、様々なコラボが実施されています。
特に日本人にとって身近なのは、フォートナイトとドラゴンボールのコラボでしょう。
8月に実施されたこのコラボは、フォートナイトのメインであるバトルロイヤルゲーム自体がドラゴンボールとコラボを実施したもの。
ゲーム内でドラゴンボールのキャラクターが使えるだけでなく、プレイヤー自身が普段ではありえない、かめはめ波や觔斗雲を使って戦えるというファンにはたまらないコラボになっていました。
これは、同時期に公開されたドラゴンボールの映画「ドラゴンボール超 スーパーヒーロー」のプロモーションも兼ねて実施されたものだそうで、このコラボの効果もあり、米国での同映画の興行収入は3080万ドルを突破。
北米で公開されたアニメ映画史上、五本の指に入る記録を生み出す結果となったようです。
参考:フォートナイト とドラゴンボールZ、大型IPのコラボが意味するもの:「広告なのに広告だとまったく感じさせない、理想形だ」
フォートナイトは、4億人を超える登録者がいると言われる一方で、24才以下のプレイヤーが62%を占めるプラットフォームであり、35才以上のプレイヤーは15%程度しかいないようです。
参考:Fortnite Usage and Revenue Statistics (2022)
そのため、多くの年配の方にはメタバース以上に「フォートナイト」と言われるとピンと来ない方が多いかもしれません。
ただ、ある意味10代20代にとっては、既にフォートナイトは映画のプロモーションにも成果が出るメタバースとして、確立されている空間とも言えるわけです。
いまいちメタバースがピンと来ないという方は、ちょっとフォートナイトの世界を覗いてみてはいかがでしょうか。