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Little Parade太志の現在地<後編>「生活の中の小さな思いを掬い“向き合える”音楽を作る」

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/THECOO

『止まらない風ぐるま』という強い思い

1stミニアルバム『止まらない風ぐるま』(1月27日発売/初回限定盤)
1stミニアルバム『止まらない風ぐるま』(1月27日発売/初回限定盤)

Aqua Timez解散から約3年。ボーカル・太志の新プロジェクトLittle Paradeが、ファンコミュニティfaniconで「Little Padade Project」という、ファンと“希望”を共有する新たな“場所”で活動をスタートさせ2年。そのプロジェクトの現時点での全貌ともいうべき1stミ二アルバム『止まらない風ぐるま』が、1月27日に発売された。すでに配信リリースされている「ユニコーンのツノ」、「色彩の行方」を含む全6曲。情景が浮かぶ詩、絵と、音楽が融合するLittle Paredeの作品は今も進化を続けているが、太志のバンド解散からの心模様を鮮やかに映し出したミニアルバムになっている。太志にこのアルバムに込めた思いをロングインタビュー。<前編>に続き<後編>をお届け。アートワークを担当するMakoto Tonoにも、イラスト制作秘話を聞かせてもらった。

「“幸福感”の感じ方は自分次第なんだということと改めて向き合った」

「色彩の行方」はファンから空の写真を募集し、それを使ったMUSIC VIDEOを制作し、歌詞にはAqua Timezの曲のタイトルが入っていたり、ファンから大きな反響があった曲だ。この曲も大介がアレンジを手がけている。太志の言葉は、様々なことを“気づかせて“くれる。

「これもメロディありきで作った曲で、入れようと思って作ったわけではないのですが、必然なのか必要だったのか、Aqua Timez時代の曲のタイトルがバチっとハマって、その偶然にも感謝しています。俺みたいな、自分主体で生きてきてしまった人間も、最近思うようになったのは、悩みごとはあるけど、その時もちゃんと心臓は動いていて、酸素があって、夜が来てちゃんと眠くなる、ということを思うようになって。そう思うと俺が勝手に色々と悩んでるだけなんだなと思うし、でもちゃんと世界はサポートしてくれているんだなって。これまで生きながらえてきたのは、自然というものにサポートされてきたからです。そんな中で絶望か希望、どちらかを選ぶのは自分で、でもずっと太陽が照らしてくれているという事実は忘れがちで、地面はちゃんとあって歩くか歩かないかは、自分が決めることです。便利な世の中なので、履き心地のいい靴を選ぶこともできるし、大きなサポートを受けているんです。でも受け取っていると感じない以上は、受け取っていないことになるので、そこで幸福感の違いが出てくるのだと思います。そういうことを僕はこれから書いて、歌っていくのかなって思っています」。

「“今”をちゃんと生きているということを、ファンにも伝えたいし、Aqua Timezのメンバーにも聴いて欲しいと思って書いた『寂恋』」

「寂恋」は唯一のラブソングだ。そしてバンドへの思いともリンクしているように聴こえる。<きちんと、あの日を引きずりながら>という言葉が印象的だ。

「片思いとか失恋とか、人と付き合うことから勉強することがあって、ひとりの人に片思いとか失恋するのは、当事者はものすごくシリアスだし心に残ります。でも俺の曲はラブソングって少なくて、それよりも自分のライフスタイルの中で見つけた、小さなヒントみたいなものを散りばめるというのが、自分のスタイルだと思うんです。それこそ自粛している中で、平和だったこととか、平凡な日々を思い出すことが多くなりました。バンドへの思いとリンクしているかもしれません。今の自分に立ち返って、メタファーじゃないけど、最後の部分は今の自分のテーマになっているかもしれませんね、『ユニコーンのツノ』と同じように。俺は普段は割と適当に生きる方で、でもバンドでやってきたことは適当に引きずるわけにはいかないなので、そこは大切に引きずっています。でも今をちゃんと生きているということを、ファンにも伝えたいし、メンバーにも聴いて欲しいと思っています。恋の歌だけど、そうじゃないところでアルバムが終わっているというのもいいなって思いました。自分の性愛の対象だけではなく、仲間や元メンバー、昔の友達とか、ばあちゃんのこととか、もう会えない人に対しても言えることなので」。

6曲のミニアルバムだが濃密で心に残してくれる、置いていってくれるものが多い作品だ。太志のボーカルがさらに深く深化し、説得力が増し、その言葉の響きに聴き手の心は震える。

「サラッと聴ける音楽も嫌いじゃないですけど、俺は性格的に、歌詞を見ながら聴くくらいのものが好きで、自分で作るものもそうなっていると思います。歌はまだまだ努力しなければいけませんが、そう言っていただけると嬉しいです。そこは自分の中で、今までは音楽を点で捉えていたので、もっと波打つ、動的なものを目指しています。そうすると絶対歌詞にもその魂は宿るし、色々な人に伝わると思っています」。

「自分の描き方が、詩的なものだったということを、太志さんと出会い、自覚しました」(Makoto Tono)

全てのイラストを担当したMakoto Tonoにも制作秘話を聞かせてもらった。歌詞とメロディ、そしてそこにイラストが加わることで、聴き手の想像力が掻き立てられ、芳醇な時間を提供してくれる。初回盤に付いているブックレットに触れ、曲を聴いていると言葉が際立ったり絵が際立ったり、それぞれから思いが薫り立ってくる。

『止まらない風ぐるま』(通常盤)
『止まらない風ぐるま』(通常盤)

「とにかく自由に、楽しくやらせていただきました。ペンを動かしながら感覚と向き合っていった、そんな感覚です。インスタにあげている絵の中にも、描きながら見えてきたものを自分が受け取って、方向性を決めるというものもありました。元々それが詩的なものだったんだなっていうのは、太志さんに声をかけてもらって自覚しました。ジャケットは僕が以前描いたものをそのまま使っていただきました。ミニアルバムのタイトルに“風ぐるま”という言葉が入っていますが、太志さんと風ぐるまをそのまま描くのではなく、という話をしましたが、図らずも、ジャケットの少年が、後ろ手に持っているのは花だったのですが、これが風ぐるまに見えなくもないということになりました。他の楽曲に関しても自由に描いて送って、太志さんと色々話し合いながら、作り上げていきました。太志さんの歌詞に引っ張られることもありましたが、でも歌詞をそのまま絵としてストレートに表現するのは、粋じゃないなと思いました。僕も“言葉”が好きなので、歌詞は深く読みます。『ユニコーンのツノ』の時もそうでしたが、言葉だけではなく、音楽として繰り返し聴いてそこから感じることが、本質を捉えていることだと思っています。その感覚を信じて描いています。今回の作品の中では『ウィスキー』に描かれている世界観が特に好きで、デモの段階から聴かせてもらっていましたが、自分の父親のことを思い出して、涙が出てきました。この曲のイラストは僕が以前に撮った写真を使ったのですが、曲を聴いて、観てくれた人がどう感じるのか楽しみです」(Makoto Tono)。

「“向き合える”音楽と、感覚を“集中”させるエンタメを作っていきたい」

「今回、まずひとつかたちに残るものを作れて、これを手にしてくれた人が、部屋に飾ってくれていることを想像するとすごく嬉しいです。カフェのBGMのような音楽もいいですが、こうやって“向き合う”音楽とか、絵本に触れて開くという行為は、とても贅沢なものだと思います。今は多くの人がスマホの画面しか触っていなくて、絵本で紙の触感を感じるという行為は貴重になっていると思います。そんな“集中”できるものをこれからも提供していきたいです。これがエンタテインメントの真髄はなのかなと思っています」(太志)。

Aqua Timezの1stアルバムは『風をあつめて』、そしてLittle Paradeの最初の一歩の作品集が『止まらない風ぐるま』。アーティスト太志の第2章が、<きちんと、あの日を引きずりながら>、そして自由な風に吹かれながら、始まった。

※【Little Parade Projectオリジナルマスク】プレゼント

「Little Parade Project」に1/31までに入会すると、Little Parade Project オリジナルマスクをプレゼント中。

Little Parade Project

Little Parade オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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