Yahoo!ニュース

2018年、気軽に楽しめる期待の天文現象とは?

縣秀彦自然科学研究機構 国立天文台 准教授
今年は天文現象の当たり年 皆既月食が2回も!(ペイレスイメージズ/アフロ)

2018年を迎え、今年の主な天文現象について紹介します。ここで紹介する天文現象は、難しい専門知識や特別な観測装置が無くても「基本的には」楽しめるもの、そして、都会でも観ることが出来る現象ばかりですので、普段、夜空を見上げることが無いという皆さんにも自信を持ってお勧めします。そして、関心が高まったら天体望遠鏡を備えた公開天文台施設や、空が真っ暗な天体観望の適地に出かけるのもよいでしょう。

皆既月食が2回も

1月31日(水)の深夜と7月28日(土)の明け方に待望の皆既月食が起こります。日本で見ることのできた前回の皆既月食は、約3年前の2015年4月4日でした。今年1月31日の皆既月食は、日本全国で部分食の始めから終わりまでを見ることができますが、7月28日は、おおよそ東北以西で皆既食を見ることができ、月は皆既食のまま沈みます。それ以外の地域では、月は皆既食になる前に沈みます。皆既月食のうち、次に日本全国で部分食の始めから終わりまでを見ることができる皆既月食は、2022年11月8日まで待たねばなりません。

1月31日の皆既月食

この夜、満月は、20時48分に欠け始め、21時51分に皆既食となります。皆既食となった月は、通常、ほのかに赤銅色に見えます。皆既食は23時08分に終わり、その後は徐々に欠けた部分が小さくなって、24時12分頃に部分食が終わり通常の満月に戻ります。とても観察しやすい時間帯の月食なので、ご家族で楽しんでみてはいかがでしょう。

1月31日の皆既月食は、全国各地で欠け始めから満月に戻るまで全行程が観察出来る貴重な皆既月食です。 提供:国立天文台天文情報センター
1月31日の皆既月食は、全国各地で欠け始めから満月に戻るまで全行程が観察出来る貴重な皆既月食です。 提供:国立天文台天文情報センター

なお、詳しい情報は、国立天文台の皆既月食(2018年1月31日)特設ページをぜひご覧ください。国立天文台では、この皆既月食をより多くの方に楽しんでいただけるよう「皆既月食を観察しよう 2018」ウェブ・キャンペーンを行います。ご参加をお待ちしています。

地球の影の中を通過する月の動き。地球の影には本影と半影があり、本影に満月が入ると欠けて見えます。 提供:国立天文台天文情報センター
地球の影の中を通過する月の動き。地球の影には本影と半影があり、本影に満月が入ると欠けて見えます。 提供:国立天文台天文情報センター

7月28日の皆既月食

一方、7月28日(土)の明け方の皆既月食は、早朝3時24分に満月が西の空で欠け始め、皆既食は4時30分に始まります。このため、日本からは月食中に月が西の空に沈んでしまう「月没帯食」という現象になります。南西部の一部を除いた北海道全域と青森県・岩手県のそれぞれ北東部では、皆既食になる前に月が欠けたまま沈んでしまいますが、日本各地その他の地域では、皆既食の状態で月が沈んで行きます。

 詳しい情報は、国立天文台の星空情報2018等に事前に発表になりますので、ご活用下さい。

15年ぶりの火星大接近

太陽系で地球の一つ外側の軌道を公転している惑星・火星は、約2年2カ月ごとに地球に接近し観察の好機を迎えます。しかし、惑星の軌道が太陽を中心とした円ではなく、太陽を一つの焦点とした楕円軌道のため、接近する距離は毎回同じではありません。特に火星の軌道離心率が大きいため、火星は接近ごとに地球から見える明るさや大きさが大きく異なります。今回の接近は2003年以来15年ぶりに「大接近」と呼ばれる好条件です。そして、その観望の好機が、2018年の夏に訪れます。2018年の夏は、南の低い空に赤く不気味に輝く火星に注目しましょう。

15年ぶりの火星大接近。7月31日には地球に最接近し、その距離は地心距離で5,759万km。 提供:国立天文台天文情報センター
15年ぶりの火星大接近。7月31日には地球に最接近し、その距離は地心距離で5,759万km。 提供:国立天文台天文情報センター
2018年 火星と地球の位置関係。公転周期1.88年の火星を公転周期1年の地球が追い抜いて行く。太陽の反対側で最接近。 提供:国立天文台天文情報センター
2018年 火星と地球の位置関係。公転周期1.88年の火星を公転周期1年の地球が追い抜いて行く。太陽の反対側で最接近。 提供:国立天文台天文情報センター

火星は大接近の際に、天体望遠鏡を用いてその表面を観察すると表面の模様や白い極冠を観ることが出来ます。しかし、天体望遠鏡が無くても、また都会の空からでも、梅雨明け以降11月頃まで、南天のいて座からやぎ座の付近を移動する火星の動きを追うだけでも楽しい体験となることでしょう。特に地球に最接近する7月31日(火)前後には、マイナス2.8等級という明るさに達します。不気味なぐらいに明るく赤く輝くその様子は必見ものです。

2018年の火星 天球上での動き。 星座の中をまさしく「惑わす星」となって行ったり来たり。その動きにも注目しよう。 提供:国立天文台天文情報センター 
2018年の火星 天球上での動き。 星座の中をまさしく「惑わす星」となって行ったり来たり。その動きにも注目しよう。 提供:国立天文台天文情報センター 

火星大接近の詳しい情報は、国立天文台の火星大接近2018特設ページをご覧ください。

肉眼で楽しめるその他のお勧め天文現象

8月13日前後 ペルセウス座流星群 (月明かりが無く、今年は最良の観察条件)

12月14日前後 ふたご座流星群 (同じく 今年は最良の観測条件)

この他、肉眼で都会からでも楽しめる天文現象を是非、気軽に多くの方々に楽しんでいただきたいと、国立天文台では、ほしぞら情報2018にて月ごとに紹介しております。ぜひ、今年もご活用下さい。 

自然科学研究機構 国立天文台 准教授

1961年長野県大町市八坂生まれ(現在、信濃大町観光大使)。NHK高校講座、ラジオ深夜便にレギュラー出演中。国際天文学連合(IAU)国際普及室所属。国立天文台で天文教育と天文学の普及活動を担当。専門は天文教育(教育学博士)。「科学を文化に」、「世界を元気に」を合言葉に世界中を飛び回っている。

縣秀彦の最近の記事