マーク・ウォルバーグ、10代で犯した暴力事件の被害者に詫びる
「ディパーテッド」でオスカー候補に上がり、4人の子をもつ家族思いのパパとして知られるマーク・ウォルバーグは、16歳の時、刑務所入りをしている。その罪に対し、ウォルバーグは、2014年、恩赦を求める嘆願を出した。
しかし、その後、手続きをこのまま進めたいのかという仮釈放庁からの問い合わせにウォルバーグはまったく答えることをせず、この件は棄却されている。それは意図的だった。ウォルバーグは、最新作「Deepwater Horizon」が上映されたトロント映画祭で、恩赦を求めたのは間違いだったと告白している。
「(恩赦の嘆願をするべきだと)提案を受けたからやったんだが、それは間違ったアドバイスだった。するべきではなかった。そんな必要はない。僕は28年間、間違いを正そうと生きてきたんだ。それを証明する紙なんか、いらないよ。そうしろとプッシュされてやってしまったが、もう一度、あの頃に立ち返るなんて嫌だった」と、ウォルバーグは観客の前で告白している。
ウォルバーグは、9人きょうだいの末っ子として貧しい家に育った。家にはカメラがなかったため、子供の頃の写真は4、5枚しかない。10代初めにさまざまなトラブルを起こすようになり、1988年、ベトナム系の男性に暴力をふるって、3年の有罪判決を受けた(実際には45日で釈放)。被害者の男性は、ウォルバーグによる暴力のせいで片目の視力を失ったとされる。
釈放後、ウォルバーグは、家族の助けもあって、あらためてキリスト教に目覚めた。映画の撮影中にもお祈りの時間を必ず作るという彼は、神に感謝することで新しい人生を送れるようになったと、筆者とのインタビューで語っている。
「悪い状況に直面した時、人は、『神様、お願いです。助けてください。もう二度としませんから』とすがる。でも、その後すぐ忘れてしまう。神様が助けてくれたのに、神様のことを忘れてしまうんだ。僕は、歳を取るにしたがって、すべて神様のおかげだと思うようになった。神様に感謝するし、神様が望むような人間になろうと努力をする。神様は、理由があって、今の立場を僕に与えてくれた。神様が誇りに思ってくれるような人間になりたい。神様の良きしもべであり、良き夫であり、良き息子、叔父、友達、弟、ご近所さん、リーダーでありたい」(2009年秋のインタビューより)。
高校を中退している彼は、2012年にオンラインのコースを取り始め、2013年、42歳にして高卒の肩書きを得た。2012年の筆者とのインタビューで、ウォルバーグは、そのことについて、このように語っている。
「高校を出なかったのは、僕はずっと後悔してきたことのひとつだった。わが子に、『パパは学校に行かなかったのに、どうして私は勉強しなきゃいけないの?』と言われたくなかったしね。幸い、映画の撮影中は、待ち時間がたくさんある。その時間を利用しようと思った。教育はすばらしい。ほかの人たちにも、やり直すことを勧めたいよ」。
そんな彼だからこそ、過去に自分が起こした罪に背を向けるような要請をしたことを後悔したのだ。だが、おかげで良いこともあった。これがきっかけとなり、ウォルバーグは、再び被害者と彼の妻、娘に会い、直接、自分がやったひどい罪について詫びることができたのだという。そして、被害者が片目の視力を失くしたのはウォルバーグの暴力のせいではなく、その10年以上前に起きた別のことが原因だったとわかった。「それを知ってほっとした」と、彼は胸の内を明かしている。
ウォルバーグは、2001年、若者を助ける目的のチャリティ、「マーク・ウォルバーグ基金」を設立している。恩赦を嘆願する書類の中で、ウォルバーグは、「私が慈善活動をするのは、自分の過去を忘れてもらうためではありません。逆に、私は、人に私の過去を覚えていてほしいと思っています。人生は変えることができる、償うことができるという例でありたいと思うからです」と述べた。恩赦を求める理由として、ウォルバーグは、彼が兄たちと経営するハンバーガー店ウォルバーガーズをカリフォルニアに出店するにあたり、土地使用権のライセンスを取ることを第一に挙げていた。