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今秋発売iPhone 16の全モデルで対応か、「Apple Intelligence」用チップを考察

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
(写真:REX/アフロ)

アップルは、今秋発売予定のスマートフォン「iPhone 16」に搭載する半導体の発注量を引き上げたもようだ。同社は、次期オペレーティングシステム「iOS 18」で提供する独自生成AI(人工知能)システム「Apple Intelligence」が、iPhone 16シリーズの初期販売を押し上げるとみている。

次期iPhone用半導体「A18」

台湾の大手経済紙「工商時報(CTEE)」によると、アップルはiPhone 16シリーズの需要拡大を見込んでおり、台湾積体電路製造(TSMC)へのチップ発注量を9000万〜1億ユニットに引き上げた。

アップルは前年、iPhone 15シリーズの発売に向けて、TSMCに8000万〜9000万ユニットを発注していた。今回の報道内容が正しければ、アップルは次期iPhone向けチップを前年に比べて、約1000万ユニット多く必要としていることになる。

iOS 18に搭載されるApple Intelligenceは、iPhone 16シリーズの初期販売を促進する要因の1つになるとみられている。その理由は、Apple Intelligenceに対応するiPhoneは現行の「15 Pro」「15 Pro Max」の2つか、それ以降のモデルに限られるからだ。つまり、23年に発売された「15」「15 Plus」のユーザーがApple Intelligenceを利用するためには、15 Proや15 Pro Maxに買い替えるか、16シリーズのいずれかを購入する必要がある。

iPhone 16は全モデルがApple Intelligence対応か

米マックルーマーズ(MacRumors)によると、15と15 Plusは「A16 Bionic」チップを搭載しているが、15 Proと15 Pro Maxは、TSMCの第2世代3nmプロセス「N3E」で製造された「A17 PRO」を採用している。

Apple Boosts A18 Chip Orders in Anticipation of High iPhone 16 Demand
https://www.macrumors.com/2024/07/02/apple-increases-a18-chip-orders-iphone-16/

今後登場する16シリーズは、全4モデルがN3Eプロセスで製造された「A18」チップシリーズを搭載する見通し。そのうち、16 Proと16 Pro Maxには「A18 PRO」が採用され、機械学習(マシーンラーニング)の性能を高めるためにコア数を増やした「Neural Engine(ニューラルエンジン)」が搭載されると予測されている。

また、標準モデルのiPhone 16はメモリー容量が、6Gバイトから8Gバイトに引き上げられる見通しだ。これによりシリーズ全モデルが8Gバイトメモリーを搭載することになる。アップルはこのメモリー容量が、AI言語モデルをクラウド経由でなく、ローカル(デバイス上で)実行するための最低要件になると示唆している。

低成長続くiPhone、新モデルに期待

アナリストらはiPhone 16シリーズについて、20年のiPhone 12シリーズ登場以来最大規模の買い替えサイクルが訪れると予想している。米証券会社ウェドブッシュのダニエル・アイブス氏の推計によると、過去4年間更新されていないiPhoneは約2億7000万台に上る。「Apple Intelligenceは多くのユーザーが待ち望んでいた『キラーアプリ』であり、15%以上の既存ユーザーがiPhone 16に買い替えるだろう」(同氏)

アップル売上高の約5割を占めるiPhoneは低成長が続いている。2024会計年度第3四半期(24年4〜6月期)における、iPhoneの売上高は前年同期比1%減の392億9600万ドル(約5兆8800億円)だった。iPhoneの売上高は前の四半期に10%減少しており、2四半期連続の減少となった。

  • (本コラム記事は「JBpress」2024年7月11日号に掲載された記事を基にその後の最新情報を加えて再編集したものです)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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