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デビッド・リンチが語る、嫌な仕事も楽しくする方法

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
ヴァーチャルのチャリティイベントに出演したデビッド・リンチ(筆者撮影)

「多くの人は、お金や名声など何かの目的のために仕事をするが、仕事そのものは楽しんでいなかったりする。しかし、楽しむべきなのだ。これをやればなんでも楽しめるようになる。仕事は向上し、人間関係も良くなり、人生も楽しくなる。良いことばかりだ」。

 非営利団体Yoga Gives Backが主催するライブストリームのチャリティイベント「A Global Gathering for India」で、デビッド・リンチがそう語った。「これをやれば」の“これ”とは、超越瞑想(TM)のこと。インド人のマハリシ・マヘーシュ・ヨーギーによって50年代に知られるようになったこの瞑想法を、リンチは過去48年、毎日2回、1日も欠かすことなく実践しているのだ。

「始めたのは、1973年7月1日午前10時。それまでは、瞑想という言葉を聞いてもまったく無関心だった。その頃の私は仕事にしか興味がなかったのだ。だが、ある時、『本当の幸せは外にではなく内側にある』という言葉を聞いた。それは正しいと感じたが、内側のどこにあるのか、どうやってそこに辿り着けばいいのか、その言葉は教えてくれない。そこへ、私の妹がTMを始めたと言った。それで私もいろいろな瞑想を試してみたが、どれもピンと来ない。TMをやってみて、これだと思ったんだ。人間は誰も、内側に大きな海を持っている。全員だ。TMはそこに連れて行ってくれる。そして、そこに行くたびに、私たちは知性、創造性、幸せ、愛、エネルギー、平和といったことを拡大していくことができる。逆に、ネガティブなことはなくなっていく。光が出てくると闇が消えていくように、ストレス、不安、鬱、復讐心、恐れなどが減っていくのだ。苦しみはなくなり、人生が楽しくなる」。

次に何を手がけるかは直感に任せる

 その“大きな海”を1日2回訪れるリンチは、クリエイティビティに事欠くことはない。映画監督以外にも、画家、ビジュアルアーティスト、ミュージシャンとしても活躍し、著書もあればコーヒーのブランドまで展開する彼は、次に何をやるかを直感で決めているという。“大きな海”は、直感を研ぎ澄ませることもしてくれるのだ。

「私はいつもアイデアに導かれる。もし、椅子を作るというアイデアが浮かんだら、私はそのことに興奮し、椅子のスケッチをしたり、素材を集めたりして、椅子を組み立てる。絵画のアイデアが浮かんだら、アトリエに入って、興奮しながら絵を描き始める。私はいつも、アイデアが連れて行ってくれるところに行くんだよ」。

 もちろん、TMに、自分の人生に何が起こるかをコントロールする力はない。だが、同じことが起こっても、どう乗り越えるかは変わってくると、リンチ。

「関係がうまくいっていない夫婦が離婚することになったとしても、平和に、フレンドリーに終わらせることができる。いがみ合い、憎み合い、嫉妬に満ちて終わるのでなく」。

 それは世界規模でも通じる。

「分断、衝突の多くはネガティブなところから来ている。相手の言うことに耳を貸さず怒って、ストレスを溜めては狂ったことをしてしまうのだ。だが、ネガティブさがなくなり、そこへ愛、理解、知性、創造性が入ってきたら、変わってくる。お互いを大切に思うから相手を傷つけたくないと感じ、心をオープンにするようになる。そして争いは平和な形で収まる。今、世の中で起きていることは、すべて平和に解決できる。平和は可能なのだよ」。

 そのためにも、世界中の人々がTMを実践することをリンチは強く望んでいる。

「その海は、前からあった。今もある。これからもずっとある。そして水はいつもたっぷりある。そこからたくさんのものをもらっても、水は常に満たされるのだ。心配する必要はない。そしてそれはみんなが持っている。TMのテクニックは簡単。10歳でも、110歳でもできる。今日、そのテクニックを得るべきだ。明日まで待たないで。今日始めて、みなさんもポジティブなエネルギーを広げて欲しい」。

 世界から80人以上のアーティストや講師などが出演する「A Global Gathering for India」ヴァーチャルイベントは西海岸時間27日まで開催中。アクセスは無料。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「シュプール」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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