U-18日本代表がサバイバルの「青白戦」。戦いで使えるホンモノを求めて
目指す2年後と3年後に向けて
2年後のU-20W杯を目指す「東京五輪第2世代」のU-18日本代表が、大阪府内で9月4日から2泊3日での強化合宿を行っている。目的は「種まき」と言ったところだろうか。
今年から影山雅永監督を迎えて2年後の世界舞台へ向けて本格的に始動したU-18日本代表は、これまで2月にスペイン、6月にポルトガル、そして8月には日本で行われた国際ユース大会へ出場を重ね、実戦を通じてチームを作ってきた。一方で、いわゆるトレーニングキャンプを実施する機会がなく、幅広いメンバーを招集するようなチャンスもなかった。メンバー選考の幅を広げるためにも、主軸と見込まれる選手たちに危機感を持たせるためにもと、指揮官が熱望して今回の合宿が実現。8月のSBSカップ国際ユース大会に選ばれた18名は全員がいったん選外となり、過半数の14名が初選出となる27名の候補メンバーが大阪に集結することとなった。
「この年代はこのくらいの時期にキュッと上がってくる選手がいる。インターハイだったり、クラブユース選手権だったりで出てきた選手も含めて、可能性のある選手に刺激を入れたかった」(影山監督)
先のU-20W杯へ飛び級で招集されていたFW田川亨介(鳥栖)が選ばれた一方で、「北海道選抜にも入ったり、入らなかったりくらいだったので、(選ばれたのは)驚きしかなかったです」と言うMF圓藤将良(旭川実高)のように各年代を通じて初めての代表という選手も多数選ばれるメンバー構成となったが、これもあえての選択。11月に行われるAFC U-19選手権の1次予選を勝ち抜くだけなら、ここまで選んできた選手たちだけでも十分だったが、2年後の世界大会や3年後の東京五輪も見据えて、より幅広い選手たちに刺激を与えようという意図だった。「ここですぐに入ってこなくても、意識が変わる選手がいれば」(影山監督)という意図もあった。
もちろん、現時点で影山監督の求める「戦いで使えるホンモノの選手」を探すというのが一番である。
伯仲の青白戦
5日の午後にはそんな選手たちをフラットに再評価する場として、20分ゲームを3試合行う「青白戦」も実施。審判もしっかり付けての試合形式で、ゲーム中のコーチングもあえて最小限にしながら、選手たちの「素の力」を推し量った。1本目のメンバーは下記の通り。
[青組]
GK
中野小次郎/法政大
DF
宮本駿晃/柏U-18
角田涼太朗/前橋育英高
生駒仁/鹿児島城西高
松田陸/前橋育英高
MF
佐々木大樹/神戸U-18
芝本蓮/G大阪ユース
西村恭史/興国高
杉浦文哉/名古屋U18
FW
古川大悟/千葉U-18
中村駿太/青森山田高
[白組]
GK
早坂勇希/川崎F U-18
DF
山口竜弥/東海大相模高
中村勇太/鹿島ユース
谷口栄斗/東京Vユース
川井歩/広島ユース
MF
郷家友太/青森山田高
山田康太/横浜FMユース
齊藤未月/湘南
圓藤将良/旭川実高
FW
平墳仁/清水ユース
田川亨介/鳥栖
※安藤瑞季(長崎総科大附高)、入間川景太(甲府U-18)は負傷で別メニュー
FW町野修斗(履正社高)、MF品田愛斗(FC東京U-18)、GK櫻庭立樹(札幌U-18)は交代で出場。各試合でメンバーを入れ替えながら、20分×3本で実施。
試合直前には影山監督から「激しくやるのは大歓迎だけど、ケガをさせるようなプレーはダメだ」との声もあったのだが、いざフタを開けてみれば、やはり選手は気合いが入ってしまうもの。初選出の選手ばかりなので、連係面に乏しいこともあり、必然的にバチバチと選手が競り合うようなシーンの増えるゲーム展開となった。
その中でも、すでにプロでプレーしている田川とMF齊藤未月(湘南)はさすがの存在感。二人に対して影山監督は違いを見せてもらいたいと期待をかけていたのだが、齊藤は球際の強さで“湘南らしさ”を感じさせ、田川は力強い突破からチャンスを切り開くなど強烈な個性を見せ付けた。一方、代表歴のない(あるいは浅い)選手たちでは、MF品田愛斗(FC東京U-18)がアベレージの高さを感じさせたほか、清水加入の内定している大型MF西村恭史(興国高)も存在感。DF山口竜弥(東海大相模高)やMF圓藤将良(旭川実高)といった選手たちも徐々に持ち味を出すシーンが観られた。もっとも、圓藤が試合後に「全然でした。もっと出さないといけなかった」と語ったように、本領発揮とまではいかなかった。
試合は1本目がスコアレス、2本目は高い位置のボール奪取からMF山田康太(横浜FMユース)が決めて白組が1-0と勝利。3本目は意表を突くCKの流れから、最後は圓藤のシュートをGKが防いだこぼれ球にDF谷口栄斗(東京Vユース)が詰める形で1-0。青組の勝利となった。山田はゴールだけでなく、全体に意欲的なプレーぶりで存在感を見せていた。
加速への最低条件
今回の合宿は直接的には1次予選メンバーを選考するための場だが、「1次予選を勝つのが僕らの目的じゃない」(影山監督)ことも確かで、その意味でこの世代のラージグループに刺激を与えられた意味が効いてくるのは、もう少し先の話になるかもしれない。今回の合宿に参加した選手はもちろん、「アイツが入るなら俺も」と燃える選手も出てくるはず。そういう相乗効果にも期待しておきたい。
今年、日本はU-20W杯へ10年ぶりの出場を果たしたが、待っていたのは日本の日常とは大きく異なる強く、速く、激しい戦いの舞台だった。そこで痛感させられたのは「10年ぶりに出ているようではダメだ」という現実でもある。まずは何よりも連続出場を果たし、あの戦いの場へ再チャレンジする機会を得ること。それが日本サッカーの進歩を加速させるための最低条件と言えるし、東京五輪へのキーポイントとも言える。まずは11月の1次予選、そして連覇の懸かるアジアの舞台へ。U-18日本代表の戦いは、ここから本格化していくことになる。