バルサとシャビの再建への道。モラタ、ハーランドの名前とカンテラーノに蓋をする可能性。
再建に向けて、船は出港した。
昨年11月にシャビ・エルナンデス監督が就任したバルセロナだが、チームの調子は簡単には上向かなかった。21年ぶりのチャンピオンズリーグのグループステージ敗退が決まり、今季のリーガエスパニョーラではトップ4に入るべく厳しい戦いに身を投じている。
今冬の移籍市場で、マンチェスター・シティからフェラン・トーレスを獲得した。移籍金固定額5500万ユーロ(約66億円)+ボーナス1000万ユーロ(約13億円)で取引が成立。選手登録の問題は残されているが、ひとまずアタッカーを一人確保した。
だがフェランの獲得でバルセロナの補強が終わったわけではない。アルバロ・モラタ(ユヴェントス)やアーリング・ハーランド(ボルシア・ドルトムント)の名前が候補として挙げられている。
モラタに関しては、シャビ監督が獲得を要望しているといわれている。レアル・マドリー、チェルシー、アトレティコ・マドリー、ユヴェントスと複数のビッグクラブでプレーしてきた選手だ。スペイン代表では、ルイス・エンリケ監督に重宝されている。そういう意味では、フェランと同様に親和性が高い。
ハーランドについては、ジョアン・ラポルタ会長が、ミーノ・ライオラ代理人と良好な関係を築いている。この2人の関係は2009年夏のバルセロナのズラタン・イブラヒモビッチ獲得から続いている。「ハーランドはバルセロナを待つことができる。どのクラブともサインしておらず、プレ合意には至っていない。あらゆる状況が想定できる。ドルトムントに残留する選択肢もある」とはライオラ代理人の言葉だ。
■メッシの移籍
モラタからハーランドまで、バルセロナは選択肢を広げている。だが、クラブにはそうせざるを得ない事情がある。大きかったのは、リオネル・メッシの退団だ。
メッシは偉大な存在だった。バロンドールを7回受賞した、史上最高と称される選手だ。年間30ゴール〜50ゴールを保証してくれるようなプレーヤーがいなくなり、チームの弱体化は避けられなかった。
そのメッシの退団は、サラリーキャップの問題で引き起こされた。今季開幕の段階でバルセロナのサラリーキャップはおよそ9700万ユーロ(約127億円)。ラ・リーガで7番目の数字だった。最終的には、メッシとアントワーヌ・グリーズマンの放出と、ジェラール・ピケ、セルヒオ・ブスケッツ、ジョルディ・アルバらの減給という“荒業”で危機を乗り越えた。しかしながらメッシを失ったのは間違いなく痛手だった。
メッシが不在となったが、ロナルド・クーマン前監督のアプローチは大きく変わらなかった。メンフィス・デパイやルーク・デ・ヨングを獲得したものの、【3−5−2】と【4−3−3】を併用するスタイルは継続された。今季のクラシコでは、試合終盤にL・デ・ヨング、セルヒオ・アグエロ、ピケが3トップを務めていた。
一方、シャビの就任で、ストライカーや3トップの起用法は変化している。カンテラーノのフェラン・ジュグラが抜擢された。エルチェ戦では、終盤にガビがC Fのポジションに入った。
ペップ・グアルディオラ監督がメッシのファルソ・ヌエベ(偽背番号9/ゼロトップ)を発明したように、シャビ監督もまた「ザ・ストライカー」を置かないシステムを試してきている。
ただ一方で、グアルディオラやヨハン・クライフが残した足跡、その過程には必ずカンテラーノの存在があった。
グアルディオラの“ペップ・チーム”の中心にメッシ、シャビ、ブスケッツ、ピケ、ビクトル・バルデス、カルレス・プジョール、アンドレス・イニエスタがいた。クライフの“エル・ドリームチーム”にはグアルディオラ、アルベルト・フェレール、ギジェルモ・アモールがいた。
モラタやハーランドの獲得――。その選択自体は悪いものではないだろう。しかしながらそれはカンテラーノの成長に蓋をしてしまう可能性がある。クオリティの問題ではない。育成の問題だ。矛盾を抱え、船は入港先を求めながら前進している。