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佳子さまが奇跡の笑顔 「皇室おっかけおばちゃん」渾身の一枚、撮影秘話とは

つげのり子放送作家、ノンフィクション作家(テーマ:皇室)
佳子さま(撮影:白滝富美子)

■皇室おっかけおばちゃんとは

 来年はお正月の恒例、皇居での新年一般参賀が新型コロナウィルス感染拡大を考慮し、中止する方向で調整が進められているという。

 もし中止となれば、“あの人”はきっと残念に思うことだろう。

 “あの人”とは、皇室ご一家が一斉にお出ましになるこの行事に、毎年カメラを持って楽しみに通い続けている、ひとりの主婦。

 雨の日も風の日も、皇室の方々のベストショットを撮影しようとあらゆる場所に出没する、通称「皇室おっかけおばちゃん」と呼ばれる白滝富美子さんだ。

 白滝さんは、雅子さまがご婚約内定した際、ご実家の前で報道陣に交じって撮影したことから、皇族の方々をおっかけては、貴重な一瞬を撮影することに魅了されたという。

 以来27年間、天皇ご一家が地方を訪問される時も、前日の夜から現地に乗り込んで場所取りするほどの筋金入りとなった。

 筆者が初めて白滝さんのことを知ったのは、約20年前、担当している皇室番組で「皇室おっかけおばちゃん」の奮闘ぶりを特集した折である。

 プロ顔負けの本格的なカメラを構え、ファインダーを覗く時の真剣な表情と、会心の一枚が取れた時の嬉しそうな笑顔が、強く印象に残った。

 その後も、ワイドショーなどで白滝さんの姿を何度も見かけた。

 雅子さまが天皇陛下とともにニュージーランド・オーストラリアを公式訪問された時は、現地まで行っておっかけたと知り、国内のみならず海外まで足を伸ばすそのパワーに驚いた。

 そして今年、書籍を執筆するにあたって、ついに白滝さんとお会いする機会を得たのだった。

■皇室の女性たちの笑顔に、ある特徴が

 白滝さんは皇室おっかけの中で、最も長いキャリアを持つ。これまで撮影した写真の枚数を尋ねたところ、あまりに多すぎて、最近ではこの手の質問に「数え切れません」と答えている。

 27年にわたって、ずっと白滝さんがおっかけてきたのは、去年皇后となられた雅子さまだった。

 さまざまな行事や皇居に出入りする時などに、白滝さんがカメラを手に待ち構えていると、雅子さまはすぐに気づいて、写真が撮りやすいように笑顔を見せてくださるという。

 そこには白滝さんが身に着けた、独自のノウハウが隠されている。

「雅子さまは私のことを認識してくださっているのではないかと思います。良い写真を撮るには、おこがましいようですが、一方通行でも顔見知りになって頂くことが大切なんです」

 と言って、白滝さんが見せてくれた雅子さまの写真の数々は、どれもこぼれるような笑顔の一瞬をとらえていた。

 特に皇后になられてからの雅子さまは表情が生き生きと輝いており、思わず見入ってしまうほどだ。

 そして、皇室の方々をファインダー越しに見つめ続けてきた白滝さんだからこそ、気づいたことを教えてくれた。

「雅子さまは歯を見せた笑顔になられますが、なぜか秋篠宮家の女性皇族の方々は笑う時も、いつも口を閉じていらっしゃるんです。お母さまの紀子さまが歯を見せずに口角を上げた笑顔をされるので、お嬢様たちもそれに倣っているのかもしれませんね」

 

 おそらくこうした笑顔は、秋篠宮家の女性皇族の方々の特徴なのであろう。

 そこで白滝さんは、佳子さまが成年皇族になられてから、歯を見せて笑う佳子さまの愛らしい表情を撮ることに集中したという。

 しかし、そのハードルは高く、シャッターチャンスと思っても、いつもの口角を上げた笑顔の写真だけが増えていくばかりだった。

■チャンス到来!佳子さまのベストショット

 それでも白滝さんはあきらめずにシャッターを押し続けた。ついに平成27年1月14日、好機が到来した。

 それは、佳子さまが歌会始の儀に出席するため、車に乗って皇居へ入られる瞬間をねらって、白滝さんが早朝から半蔵門の前で待機していた時だった。

 向こうから佳子さまを乗せた車が現れ、皇居のほうに曲がろうとしたタイミングで、「佳子さま!」と声をかけた。

 “一方通行でも顔見知りになって頂くこと”というノウハウが功を奏したのだろう、佳子さまが白滝さんを見詰めて、お辞儀をしてくださったのだ。

 その瞬間、白滝さんはこのチャンスを逃すまいと夢中で連射した。

 撮影したのが、この記事に掲載した写真である。佳子さまが歯を見せて笑顔になられた瞬間を見事にとらえている。

 しかし、お辞儀をされたために、惜しくもお顔が車の窓枠に重なってしまった。

 ともあれ、今回は歯を見せた笑顔を撮影するという難題をクリアし、白滝さんは「また佳子さまを追いかけて、ステキな写真を撮りたい」と、前向きである。

 来月、白滝さんは80歳を迎える。朝早くからカメラをスタンバイするのはくたびれるが、良い写真が撮れると、疲れが吹き飛ぶという。いつも持ち歩くカメラもこれで5台目だ。

「もし皇室おっかけをしていなかったら、家と職場を行き来するだけの単調な生活だったと思います。皇室おっかけは、私の生きがい。皇室の方々から元気とパワーをいただいています」

 皇室の方々の笑顔は、白滝さんのエネルギーの源になっているようだ。

(『佳子さまの素顔』より加筆・修正のうえ転載)

放送作家、ノンフィクション作家(テーマ:皇室)

2001年の愛子内親王ご誕生以来、皇室番組に携わり、テレビ東京・BSテレ東で放送中の「皇室の窓」で構成を担当。皇室研究をライフワークとしている。西武文理大学非常勤講師。日本放送作家協会、日本脚本家連盟、日本メディア学会会員。著書に『天皇家250年の血脈』(KADOKAWA)、『素顔の美智子さま』『素顔の雅子さま』『佳子さまの素顔』(河出書房新社)、『女帝のいた時代』(自由国民社)、構成に『天皇陛下のプロポーズ』(小学館、著者・織田和雄)などがある。

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