誰一人生きて帰ることはなかった、スコット隊の軌跡
20世紀初頭、多くの探検家が極地への到達を目指していました。
その中でスコット隊は南極点到達を目指していたのです。
この記事ではスコット隊が全滅するまでの軌跡について紹介していきます。
スコット一行、死へのカウントダウン
最初にウィルソンが静かに息を引き取りました。
続いてバワーズも、その後を追うように神のもとへと召されていったのです。
スコットは隊長としての責任を果たすかのごとく、最後の一人としてブリザードの凍てつく世界に耐え続けていました。
テントを叩き続ける暴風が吹き荒れ、スコットの吐く白い息も次第に細くなっていきます。
目の前の補給基地まではたったの18キロ。
そこには潤沢な物資が待っているにもかかわらず、それは遥か遠くに感じられる距離でした。
無念と絶望が、スコットをじわじわと包み込んでいったのです。
絶望の中彼は、目を閉じてそのまま深い眠りに落ちていきました。
1912年3月29日、スコット隊は全滅します。
8カ月後に発見されたスコット
1912年11月12日、捜索隊は雪に埋もれたテントを発見しました。
そこにはスコット、ウィルソン、バワーズの遺体が眠っていたのです。
スコットの左手はウィルソンの寝袋に、右手にはブラウニングの詩集が握られていました。
彼らの表情は穏やかで、捜索隊はその場で日記を読み、壮絶な最期を知ったのです。
遺体はテントごと雪に包まれ、十字架が立てられたのです。同年4月、タイタニックも沈没し、英国は悲劇の年を迎えました。
参考文献
アプスレイ・チェリー=ガラード著・加納一郎訳(1993)「世界最悪の旅 悲運のスコット南極探検隊」朝日文庫