【富田林市】若松町1号児童公園に隣接する寺の名残のような墓地から新堂大工町の歴史を探ってみた
富田林若松町東地域から中野町東地域にかけての石川沿いはそこだけ別世界のように工場が並んでいる地域がありますね。先日お邪魔した富田屋本社もありました。さてその南側、ちょうど工場地帯が並ぶ場所と隣接して墓地と公園があります。
こちらが南側から見た墓地の入口で、その先に緑が見えますが、あの部分は墓地ではなく公園になっています。
大工町墓地と書いてありますね。墓地に入るのは少し勇気がいりますが、その後ろにある公園ならということで行ってみました。
墓地の中には和風屋根の建物があり、塀もどこかの寺院にありそうな和風の瓦がついていますね。そのまま公園に続いているのがわかります。
このような構成を見ると今公園になっているところにはかつて寺院があったのではと想像しました。
あくまで推測ですが、もともと寺院があってその南側に墓地が広がっていたものの、寺院のほうが何らかの理由で廃寺となり、その跡地に公園が出来たという印象です。
公園の中に入ってみました。
公園の名前は若松1号公園といいます。
公園の入口に愛らしい子ども像がありますね。手にしているのは平和の象徴の鳩でしょうか?
このように、公園には木々が生い茂っていているためゆったりと休憩に最適な雰囲気です。工場勤務の人たちも昼休憩に使っていそうです。
今は公園ですが、歩いてみれば見るほどかつてここには寺があった気がします。今生えている木はそのころからあったものか新たに植樹されたのかはわかりません。
休憩所もあります。
ということで、若松1号公園が出来る前にはどんな寺院があるのか古地図で調べてみました。すると意外な事実が判明したのです。
こちらは1900年ごろの地図です。真ん中にあるのは少しわかりにくいですが墓地を示している記号がありますが、周りは田んぼで、思っていた寺院はありません。
同様に1980年から2000年にかけての地図を見ても、三角形になったところの先に墓地の記号はありますが、その上の北側に寺院の記号は見えません。つまり公園の場所にはもともと寺院など存在しなかったようです。
ただし、墓地は古くからここに存在していました。改めて墓地の名前を見ると新堂大工町墓地とあります。大工町というくらいなので、昔はこの周辺に大工がいるのかと気になり調べてみました。
するとある事実が判明しました。この地域にはかつて新堂大工組という大工組織の本拠地があったというのです。富田林市史「新堂村の大工組」(外部リンク)によれば次のようなことが書いてあります。一部を引用しましょう。
つまりここに大工さんの町があったそうで、元は大工さんのグループが利用していた墓地だったので新堂大工町墓地という名前がついていたんですね。
明確な史料などがないので大工さんの町が出来た理由ははっきりしないそうですが、ひとつの説として河内国上太子村の聖徳太子廟の建築に関係した大和にいた大工の六人が、石川里字里田に住むようになって六人衆を名乗って大工を始めたとあります。
さらに富田林市史「新堂大工町の民間伝承」(外部リンク)によれば、聖徳太子廟造営のために大和の斑鳩から移住があり、その後新堂廃寺を創建するために再移住があった可能性が伝承として残っていると書いていありました。古代の伝承なのでとても興味深い内容ですね。
古代の伝承はともかく、江戸時代初期には大工の集合団体が存在していて周辺の社寺や民家を支えた職人集団だったそうです。新堂大工組は河内国にあった6組の存在のひとつで、貞享(じょうきょう)年間(1684-1688年)のころは石川組と呼ばれていたそうです。
担当していた範囲は新堂村のあった石川郡をはじめ錦部・丹北・古市・丹南などの各郡域にまたがっていたそうなので、ほぼ南河内地域を担当していたのでしょう。
そして新堂大工組の名残が、富田林とその周辺にある大型の石川型だんじりです。石川郡新堂村大工町が多数の俄(にわか)地車を建造した大工「新堂組」の拠点で、かつて新堂村にあった5つの字(あざ)ごとに地車があったそうです。
公園に寺院はありませんでしたが、墓地の新堂大工墓地の名前から、かつて南河内地域の大工仕事を一手に扱っていた集団が住んでいたということと、その名残がだんじりに残っているという意外な事実を知ることができました。
公園と墓地の間にカッパらしき親子像を見つけました。新堂大工町のことを調べたからでしょうか。ひょうたんを片手にしたカッパの親と懐いている子を見ると、江戸時代の大工の棟梁が仕事から酒を片手に帰ってきたところを子どもが出迎えているようにも見えました。
若松1号公園と新堂大工町墓地
住所:大阪府富田林市若松町東1丁目7
アクセス:近鉄富田林駅から徒歩18分
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