イチローを併殺打に仕留めた投手と野手たち。最多の投手はスプリッターが決め球
イチローは、メジャーリーグで92本の併殺打を記録した。この本数に、フライやライナーによる併殺は含んでいない。例えば、2007年7月5日の試合で、イチローは2度併殺に倒れたが、カウントしているのは1本目の二塁ゴロ(4-6-3)のみだ。試合終了となった2本目は、ライナーを捕球した三塁手が一塁へ転送し、帰塁できなかった走者もアウトにした。
イチローに併殺打を打たせた投手は、82人いる。そのうちの7人は、2本以上だ。もっとも、「打たせた」あるいは「打たされた」と表現するのは、正しくないかもしれない。イチローのスピードからすると、ボテボテの当たりでは併殺打にならない。イチローを併殺打に仕留めたというよりは、結果として併殺打になったと見るべきだろう。
併殺打2本以上の7人とも、イチローにホームランは打たれていないが、被打率.300未満はジェローム・ウィリアムズとC.J.ウィルソンの2人だけだ。最も併殺打の多いケルビム・エスコバーは、16安打を打たれ、そのなかには二塁打と三塁打が2本ずつあった。エスコバーはスプリッターを決め球としたが、イチローと対戦した53打席中、奪三振は3しかなく、割合にすると5.7%だ。打席に占める三振の割合は、エスコバーが通算20.2%、イチローは10.1%なので、どちらからしてもかなり低い。
イチローの併殺打に関わった野手(守備機会のあった投手を含む)では、いずれも5度のハウィ・ケンドリック(現ワシントン・ナショナルズ)、マーク・エリス、マルコ・スクータロ、カルロス・ペーニャが最も多い。ロサンゼルス・エンジェルスで二塁を守ったケンドリックの5度中3度は、遊撃手のエリック・アイバーが参加している。オークランド・アスレティックスで併殺デュオを組んだエリスとスクータロは、3度までが同じ併殺プレーだ。一塁手のペーニャは、3チームでイチローの併殺打に関わった。
まったく同じメンバーと流れで併殺打を成立させたのは、2度が最多。アレクシー・カシーヤ→ジェイミー・キャロル→クリス・パーメリーの4-6-3と、エルビス・アンドゥルース(テキサス・レンジャーズ)→ミッチ・モアランド(現ボストン・レッドソックス)の6-3がそうだ。どちらも投手はそれぞれ異なるが、前者は2012年5月に2試合続けて起きた。後者は2012年4月と翌年6月で、イチローがプレーしているチームも違い、シアトル・マリナーズとニューヨーク・ヤンキースだった。
なお、イチローが記録した併殺打のうち、三塁手が起点となったのは、2016年4月20日にアンソニー・レンドーン(ナショナルズ)が打球を捕り、そこからダニエル・マーフィー(現コロラド・ロッキーズ)、ライアン・ジマーマン(ナショナルズ)と渡った、5-4-3しかなかった。これもまた、イチローのスピードを示す一例ではないだろうか。起点は二塁手の46度が最も多く、遊撃手の28度、投手の9度、一塁手の8度と続く。
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