最前線の医療従事者の多くは4回目ワクチン未接種 新型コロナ第7波で懸念される医療逼迫
東京都の新型コロナウイルスは、7月7日時点でオミクロン株の亜系統BA.5が33.4%に到達しており、BA.2から急速に置き換わりが進んでいます。「オミクロン株は軽症」と思われていた第6波は、想定外の感染者数と死者数を記録しました。実は、医療従事者の多くは4回目の新型コロナワクチンを接種していません。第7波で再び医療逼迫は起こるのでしょうか?
7月末にはBA.5に置き換わる
東京都健康安全研究センターによるオミクロン株亜系統の割合の推移をみると、7月7日時点で亜系統BA.5疑いの割合は33.4%に到達しており(図1)(1)、今後BA.2からBA.5に置き換わりが進むと予想されます。今後3~5週間程度でBA.5に置き換わる見込みです。
第7波における医療逼迫の見通し
東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議において、第7波における病床見通しが資料として提出されました(2)。
高齢者の割合が高くワクチンの重症化予防率が低いと想定した「悲観シナリオ」、高齢者の割合が低くワクチンの重症化予防率が高いと想定した「楽観シナリオ」、その間の「基本シナリオ」に分けて解析すると、重症化率・致死率・入院率は第6波に比べて多少下がりそうだということが分かりました。
ただ、大幅に下がる可能性は低く、重症化率・致死率・入院率は「基本シナリオ」で第6波の0.8~0.9倍、「楽観シナリオ」でも第6波の0.5倍程度と推定されました(図2)。
しかし、新規感染者数の増加比は高く、東京都は4週間後の8月3日には新規感染者数が5万人以上と第6波を超える可能性があるとしています。
とはいえ、医療インフラはコロナ禍で強化されていますので、第7波の感染ピークが第6波の2倍であったとしても、「基本シナリオ」としては重症患者数は確保病床内におさまるとされています。基本的には「病床逼迫は何とかなりそう」というのが東京都の想定です。
医療機関におけるクラスターの懸念
しかし、医療逼迫の懸念が全くないわけではありません。
4回目の新型コロナワクチン接種対象は、60歳以上の高齢者と基礎疾患がある人が基本で、医療従事者は接種対象外です。そのため、現在新型コロナ診療の最前線に立っている多くの医療従事者が4回目のワクチンを接種していません。
そのため、医療機関でクラスターが発生することによって、受け入れ可能病床の母数が減り、間接的に医療が逼迫する可能性は十分考えられます。
4回目のワクチン接種は重症化予防が主目的ですが、コロナ病棟勤務者など感染機会が多い医療従事者は全国にたくさんいます。重症化リスクがなくても重症化する人が一定数存在する感染症ですから、廃棄されるワクチンがあるのであれば、彼らを接種対象に含めてもよいのではと個人的に思います。
なお、「第7波は来ない」という報道がチラホラありますが、感染して宿泊施設に入る人も入院要請者数もじわじわ増えていますので、現場の意見として「来ない」というのは楽観的すぎではないかと思います。
(参考資料)
(1) (第92回)東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議資料. 変異株PCR検査. (令和4年7月7日)(URL:https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/021/822/92/20220707_12.pdf)
(2) (第92回)東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議資料. 第7波における病床見通し. (令和4年7月7日)(URL:https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/021/822/92/20220707_08.pdf)