世界全体での固定電話と携帯電話、普及率はどれぐらいなのだろうか(2024年公開版)
国際電気通信連合(ITU:International Telecommunication Union)では毎年加盟国の携帯電話やインターネットの普及率をはじめとした、各種電気通信関連の統計データを更新・公開し、検証材料を提供している。今回は国の状態別に固定電話と携帯電話の普及動向を確認する(※)。国の状態別で区分した場合、電話の利用状況にはどのような違いが見られるのだろうか。
固定電話・携帯電話それぞれにおける普及率推移は次の通り。収録されているデータは2005年以降のものであることから、グラフもそれに従っている。なおデータ取得時において、今件項目の値は2023年までが確認できたので(高世帯年収国は2015年以降のみ)、グラフにもそれを反映している。
固定電話の普及率が漸減の動きを示すのは、高世帯年収国・後発開発途上国を問わず、世界全体での流れ。そして社会全体としても個々の契約としても費用がかかるため、普及率は高世帯年収国の方が後発開発途上国よりも高いことが分かる。
一方携帯電話は言葉通り「右肩上がり」の状態にある。高世帯年収国は飽和状態に手が届き始めた感もあり、上昇率は緩やかなものとなっているが、後発開発途上国は年5%ポイント以上の伸びを示す年もあったほど。2016年からは少々伸び率が低下しているが、それでも先進国と比べれば勢いはある。
そして2つのグラフを並べ見ると、電話インフラの観点では、後発開発途上国は従来の(先進国などの)電話インフラの普及プロセス「電話そのものが無い」「固定電話が普及」「携帯電話が普及し、固定電話からシフトしていく」ではなく、「固定電話が普及」の手順を飛び越し、最初から「携帯電話が普及」に歩みを進めているのが分かる。インフラや機材の進歩が急なため、ステップをショートカットできる次第である。
後発開発途上国においても2018年で携帯電話の普及率が7割に届いた。複数のSIMカード保有の事例があるから、そのまま利用者数が増加しているとの考えは勇み足ともいえるし、インターネットに接続できるスマートフォン・マルチメディアフォンはそのうち何割かに過ぎない。とはいえ、ここまで多くの人が距離の離れた場所にいる人に情報をほぼリアルタイムで伝えられる、しかも高い機動力を有する手段を持つ時代は、有史以来初めてのこととなる。
携帯電話の普及とともに、人と携帯電話、そして情報との関係はどれほど変化していくのだろうか。言葉通り人は新たな時代を携帯電話とともに迎えることになるのだろう。
■関連記事:
【英語26%、中国語20%、スペイン語8%…インターネットで使われている言語の普及率(最新)】
※データの区分、用語解説
「携帯電話普及率」は契約件数をカウントし、それを人口で除算したもの。一人で複数の契約をしている場合も多数あるため、100%を超える可能性は十分にある。
固定電話も同じ計算方法。ただし世帯ではなく人口で除算していることや、利用形態を想像するに、1世帯で複数の固定電話契約が行われる状況は稀であることから、おおよそ携帯電話の値より低くなる。
後発開発途上国とは「Least Developed Countries(LDCs)」のことで、国連開発計画委員会(CDP)が認定した基準に基づき、国連経済社会理事会の審議を経て、国連総会の決議により認定された特に開発の遅れた国々を指す。一人あたりのGNI3年間平均が1018米ドル以下で、HAI(Human Assets Index。栄養不足人口の割合、5歳以下乳幼児死亡率、妊産婦死亡率、中等教育就学率、成人識字率を指標化したもの)やEVI(Economic Vulnerability Index。外的ショックからの経済的脆弱性を表す指標)が一定数以下の国である。一方で高世帯年収国とは世界銀行定義で年収1万3205米ドルの国81か国を指す。
(注)本文中のグラフや図表は特記事項のない限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。
(注)本文中の写真は特記事項のない限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。
(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。
(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。
(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。
(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。
(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。