コーヒーを飲むと「すい臓がん」になる? ~寄せられた反響から~
8月1日に公開した「すい臓がん」の記事に対して、非常に多くの反響をいただきました。お読みくださった方に、心から御礼を申し上げます。
この記事のコメント欄、およびSNS上で多かった反響が「コーヒーを飲むと、すい臓がんになりやすくなるって本当?」というものです。
上記の記事で紹介している「膵癌の危険因子」というスライドには、確かに『コーヒー嗜好家(1日4杯以上)』との記述があります。
その理由について、スライドを引用した日本消化器学会のHPの説明を読んでみると・・・
コーヒーの大量摂取は危険?
上記の記述は、「JACC STUDY」という大規模調査のデータを分析した結果を元にしていると思われます。40から79歳の110,792人を対象として、アルコール・コーヒー・過去の病歴などが、すい臓がんのリスクを高めるかどうかを検討した研究です。
コーヒーの飲用量と、すい臓がんで亡くなるリスクを示したグラフです。
全く飲まない人のリスクを1とした場合、1日2-3杯まではおおむね横ばいか、下がっているようにも見えますが、4杯以上の群を見ると大幅に高くなっています。
研究グループはこの結果から「大量のコーヒー飲用は膵がんリスクを上げるかもしれないと言えそうです。」と結論付けています。
結局、コーヒーは危険なの?
では、やはりコーヒーは危険なのか?というと、一概にそうとは言いきれないようです。
実は、上記と同じような方法で調査を行った別の研究があるのですが、そちらでは、コーヒーの量とすい臓がんになるリスクには関連が見られませんでした。
コーヒーとすい臓がんの関係は、「まだ研究途上の段階にあり、確たることは言えない」ということのようです。ただし、リスクを示す研究が出ている以上あまり飲みすぎないほうが「安心」だとは言えるかもしれません。
食品と病気のリスク 健康情報を読み解くために
今回は「コーヒーとすい臓がん」の関係に注目しましたが、一方でコーヒーのような日常的な食品について、特定の病気との関係で評価することには余り意味がないという意見もあります。
もし本当にすい臓がんのリスクが高まるとしても、もしかしたらコーヒーには別の病気の予防効果があり、全体としてみたら良い影響をもたらしているかもしれないからです。
というわけで、コーヒーを飲む量と「全死亡リスク」との関連を調べた研究を見てみます。ここで言う全死亡リスクとは、がんや心筋梗塞、脳卒中などの死因をひとつひとつ分けずに分析したものです。
国立がん研究センターを中心とした研究チームが、岩手県から沖縄県までの男女9万人(当時40歳~69歳)を調査した結果、コーヒーをほとんど飲まない人のリスクを1とすると、1日3~4杯飲む人は0.76と下がっていました。
研究チームは、「コーヒーに豊富に含まれるクロロゲン酸(ポリフェノールの一種)やカフェインによって病気が予防されたのではないか」と推測しています。
結論として、現段階の研究からは「コーヒーは、一般的な量(1日1-4杯程度)であれば、健康に良い可能性がある」ということが言えそうです。ただし、この研究でも1日5杯以上飲むようなケースでは、ややリスクがあがっているようですので、飲めば飲むほど良いというわけではなさそうです。
なお、上記の国立がん研究センターの研究では緑茶でも同様の効果があることが確かめられました。コーヒーがお嫌いな方が、健康のためと思って無理やりに飲まなくても大丈夫。ご自分のライフスタイルを優先に、こうした情報を活用してくだされば幸いです。