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赤木さんを勇気づける世論調査 自民支持者も「再調査せず」を“許さない”

結婚披露宴での赤木さん夫妻(妻提供)

 財務省近畿財務局の上席国有財産管理官、赤木俊夫さん(享年54)を自死に追い込んだ、森友事件をめぐる公文書の改ざん。この問題の再調査に関する世論調査の結果が、俊夫さんの妻、昌子さん(仮名)を大いに勇気づけている。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200426-00000003-withnews-soci&p=1

新婚旅行でローマの”真実の口”に仲良く手を入れる赤木さん夫婦(妻提供)
新婚旅行でローマの”真実の口”に仲良く手を入れる赤木さん夫婦(妻提供)

「安倍首相の“支持者”も許していない」

 調査を行ったのは朝日新聞。朝日の記者が書いた記事によると、4月18、19日の両日、RDD方式という電話調査で全国の有権者を対象に調査し、2200余人から有効回答を得た。

 赤木昌子さんが求めている公文書改ざんについての再調査について、以下の結果になったという。

・再調査すべきだ=全体(72%)/自民支持層(59%)

・その必要はない=全体(17%)/自民支持層(29%)

 再調査を求める声が全体で7割を超えただけでなく、自民党の支持層でも6割近い方が「再調査すべきだ」と答えた。

 編集部が付けたタイトルはこうだ。

安倍首相の“支持者”も許していない「手記」のこと 世論調査が示す熱量 自民支持層の約6割「再調査を」

 この記事が、けさ(28日)Yahoo!ニュースにアップされたところ、読者数が急増。一時は国内ランキングのトップに躍り出た。

改ざん後、赤木俊夫さんから笑顔が消えた。
改ざん後、赤木俊夫さんから笑顔が消えた。

「まだ忘れられてないですね。少し希望有り」

 この記事を朝、見つけた昌子さんからLINEが届いた。

まだ忘れられてないですね。少し希望有り

 私は返事をした。

「よかったですね。朝日はやはりこの問題に力を入れていますね。この問題を『忘れさせたい』と思っている人はいて、これまで2回は成功しましたが、今度はそうはいきません。赤木さんがいるからです。終わったことにしようとしている人よりはるかに多くの方が赤木さんに共感していますから。大丈夫です。うまくいきます

 昼過ぎ、再びLINEが届いた。

1位だそうです。先生(弁護士)が(情報を)送ってくださいました」

 昌子さんは3月18日、勇気をふるって、夫、俊夫さんの手記公表に踏み切り、真相解明のため裁判を起こした。だが、世の中は新型コロナウイルスのまん延で大変なことになっている。裁判は5月27日に始まる予定だが、それもコロナの影響で延びるかもしれない。真相解明のため再調査を求めても、世の人々に忘れられてしまうのではないか? そんな不安に駆られることがあっても不思議ではない。

 そこに届いたこのニュースは、昌子さんを大いに力づけてくれたようだ。

「大丈夫。うまくいきます。と言ってくれる人もいるし」

右が元気だった頃の俊夫さん。左は改ざん後の俊夫さん(妻提供)
右が元気だった頃の俊夫さん。左は改ざん後の俊夫さん(妻提供)

 キャンペーンサイトChange.org(チェンジ・ドット・オーグ)で昌子さんが募っている再調査への賛同者も過去最多の33万人を突破。さらに増え続けている。次の目標は「安倍首相の動画の『いいね』を超える35万人」だ。安倍首相の“炎上”したコラボ動画への「いいね」が「過去最高の35万を超えた」と菅官房長官が言うのならそれを超える賛同を集めて再調査を求めよう、という決意だ。その目標まであと2万人を切った

 キャンペーンサイトは以下の通り。

http://chng.it/yBNFhJG97G

赤木さんが望む再調査を”拒否”しているお二人(Getty Images)
赤木さんが望む再調査を”拒否”しているお二人(Getty Images)

「その時の顔。音。瞬間を財務局の人間に知ってほしい」

 あの日、夫、俊夫さんは、自宅の居間で窓の手すりにオーディオの電気コードをかけ、首に巻き付けて亡くなっていた。昌子さんは、夫がメールに返信しないので急いで自宅に戻り、その姿を見つけた。その時のことを思い出すたび、苦しさがよみがえる。けさ(28日)届いたLINEだ。

「最期は神社に行ったって神様なんていないと嘆いて大好きな神社にも行かなくなりました。誰も信用できない頼れない。職場に見捨てられ死を選んで。

 どんなに強くコードをキツく首に結んでいたか。コードをハサミで切った時のこと。その時の顔。音。瞬間財務局の人間に知ってほしい

 この言葉の前で何を言えるだろうか? 私はしばし考えて返事をした。

「俊夫さんが亡くなっているのを見つけた時のこと。こうしてお書きになること自体、苦しいだろうと思います。それをあえて語るのは知ってほしいからですよね。その思いを少しでも受けとめて真実を話してほしいからなのだと思います。お聞きした者にも責任がありますね」

俊夫さんお気に入りの京都の眼鏡店の眼鏡と先輩にもらったシャープペンシル。若かりし時の証明写真(撮影・相澤冬樹)
俊夫さんお気に入りの京都の眼鏡店の眼鏡と先輩にもらったシャープペンシル。若かりし時の証明写真(撮影・相澤冬樹)

「こういう書き込みは夫の代わりに慰めてくれているようで嬉しい」

 それからしばらくして、昌子さんが世論調査の記事に励まされ少し元気を取り戻したところで、私はあることを提案した。

「実は今、先日のメディア酔談を見たという方が書いた文章を読んでいました。素敵な内容です」

 メディア酔談は、私が高校新聞部仲間でメディアコンサルタントの境治と行っているユーチューブ配信。その配信を見てくれた三枝彩子さんという方の文章だ。タイトルは「声を上げるのは難しいとみんなが知っているからこそ」。

https://note.com/saegusaayako/n/n35d7292eb90a

 三枝さんは、境治の「『メディア酔談』を見て考えたこと、あなたも発信しませんか?」という以下の呼びかけに応えて書いてくれたそうだ。

https://note.com/sakaiosamu/n/nc5f5ebb951e6

 その上で私は提案した。

「ちょっと思ったのですが、赤木さんもご自身でこのように書いてみてはいかがですか? 前から赤木さんの書くLINEの言葉は鋭いと思っていましたし、これなら自分の思い通りに書くことができます。

 もう一つ思いつきました。朝日新聞が行った世論調査の結果で再調査を求める意見がこれほど多数を占めている。そのことがまた赤木さんを勇気づけている。そのこと自体を記事にしてヤフーニュースに出すのはいかがでしょうか? 朝日の記事を読んだ方々も、赤木さんの思いを知って勇気づけられるでしょう」

公園の桜が白黒に見えた時もあったが、今は色がよみがえってきた(撮影・相澤冬樹)
公園の桜が白黒に見えた時もあったが、今は色がよみがえってきた(撮影・相澤冬樹)

 これに昌子さんは…

「Yahooニュースぜひお願いします。

 境さんの呼びかけでこんなふうに感じて書いてくださる方がいるんですね。しかも若い女性っぽいですよね。酔談も文春もありがたいですね。

 夫は大事な器を私が割ってしまった時『形あるものはいつか壊れるんやから気にすんな』と言ってくれてました。でも私たち夫婦は夫がいなくなってずっと壊れたままです。

 こういう書き込みは夫の代わりに慰めてくれているようで嬉しいです。

 今日はもうひとついいことがありました。マンションの方に久しぶりにお会いして文春のことすごく褒めていただきました。こんなに長期的に書いてもらえるのは珍しいよって」

 そして「自ら手記を書いては?」という提案には…

「私は気分の浮き沈みもあるし攻撃的になるから自分で発信するのは危険なのでやめときます

 冷静に自分を見つめている昌子さん。安倍首相と麻生財務大臣のことも冷静に見つめている。亡き夫のために妻が望み、世論も後押しする再調査を、それでも拒否するのだろうかと。

#赤木さんを忘れない

【執筆・相澤冬樹】

新婚旅行先のイタリアで(妻提供)
新婚旅行先のイタリアで(妻提供)

宮崎生まれ。NHKで記者修業30年余(山口・神戸・東京・徳島・大阪)。森友事件取材中に記者を外され退職。経緯は文春文庫『メディアの闇「安倍官邸vs.NHK」森友取材全真相』。還暦間近なるも修業継続中。「取材は恋愛に似ている」を信条に、Yahoo!ニュースや週刊文春、週刊ポスト、日刊SPA!、日刊ゲンダイなど様々な媒体で執筆。ニュースレター「相澤冬樹のリアル徒然草」配信中→http://fuyu3710.theletter.jp/about

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