米エアビーで隠しカメラ騒動 … 海外旅行先のホテルや民泊で小型監視カメラ?盗撮への対処法
アメリカのAirbnb(エアビーアンドビー、以下エアビー)で、女性客が宿泊した室内に隠しカメラが仕掛けられていた疑惑が浮上し、SNSで騒動となった。
問題の投稿は今月12日にツイッター上で発信された。投稿者は、友人と宿泊したフィラデルフィア市のエアビーに隠しカメラがあったとして、写真やビデオと共にツイートした。
「バスルームや寝室のスプリンクラー(消火設備)などに10個以上のカメラレンズを発見した」「幸いにも同性の友人との旅行で性行為はなかったものの、それでも裸になり着替えることはあった」などと書き込み、注意喚起した。これに対して、6万1000のリツイートと約30万のいいねが付いた。
しかしその後の地元警察の調べで、そのエアビーから隠しカメラや非公開の記録装置は見つからなかったとして、14日に公式に発表された。拡散されたツイートはその後、削除されている。
この盗撮騒動についてエアビー社は、宿泊者の気持ちを鑑み、宿泊費の払い戻しをすると発表した。また、同社ウェブサイトに掲載している宿泊施設に隠しカメラが設置されるケースは稀であるとの認識も発表。しかし、これまでも全米各地にあるエアビーでは、所有者が室内で隠し撮りし、その写真がネット上で投稿されたり、ホテルの従業員が室内で撮影したものを販売したりするなど、いくつもトラブルが報告されてきた。
2017年フロリダで、カップルがエアビーで見つけた賃貸アパートから隠しカメラを見つけたとして騒動に。このような例はいくつも報告されているが、中には訴訟問題に発展しているものもある。
米ホテルや民泊での監視カメラの設置ポリシーとは?
冒頭の騒動以降、複数の地元メディアが昨今の「隠しカメラ」事情を報じている。
盗難防止や財産保護のため、宿泊施設に監視カメラを設置すること自体、悪い訳ではない。「オフィスなどに最適」として、従業員の監視や盗難防止目的で、監視カメラ付きのスプリンクラーなどもあるほどだ。
FOXニュースやNPRなどが報じた監視カメラ設置にまつわる連邦法では、プライベートエリア、つまり裸になったり身にまとうものが少なかったりするような宿泊施設内において、個人の同意なしに記録することは犯罪とされている。また、細かい法律は州ごとに異なっているものの、ほとんどの州では防犯の目的で正面玄関や車庫前のドライブウェイなど、共有スペースにカメラを設置するのは許可されている。
防犯用監視カメラ設置ルール
エアビー:
宿泊施設の共有&公共スペースでは、防犯用監視カメラや録画・録音機器、ホームモニタリングシステムの設置を許可している。しかし、宿泊施設の所有者は宿泊者に対して、滞在前にその情報を開示する必要がある。また寝室やバスルーム、横になるような室内において防犯カメラや記録装置を設置することを禁じている(リビングルームにソファベッドがあれば、監視カメラは設置不可)。
Vrbo(ヴァーボ):
宿泊施設の屋外のみ、カメラや監視デバイスの設置を許可している。ただし例外があり、リモートで操作できないスマートデバイスは市内に設置可。この場合も宿泊客に事前通知し、スイッチをオフにする選択肢を宿泊客に与える必要がある。
リモコンにも設置可能な小型カメラ
「以前宿泊したエアビーの室内には12台のカメラがあった」。このように自身の体験談をFOXのニュースサイトに寄稿した専門家などいくつかの声をまとめると、隠しカメラが設置される可能性のある場所として、以下のようなものがある。
通気口
照明器具
電源コンセント
加湿器
テレビのリモコン
目覚まし時計
煙探知器
USB充電器
シャワーヘッド
ぬいぐるみ
観葉植物
本や本棚
鏡
ペン
etc…
室内、ほぼすべてだ。
この専門家が見つけたカメラについては、実はエアビーの部屋情報の一番下に小さいフォントで開示されていたそうだ。「それ以降、予約時には注意深く情報を読むようにしている」という。そして「カメラは何台がどこに設置されているか、そのカメラは録画機能があるか、自分の宿泊後にその動画をどうするのか、逐一質問をするようにしている」。
さらにこのように述べている。「カメラ設置について開示があるかどうかにかかわらず、宿泊施設に到着時にすべての部屋をくまなくチェックするのは、あなたの責任です」。
別の人の投稿。エアビーにモーションディテクターがあるのは奇妙だと不審に思いチェックすると、オンラインで接続されたIPカメラが見つかったとのこと。
隠しカメラの見つけ方
サイバーセキュリティを教示する、自称元ハッカーのマーカス・ハッチンズ(Marcus Hutchins)氏がTikTokに投稿した「隠しカメラを見つける方法」は、3340万回以上再生され、500万を超えるいいねが付くなど話題だ。
デバイスがカメラか否かを確認する方法の1つとして、同氏は小型カメラが隠されていそうな場所に(そして、まさかこんな所にはないだろうと思うような場所でさえも)光を当てる「フラッシュテスト」を推奨している。カメラレンズであれば青みがかって反射されるという。隠しカメラのレンズは非常に小さく、壁や天井の穴や隙間、ピンホールの大きさでさえ取り付け可能なので、まず部屋の照明を消して暗くし、懐中電灯やレーザーポインターでゆっくりと部屋中を確認し、反射物を確認すると良いそうだ。
設置されているのは暗視カメラの可能性もある。その場合、人間の目には見えない特殊な赤外線を照射するLEDライトが付いているので、照明を消してぼんやりと光る赤い光がないかチェック。スマートフォンのカメラ画面で見ると、より見やすくなるという。
動画の中では、目覚まし時計の中に設置されたレンズも映し出されている。レンズはそれほど小さいものではないが一見わからない。これもいろんな角度から光を当てて探し出している。
上記のレンズ反射法に加えて念には念を入れ、隠しカメラやマイクを識別できるバグ検出器(bug detector)やRF検出器(RF detector)を使用したり、Wi-Fiルーター、目覚まし時計、USBプラグなど怪しいと思うものはすべてコンセントから抜くことを勧める専門家の意見も紹介されている。ほかにも、ワイヤレスネットワークウォッチャー(Wireless Network Watcher)などで、ネットワークに接続されているガジェットを表示する方法もあるそうだが、滞在先の所有者がガジェットを別のネットワークで繋いだり、有線で繋いだりしている可能性もあるため、この方法は万能とは言えない。
隠しカメラ、見つけたらどうする?
上記の記事では、違法な監視カメラを見つけたら警察に通報し、証拠となるものをビデオや写真で記録することを勧めている。通報を終えたら、レンタルサイトのカスタマーサポートに電話連絡するのも手。別の宿泊施設に変更してもらえるかもしれない。
これらの小型カメラは安価で普通にアマゾンなどで購入できるなど、誰でも簡単に手に入れることができる。以前なら人里離れた怪しいモーテルだけでの問題だったようなものが、現代のように民泊が一般化し、テクノロジーも格段に進歩すると、プライバシーを守る上ではなかなか厄介な問題として浮上することも多くなってきた。
自宅のトラブルで筆者が最近宿泊したニューヨーク市内のホテル(入り口のドアが完全に開かないほど狭い部屋だった)の天井には煙探知機が設置されていて、さぁ寝ようと電気を消した際、赤い光が点滅しているのに初めて気づき、怪訝に思ったことがある(ただの点滅だったと信じたい)。その後上記の記事を見つけた訳だが、今後はフラッシュテストなどを入念に行おうと思った。
世界中で新型コロナの感染状況が落ち着き水際対策も緩和される中、海外旅行に行く機会も今後増えていくことだろう。海外のホテルや民泊施設に宿泊の際は、このような事例もあることを頭の片隅にでも入れていてほしい。
(Text by Kasumi Abe)無断転載禁止