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佳子さまの結婚後にも影響? 女性皇族の「名誉職」に画期的な動き 識者に聞く

つげのり子放送作家、ノンフィクション作家(テーマ:皇室)
皇室の方々(写真:ロイター/アフロ)

 今や新型コロナの第7波に覆われている日本。しかし、春までは小康状態を保っていたことから、皇室の方々のお出ましが徐々に増えてきていた。特に女性皇族方のご活動が活発化していたように思う。

 現在、皇室の方々は全員で17方いらっしゃるが、そのうち12方が女性である。男性は、上皇さま、常陸宮さま、天皇陛下、秋篠宮さま、悠仁さまで合計5方。人数から考えても、公務の多くを女性皇族方に担って頂かなくてはならない状況だ。

 ニュースなどで報じられる女性皇族方の公務でよく目にするのが、「総裁」や「名誉総裁」という言葉である。例えば、先月14日には、秋篠宮家の次女・佳子さまが公益社団法人日本工芸会総裁に就任された。

 現在、皇族方が「総裁」あるいは「名誉総裁」などに就いている組織・団体の数は83にのぼり、そのうち55は女性皇族が占めている。それらの組織や団体が、どのようにして皇室の方々に重要な役職について頂いているのか、宮内庁に20年以上勤めた、皇室ジャーナリストの山下晋司さんに聞いた。

◆就任を決めるのは皇族ご本人?宮内庁?

 一口に組織や団体と言っても、国内にある公益社団法人の数だけで約4000、一般社団法人や連盟、協会、NPO法人も合わせると、数え切れないほど存在している。皇族の方に役職に就いて頂きたいと多くのところが考えると想像できるが、どのようにして判断しているのだろうか?

 山下さんによれば、決定するまでにはかなり慎重に対応するという。

「皇族の総裁職、名誉総裁職への就任にあたっては、宮内庁としてその団体に問題がないか、また皇族の仕事として好ましいかどうかを判断します。そして、その皇族ご本人にもその団体の活動に賛同し、協力しようというご意思があって、初めて成立します」

 皇族の方が組織・団体からの打診を受け、協力を決定するには、その活動を多くの人たちに広く知ってもらい、世の中に寄与する意義の大きさを感じるかどうかにかかっている。

 例を挙げると、高円宮久子さまは、故高円宮殿下がスカッシュの練習中に倒れ、心室細動のため薨去されたことから、AEDの普及を促進する財団の名誉総裁に就任している。そこには救急救命の必要性を広く世の中に伝え、少しでも危険な状態にある命を救いたいとの意思が働いているのだ。

 では、名誉総裁に就任すると、具体的にどんなことを行うのだろうか?

「団体関係者から事業報告をお受けになったり、式典や表彰式などに出席されることが多いですね。そうした行事に出席される前には、団体関係者が宮邸を訪れ、皇族ご本人または宮家職員に詳しい内容を説明しているはずです」

と、山下さんは言う。

 こうした名誉職は一般的に受け身であって実態を伴わない場合が少なくないが、女性皇族の場合は、かなり能動的に活動されているようだ。

 実際、日本動物福祉協会の名誉総裁を務めている常陸宮華子さまは、東日本大震災が起きた平成23年、被災地の岩手県をお見舞いした折に、自らスケジュールに入れることを希望されたのだろう、飼い主を失った動物たちを預かる施設を訪れ、ボランティアを激励されている。

 また前述で触れた日本工芸会の総裁となった佳子さまは、実際に総裁賞などの選考にも関わるため7月だけで4回にわたって、金工や陶芸、染織、木竹工についてのご説明を熱心に受けられた。総裁としてふさわしい知識を深めようとされている姿勢がうかがえる。

◆女性皇族の名誉職にある変化が…

 山下さんによれば、女性皇族方が務める名誉職に、最近、新たな動きがあったという。

 平成30年に結婚した高円宮家の三女・守谷絢子さんは、皇室の一員であった独身時代に日加(日本カナダ)協会と日本海洋少年団連盟の名誉総裁を務められていた。その後、結婚されたことから、これまでの慣例に従い、女性皇族が皇室を離れると、同時に名誉職も退任されると思われた。

 しかし、絢子さんは当該団体の熱心な名誉職継続の要望を受けて、結婚後も引き続き務められている。日本海洋少年団連盟のほうは、母・高円宮久子さまが名誉総裁に就任し、絢子さまは名誉副総裁に変更となったが、名誉職には変わりがない。これは、長い皇室の歴史にあって、非常に画期的な出来事であった。

「守谷絢子さんは、結婚して皇室を離れた後も名誉職を務めるという初めてのケースとなりました。結婚したら皇族としての公務ではなくなりますが、団体側から引き続きやってくださいとお願いされて、ご本人もやりましょうということになると、法的な問題は何もありません。皇族としての公務ではなくなるというだけです」

 今後は女性皇族が結婚した後も、名誉職を続けていくことも出てくるだろうと、山下さんは話す。

 現在、皇室には未婚の女性皇族が5方いらっしゃり、それぞれに複数の団体で名誉職を務めている。

 小室眞子さんは昨年10月の結婚記者会見を開いた日付で、日本テニス協会と日本工芸会の名誉職を退任し、妹の佳子さまが引き継がれた。

「今後、佳子内親王殿下が結婚されて皇室を離れたら、名誉総裁職はどなたが引き継ぐのかという問題が出てきます。佳子内親王殿下が元皇族として引き続き務められる可能性はありますね」

 皇室の方々がさまざまな活動で役割を担われる中、今、皇族の人数が減少するという問題に直面している。女性皇族が結婚後も名誉職を続けるという新しい動きが、今後は増えていくかもしれない。

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放送作家、ノンフィクション作家(テーマ:皇室)

2001年の愛子内親王ご誕生以来、皇室番組に携わり、テレビ東京・BSテレ東で放送中の「皇室の窓」で構成を担当。皇室研究をライフワークとしている。西武文理大学非常勤講師。日本放送作家協会、日本脚本家連盟、日本メディア学会会員。著書に『天皇家250年の血脈』(KADOKAWA)、『素顔の美智子さま』『素顔の雅子さま』『佳子さまの素顔』(河出書房新社)、『女帝のいた時代』(自由国民社)、構成に『天皇陛下のプロポーズ』(小学館、著者・織田和雄)などがある。

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