北朝鮮の汚物入り風船散布 韓国内は「スマホへの緊急メッセージ」にも動揺していた…
29日の午後に伝えられた「北朝鮮による韓国への汚物入り風船散布」。
韓国軍合同参謀本部によると、29日午後4時の時点で約260個の風船が発見されたという。風船は韓国の首都圏から慶尚道、全羅道、忠清道など全国各地で確認され、一部は地上に落下し、残りはその後も飛行を続けている。
公開された写真には、白い大型風船の下部にゴミや汚物の入った袋がぶら下がっている。韓国軍は化学生物放射線核即応チームと爆発物処理班を出動させ、風船を回収して精密分析を進めている。
- 韓国メディアは「触らないように」と警告
北朝鮮は先月26日、韓国の対北団体によるビラ散布に対抗すると予告しており、「多数のゴミ袋と汚物袋が韓国の国境地域と縦深地域に散布されるだろう」としていた。韓国政府が対北団体の活動を制限していないことに強い不満を抱いているとみられる。
北朝鮮は2018年2月以降、対南ビラ散布を中断していたが、今回の事案で6年ぶりに再開したことになる。2016年にも同様の事案があり、落下した風船によって車両や住宅が破損する被害が出ている。当時の風船には、朴槿恵(パク・クネ)前大統領を侮辱する内容が書かれていた。これは、朴政権が北朝鮮の核実験に対抗し、対北宣伝放送を再開したことへの反発とみられた。
韓国軍当局は今回の事態について風船の回収を急ぎ、化学生物放射線核即応チーム(CRRT)と爆発物処理班(EOD)を出動させた。回収された風船からは汚物やゴミが見つかり、関連機関で精密分析が行われている。風船の大きさは3~4メートルほどで、下部にビニール袋が取り付けられていた。ビニール袋には汚物やゴミが入っており、袋と風船をつなぐひもには一定時間後に切れるようにタイマーと起爆装置が付けられていたという。
風船の中には、動物のふんや、紙のゴミが入っていた。紙には北朝鮮側にある工場「龍岳山石鹸工場」や、そこの製品と見られる「服の石鹸(洗剤)」といった文字が確認されている。一方、問題はそれが爆発したことに注目が集まっている。ソウルの永登浦区、麻浦区、九老区周辺では、対南汚物風船が爆発した後、紙くずやペットボトル、ビニール袋などが散乱しているのが発見された。
また、北朝鮮側は風船を散布した直後の29日未明に、GPS電波妨害攻撃も一斉に行ったことが確認された。北朝鮮は風船をランダムに落として恐怖心を煽ると同時に、北朝鮮がGPS妨害攻撃で混乱を増幅させようとしたとみられる。
韓国軍合同参謀本部や韓国軍関係者は次のようなコメントを残している。
「このような北朝鮮の行為は国際法に明白に違反し、我が国民の安全を深刻に脅かすものだ」
「北朝鮮の風船によって発生するすべての責任は全て北朝鮮にあり、反人道的で低劣な行為を直ちに中止するよう厳重に警告する」
「北朝鮮が風船を大量に飛ばし、GPS妨害攻撃まで実施することで、いつでも韓国社会を混乱に陥れられると誇示しようとしたのだろう」
ただし、29日午後2時の時点で、GPS電波妨害攻撃は中断されたとされ、民間や軍の被害は確認されていない。
「Air raid Preliminary warning」が誤解を生み…
今回の件で実質上、韓国国民が恐怖を感じたのはむしろ「韓国の行政側から市民のスマホに送られた緊急メッセージ」だったようだ。
なかでも複数メディアが、北朝鮮に隣接する京畿道坡州市の市民の様子を伝えている。同地域一帯だけでも11個の風船が見つかった。軍が統制線を張り、爆発物の有無を確認した上で風船の残骸を回収している。
京畿道は、明け方から住民に災害警報メッセージを送りました。しかし、この英語表記の不適切さが指摘された。
「Air raid Preliminary warning」(空襲予備警報)
これに対し、韓国語や「対南ビラ」の意味を知らない外国人は不安に駆られたという。避難の必要がないと分かるまで、恐怖に震えなければならなかった。
これは韓国住民をも動揺させた。「Air raid」(空襲)の文言のほか「対南ビラ推定未詳物体」という曖昧な表現が入っていたのだ。
「YTN」は同地域に住む高齢者の声を伝えている。
「(警告メッセージが来て)少し怖いです。恐ろしいです。私は6・25(朝鮮戦争)を経験したので。怖いですね」
京畿道は、国家災害管理情報システムに基づき自動入力された英文メッセージが使用され、「未詳物体」に該当するカテゴリがないため「航空機」を選択したことで「Air raid」の文言が付いたと説明している。
韓国の行政側の災害メッセージの誤りや情報不足については、これまでも度々指摘されてきたもの。現地メディア「YTN」は特に「対南ビラ 空襲警報 災害メッセージ」などと複数ニュースをアップし、疑問を呈している。