能登半島地震・災害のニュースや映像を子どもが見ることについての留意点
能登半島地震で被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。
被災者の皆様の大変な状況と辛く悲しいお気持ちは、察するにあまりあるものです。
皆様が少しでも心の安らぎを得られますようにお祈り申し上げます。
また、救助・支援活動をしてくださっている方々と被災地の状況を伝えてくださっているメディアの方々に、心より感謝の気持ちをお伝えしたいと思います。
さて、このような状況の中で、長年子どもに関わる仕事をしている私としてはひとつ懸念していることがあります。
それは衝撃的な映像が子どもに与える影響についてです。
地震発生から今まで子どもたちも衝撃的な映像をたくさん見てきています。
地震で破壊された建物、道路、火事で燃えさかる炎の様子など…。
これらによって、恐怖を感じたりストレスを溜め込んだりしている子もいると思います。
テレビやスマホを通しての映像であっても、その刺激やストレスが大きくなればPTSD(心的外傷後ストレス障害)やそれに近い症状が出る可能性があります。
これは間接的な被災といえるでしょう。
親御さんとしては、「世の中で起こっていることをしっかり見て欲しい」「地震や津波の怖さを伝えたい」などの気持ちもあると思います。
もちろんこれらは大切なことです。
でも、それも子どもの受容能力に応じて行う必要があります。
幼児、小学生、中学生、高校生などそれぞれの発達段階によっても、または個人の資質によっても受容能力は違ってきます。
大人にとっては防災の必要性や災害支援のあり方を考えるきっかけになることでも、子どもにとってはいたずらに恐怖心を植え付けるだけで終わることもあります。
また、個人の感受性の度合いによっても違ってきます。
大人ですら体調がおかしくなったり元気がなくなったりする人もいます。
このようなわけで、子どもに見せる災害情報については、一定の配慮をしてほしいと思います。
そして、もし子どもが地震を怖がる話をしてきたら、「怖いね」と共感しながらたっぷり聞いてあげてください。
共感してもらえると子どもは話しやすくなり、溜め込んでいた気持ちを十分排出することができます。
また、抱きしめたり優しくさすってあげたりするのもいいでしょう。
もちろん「大丈夫だよ」と言って安心させてあげることも大切ですが、それはたっぷり聞いた後にしてください。
一般的に、大人は子どもが少し話したところですぐ「心配ないから大丈夫だよ」と言ってしまいがちです。
でも、それだと子どもはそれ以上話せなくなり、気持ちを排出できないまま溜め込んでしまいます。
それと、ただ「大丈夫だよ」というだけでなく、大丈夫である根拠も話して納得できるようにしてあげることも大切です。
また、いざというときの身の守り方や避難方法も教えてあげると、それも安心材料になります。
さらに、親子の共同作業で地震に備えて家具の固定をするなど、これを機会にわが家の防災対策もぜひ実行してください。
それは実際上の効果も大きいのと同時に、子どもにとっては何らかの手を講じたということで安心感にもつながります。
そして、「○○ちゃんはお父さんとお母さんが絶対に守ってあげるからね」「お父さんとお母さんがついてるからだいじょうぶだよ」と言ってあげてください。
こういう力強い言葉が子どもを安心させてくれます。
さらには、今困っている人たちのためにできることを親子で考えて実行するのもいいですね。
これは人を思いやる気持ちに直結していきます。
そして、「人のために自分も何かができた」という役割感・自己存在感は子どもに大きな自信を与えてくれます。
ところで、災害の後で子どもが地震ごっこ・津波ごっこ・火事ごっこなどをすることもあります。
こういう災害ごっこで不安や恐怖を表現して精神的な安定をはかるためです。
これを叱って止めると子どもは不安や恐怖を溜め込むことになりますので、見守ってあげてほしいと思います。
また、できる範囲で付き合ってあげるのもいいと思います。
その場合は、地震ごっこの最後に「でも地震が収まってみんな無事でした」などのように安心できる終わり方に誘導する手もあります。
ただし、こういう災害ごっこを見ている人が苦痛を感じることもありますので、周囲への気配りもしたほうがいいでしょう。
※「災害 子どものケア」などで検索してさらなる情報を得てください。