地球の生命は宇宙から来たのか?オウムアムアでパンスペルミア説を検証
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「オウムアムアでパンスペルミア説を検証」というテーマで解説していきます。
観測史上初の恒星間天体オウムアムアの観測事例を基に、初期の地球に宇宙由来の生命が根付いた可能性、つまりパンスペルミア説が正しい可能性を検証した最新の研究成果が2024年7月に公表されました。
●パンスペルミア説
地球上に存在する生命の起源を説明する仮説として、有名なものに「化学進化説」と「パンスペルミア説」というものがあります。
化学進化説は、非生物的な単なる物質が地球内で進化することで生命誕生につながったと考えるのに対して、パンスペルミア説は「地球外で発生した生物が地球に飛んできたことが生命の起源である」と考えます。
これはまるでSFのようで、非科学的な主張に聞こえるかもしれません。
ですがパンスペルミア説は現在でも可能性が信じられているように、それを否定できない根拠があります。
例えば、ほとんどのアミノ酸は左右の手のように、お互いに鏡に映すと同一になる構造のものがあります。
その一方がL型(左型)、もう一方がD型(右型)と呼ばれています。
これらの型を回転させても、もう一方の型と重ねることはできません。
つまりL型とD型は似ているようで全く異なる形状なのです。
不思議なことに、地球上の生物のアミノ酸は、ほぼ全てがL型であることが知られています。
生物で使われているのはその一方だけです。
通常、これらは自然では同じ割合で生成されます。
そのため地球上でL型のみを利用した生命の誕生を説明するためには、特殊な条件が必要となります。
一方で宇宙には円偏光と呼ばれる特殊な光が存在し、これを浴びるとアミノ酸の分布に偏りが生じ、結果的にL型アミノ酸の割合が高くなることを説明できるそうです。
このように地球上の生命が利用するアミノ酸のほぼ全てがL型であるという事実は、円偏光が存在する宇宙に生命の起源が存在する可能性を示すものであるといえます。
また、今から38億年前、つまり46億年前に地球が誕生してからわずか8億年ほどで、既に生命が存在していた証拠が発見されています。
これだけの短期間で生命が発生したというのは、化学進化説では説明しにくい部分です。
もっとも、パンスペルミア説では、地球に降ってきた生物がどこでどうやって誕生したのかまでは明確にできていません。
その起源を特定して、そこでの生命誕生のプロセスを解明するのは非常に困難です。
ただし実際に隕石の中からアミノ酸が検出されたり、例えばクマムシなど、宇宙の極限環境で生存できる微生物が実際に確認されたりなどといった事実も相まって、地球に生命がもたらされた過程として、このパンスペルミア説は現実的に考えられる説の一つとして挙げられています。
●オウムアムアでパンスペルミア説を検証
パンスペルミア説によると、2017年の10月に発見されて話題を呼んだオウムアムアのように、恒星間を移動する「恒星間天体」が、ある惑星から別の惑星へと生命を運ぶ可能性があると考えることができます。
ある惑星サイズの天体に隕石が衝突し、その際に宇宙空間へと飛び出した散乱物が、オウムアムアのような恒星間天体の正体である可能性があります。
この場合元の惑星に極限環境に耐え得る生命が存在していたら、長く危険な宇宙旅行を恒星間天体内部で生き延び、別の惑星へと移動するかもしれません。
実際近年の様々な研究で、星間空間にはオウムアムアのような恒星間天体が予想よりも多数存在し、それらがある惑星系に根付く可能性も予想以上に高いことがわかってきています。
2024年7月に最新の研究成果を公表したチームは、オウムアムアの観測事例を基に、初期の地球に宇宙由来の生命が根付いた可能性、つまりパンスペルミア説が正しい可能性を検証しました。
○研究の手順と結果
研究チームはまず、恒星間空間に存在する恒星間天体の数や質量分布を検証し、最初に地球に生命が生じたと考えられている地球誕生後の8億年間で、初期地球に衝突した恒星間天体の総数を推定しました。
次に、星間空間で生命を守り抜ける恒星間天体の最小サイズを検討し、条件を満たす生物輸送が可能な恒星間天体の総数を推定しました。
というのも、恒星間天体に惑星が衝突する際の衝撃に耐えられるほどの生命でも、特に超新星爆発など超高エネルギー現象由来のγ線など、恒星間空間を超長期にわたって移動する際の危険が大きいためです。
恒星間天体の様々な組成が検討された結果、放射線から生命を守るためには、最低でも6.6mの厚さが必要であると結論付けられました。
そして最終的に、地球誕生後8億年間に衝突した「生命を宿している可能性のある恒星間天体」の数を求め、そこから宇宙由来の生命が根付いた確率、つまりパンスペルミア説が正しい確率を求めました。
具体的に地球上の生命の起源が宇宙由来である確率は、最大で0.001%とのことです。
また宇宙由来の生命が存在する可能性のあるハビタブルゾーン内の惑星は天の川銀河内で約10万個あるという結論を得ました。
なおこの数値は、ハビタブルゾーン内の惑星全てが、恒星間天体が運んできた微生物が生息可能であり、さらに生息可能な期間が100億年程度と非常に長いという、かなり楽観的な仮定の上で得られた推定となります。
まとめると、地球上の最初の生命が宇宙由来の可能性は低いですが、天の川銀河内に恒星間天体が運んだ生命が根付いている惑星は意外と多く存在するかもしれません。
またもしかすると、地球が他の惑星に生命を供給する側かもしれません。
なおこの結果はパンスペルミア説を証明するものでも、地球上の生命の起源に関する議論に決着をつけるものでもありませんが、そのような仮説をさらに検証していく上で貴重な判断材料となることでしょう。