祝日の晴れた午後にはドミニク・ミラーの遠くから呼びかけるようなギターがよく似合う
平成から令和に変わった特別な祝日の昼下がり。
ボクは、昼食にしようと思ったレトルトカレーを温めながら、ドミニク・ミラーの『アブサン』をスピーカーから流していた。
と書いて、もう、いちいち“スピーカーから”とか断らないといかん面倒な時代になったのだなあと思ったのは置いといて…。
このアルバムがその昼下がりの時間にカチッとハマったような気がしたので、書き留めておこうと思った次第。
2019年3月リリースのこのアルバム、キーボードのマイク・リンダップ、ベースのニコラス・フィッツマン、ドラムスのマヌ・カチェに加えて、バンドネオンのサンティアゴ・アリアスがかなりフィーチャーされているところが出色。
タイトルのアブサン、フランス語で言うところのアプサントは、ヨーロッパ南部で広く親しまれている薬草を使って作られるリキュールのひとつ。
南フランスに居を構えるようになったドミニク・ミラーは、その地で印象派の画家たちが好んだこの酒からイメージを膨らませて生まれたのがこのアルバム、とのこと。
♪ ドミニク・ミラーというギタリストの魅力って?
ドミニク・ミラーは1960年アルゼンチン生まれ。1980年代後半にはフィル・コリンズやジュリア・フォーダムといったヒット・チャートを賑わすアーティストのアルバムに参加するようになって頭角を現わしたが、なんといってもスティングの『ソウル・ケージ』レコーディングとツアーへの参加によって、その名声は一気に高まることになった。
1995年にファースト・アルバム『First Touch』をリリースして以降はソロ活動にも力を入れ、なかでも『Shapes』(2003年)はクラシックのモチーフを大胆に融合した意欲作として話題になった、というのが彼のアウトライン。
気になるバンドネオン奏者のサンティアゴ・アリアスは、ディノ・サルーシの弟子にしてマルチ・インストゥルメンタル・プレイヤーというほかにめぼしい情報がなくて申し訳ないのですが、少なくともサッカー選手ではないのでご注意を…。
♪ 『アブサン』のなにがカチッとハマったのか?
改めてアルバムのクレジットを調べ直して、5ピースの編成だったことにビックリしたぐらい、デュオ感がハンパない。
それほど音の密度が低いと感じるのに、薄いという印象がまったくといっていいほど“ない”のだ。
とんこつスープじゃなくて、料亭の一番だし──いや〜、例えが酷いな(^^ゞ。
せっかくドミニク・ミラーが、“アブサンと印象派”というヒントをくれているのに…。
まだ暗くなるには時間があるけれど、ちょっと度数の高い蒸留酒をちびちびとなめて、午睡のまどろみの誘惑に耐えながら、また聴いてみようかな。
そんな気にさせるアルバム、ということです。