「パパ助けて!殺される」恐怖で絶叫する娘と息子の電話 その時、父親は
パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスの報道官は「拘束しているイスラエル人が200人から250人いる」と、16日、動画を通じて明らかにしたとロイター通信などが報じた。
襲撃から2週間が経過しようとする今、家族を拉致されたイスラエルの人々が、世界に向け発信を続けている。写真や映像を公開し一刻も早い救助を求め声を上げ続けている。
大規模な地上戦に向け準備が進むと言われている中、大切な息子や娘、親戚たちが「人間の盾」として使われているからだ。
こうした非人道行為に対して、世界はどのように対処できるのか?
8bitNewsでは、先日インタビューをしたイスラエルと日本のダブル、ミエル・イチハラさんの協力を得て、毎晩のように現地と繋ぎインタビューを重ねている。
今回はまず、21歳と18歳の娘マヤさんと息子イタイさんを拉致された、父イラン・レゲヴさん、母ミリット・レゲヴさんへのインタビューをお伝えする。
ハマスに襲撃されながら携帯電話のテレビ電話を使って救助を求めたマヤさん。父親のイランさんは恐怖で絶叫する娘からの電話のやり取りなども公開した。
映像と合わせてご覧いただきたい。
■音楽フェスをハマスが襲撃 恐怖に満ちた声で電話が
堀・ミエル)
まず、お子さんたちは襲撃を受けた時にどのような状況だったのですか?
イラン)
朝方「7時ぐらいからミサイル攻撃がある」と、娘とチャットのやり取りをしていました。「パパ大丈夫だよ。これからもうパーティーを出るから心配しないでね」と返信がありました。 その後も何回かやりとりを続けました。毎回、娘からは「大丈夫、大丈夫。パパ大好きだからね」と返信が返ってきたのですが、その後、連絡は途絶えました。
そして、午前8時58分、恐怖で震えた声で娘が電話をしてきました。
「パパ、撃たれたの!もう死ぬ、殺される!助けて!」と狂ったように叫んでいました。あまりにも恐怖が伝わってきて、私も頭が真っ白になりました。
「どこにいるんだ!位置情報を送ってくれ。今行くから」というのが精一杯でした。
電話が切れた後、もちろんすぐに車に飛び乗り、南の方へ向かったのですが、残念ながら娘たちがいる会場の敷地には入れませんでした。
その後、音楽フェスの会場からの救助に成功した子たちが乗っていたバスが4、5台到着しました。
1台目が来て、2台目、3台目と娘と息子が降りてくるかと思って待っていたのですが、結局、ふたりが降りてくることはありませんでした。
その後、近辺の病院を全部回りました。子供たちが怪我人としてたどり着いてないか確認して回ったのですが、いませんでした。
本当に地獄でした。
「お葬式を2回やるのか」と、そのときは考えていました。
息子の消息がわかったのはその数時間後でした。
夜中に、息子たちの友人たちが、息子がハマスに拉致されている映像が公開されているのを見つけ知らせてくれました。手足をロープで結ばれていて、ピックアップトラックの荷台に乗せられてる様子が確認できました。
一方、娘の方はどんな状態か一切わからなかったのですが、週が明け、月曜日になってからやっと軍の代表の方が家に来て「誘拐された」と告げられ、拉致されたという確認が取れました。
■娘は、東京への旅行を計画していた
堀・ミエル)
マヤさんやイタイさんは、どのようなお子さんたちでしょうか?
ミリット)
上の子のマヤはとてもリーダーシップのある強い子です。周りのみんながマヤを頼りにして、ついてきてくれるような強い魅力がある子です。
一方で、世界を旅して回ることが大好きで、好奇心に満ちています。
この音楽フェスへも、実はメキシコから帰ってきたばかりで、そのまま夜にパーティーに行ったんですね。既に次の旅先として、南米行きのチケットも買って用意していたのですが、 実は、マヤは「東京に行かなきゃ!」と言っていました。日本に行くことも楽しみにしていたんです。
私たちは「人を愛すること」をテーマに子どもたちを育ててきたつもりです。「性別、宗教、国籍、何も関係なく人をまず愛しなさい」と小さな頃から伝えてきたおかげか、娘も、息子も周囲の人たちとの強い絆を結んでいました。
今は、ポジティブなことを考えることが大切だと思っています。この子たちが帰ってきて、一緒に旅行をして、前向きに本当に楽しい明るい人生を生きていくことを想像しているばかりです。必ずそうならないといけないと思っています。
私の中では、それ以外のアクションはありません。
■「軍人ではない、民間人の犠牲であること」立場を超え目を向けるべき理由
堀・ミエル)
今、日本の人たちに伝えたいこと、世界の人たちに伝えたいことは何ですか?
イラン)
まず、本当に生きているのかだけでもいいのでサインが欲しいです。自分たちの子供だけではなく、拉致され人質となっているすべての人たちの生存確認です。
そして、大切なことは、テロが続いているということです。アメリカでは「9.11」がありました。イスラエルでもテロは今回が初めてではありません。備えているつもりでも、こんなことが行われてしまいました。
今、テロは世界中で起きています。次はあなたたちです。次のターゲットは日本であったり、他の国です。テロというものをそもそも止めない限りは次はあなたです。 これを強く訴えたいです。ぜひ、全力で止めてください。
もうこれ以上、私達が経験した悲しみが他の人にも起きて欲しくないのです。これは必ず国際社会として解決するべきですし、起こさせないための対処をするべきです。
そして、犠牲になっているのは民間人です。軍人ではありません。軍人であっても辛いのですが、民間人が連れ去りに遭うということはあってはいけないことです。
次は「あなた」だということを強く伝えたいのです。
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次回のインタビューは「私は生き地獄を生きている。でも壁の向こう側はもっと酷い地獄を生きている」と語り、イスラエル・パレスチナを超えて、「人道」で繋がるべきだと語るイスラエル人女性、シーラさんのインタビューをお届けする。
彼女は親族10人が拉致され、家は燃やされてしまった。