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「捨てられない食器」から考える我が家らしい食卓

藤原友子小中高4人の母/すぐ片づく暮らし

私は、片づけを通して誰かのマネをするのではなく「自分らしい暮らしを選べる人」を増やす活動を始めて9年になります。

「食器棚の収納」がテーマのセミナーや、個別レッスンの時に必ずといっていいほど聞かれるのが、「人から頂いたけど、あまり好みではない食器はどうしたらよいか」という問題です。

できる事なら手放してしまいたい、だけど人から頂いたモノだから申し訳なくて手放せないのでしょう。きっと多くの人が私もそう!と思うではないでしょうか。

私も、自分の結婚式の引き出物は器にしましたし、誰かに食器を贈ることもあれば、頂くこともあります。

結論としては、どうしても手放せないのであれば使うしかないし、それでも気に入らないなら、使わないことを選んでもいい。結局は自分で決めるしかないのです。

今日は、食器とそれを所有する人のエピソードを2つ紹介します。

食器を変えて感じた「我が家の食卓」

結婚後、義理のお母さんから大量の食器を頂いたAさん。

新品もあれば、使い古された食器もあります。気に入ったモノは使っていましたが、好みに合わないモノは使わずに食器棚にしまい込んだままでした。

その後、Aさんの義理のお母さんは亡くなり何年も経った時、勇気を出して夫に「もう使わない食器を処分し、新しい食器を買って良いか」と相談し。さっそく食器を買い換えたそうです。

新しい食器が食卓に登場した夕飯の時、Aさんはやっと食卓が我が家のものになったと思ったそうです。

子どもは日々成長していき、やがて塾で帰りが遅くなったりして、家族全員で夕飯を食べることがなかなかできなくなります。だからこそ、食事の時間を大切にしたいというAさんの気持ちはよくわかります。

家族はAさんのその時感じた気持ちには気づいていないでしょう。気づいたとしても、ただ食器が新しくなったという、目に見えることだけでしょう。

それでも、自分の選んだ食器が、家族との大切な時間の中に存在しているということがAさんの気持ちを大きく満たしたのでした。

思い出のマグカップでコーヒータイム

夫婦二人で生活をしているSさんの食器棚には、マグカップが約30個ありました。

ノベルティのマグカップ、100円ショップで購入したマグカップ、どこで手にしたかも覚えていないマグカップなど、様々なマグカップが食器棚から次々と出てきます。一番奥から出てきたのは、ペアのマグカップでした。

それは、新婚旅行で買った思い出のマグカップです。

結婚して、お互い仕事が忙しくても、夜くらいはゆっくりおいしいコーヒーを一緒に飲めたらという思いで、購入したマグカップが食器棚の奥に追いやられ、とりあえず手に届くところに置いてあるマグカップで毎日コーヒーを飲んでいたことに気づいたSさん。

せっかく購入したのにもったいないと気づき、思い出のマグカップの置き場を変え、積極的に使うことにしました。

数週間後、コーヒータイムの質が少し変わった、一日にほんの数分しかないコーヒーの時間を大切にしていると感じたようです。

大切な食器だから、使わずにしまっておく、飾っておくのも一つの考え方です。使えば割れることもあるからです。

だけど、今回の2つのエピソードからわかるように、お気に入りの食器を使うことで、食事やコーヒーの時間の質が変わり、人の気持ちを満たすこともあるのです。

自分にとって「食器」の役割とは

モノには役割があります。ただ、その役割は人それぞれの価値観で変わります。

例えば洋服なら、とりあえず寒さをしのぐだけのモノと考える人もいれば、自分を表現するモノと考える人もいます。それは同じ人間でも、時と場合によっても変化します。

食器も同じ。とりあえずお腹を満たすための食べ物の入れ物として考えるのか、家族との食事の時間の演出に欠かせないモノと考えるかで、食器の扱いや選ぶ基準が大きく変わってきます。

「人から頂いたけど気に入らない食器はどうしたらいいのか?」という問題は、自分にとって、食器はどういう役割なのか、食事の時間をどう考えるのかによって、答えが変わってくるということです。

まとめ

食器は、割れていないと捨てにくいものです。私は、気に入らなかったら捨てることを推奨しているわけではありません。でも、気に入らない食器を使うことが、嫌でストレスを感じるのであれば我慢をする必要はないと思っています。

自分の暮らしは、自分が選んだモノでできています。どうせ収納を考えるのなら、どうせ後片付けが必要になるなら、自分の気に入ったモノであったほうが、自分の機嫌もよくなるし、大切に扱うことになるでしょう。

もちろん人から頂いた気持ちの部分は大切にしないといけません。しかし、人から頂いたモノに自分の暮らしを大きく左右されたくはないはずです。

人から頂いたモノでも我が家に入ってきたら、あとは我が家で考える、くらいの気持ちもあってよいのではないでしょうか。

我が家の暮らしの答えは、我が家で決めてよいのです。

それでも、どうしてよいかわからないというのであれば、あまり気に入っていない食器は捨てずに、今の食器棚から一旦別の場所に移動させてみてください。

そうすることで、食器棚は確実にお気に入りの食器だけが残ります。

一度お気に入りの食器だけの生活を体験してみるのです。その体験が、お気に入りではないモノとの付き合い方を考えるきっかけになるかもしれません。

小中高4人の母/すぐ片づく暮らし

片づけのプロとして活動を始めたのに、自分の家は「片づけても、また散らかってしまう」という矛盾に悩む。家が散らかってしまうことを隠そうとしていたが、「いつもキレイじゃなくてもいい。何かあったときにすぐに片づく家にしておけばいい」と開き直り新たなメソッドを確立。 いつもキレイにしなくちゃいけない、もっと頑張らなくちゃいけない、そんなプレッシャーから解放され、もっと自由に、その人らしく生きるお手伝いを「片づけ」を通して行っている。著書『片づけられない主婦と片づけ嫌いの子どもを180度変える本』(マガジンランド)

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