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サンウルブズ稲垣啓太は、頭を打って治療中なのにタックルしようとした。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
古巣相手に持ち前の突進力を披露。(写真:アフロ)

国際リーグのスーパーラグビーに日本から初参戦するサンウルブズの稲垣啓太は、3月19日、昨季在籍したオーストラリアのレベルズとの第4節に先発(東京・秩父宮ラグビー場)。接触プレーで頭を強打し、後半10分に退いた。都内で練習があった21日、当時の生々しい様子を淡々と明かした。対話を重ねるなかで、この先出向く南アフリカにまつわる思い出も紹介した。

昨秋のワールドカップイングランド大会で歴史的な3勝を挙げた日本代表のメンバーで、国内では日本最高峰トップリーグで3連覇中のパナソニックに所属。身長183センチ、体重115キロの25歳で、スクラムを最前列で組む左プロップながら運動量で魅せる。

タフさでも知られる。イングランドでの南アフリカ代表戦(34-32で大会24年ぶりの勝利)で折った右手中指は、いまだに曲がったまま。帰国後のトップリーグでは、額の右側に30針を縫うけがを負いながらプレーを続けたこともある。

試合のなかった第2節を挟んで開幕3連敗中のサンウルブズは、26日にシンガポール・ナショナルスタジアムで南アフリカのブルズとぶつかった後、南アフリカでの長期遠征に臨む。稲垣は今回の故障に伴い、脳震盪の疑いを調査。6日間をかけ段階を踏みながらグラウンドへ復帰するよう診断され、次戦以降の出場も認められたとしている。

以下、共同取材時の一問一答(一部編集)。

――(当方質問)ぶつかった瞬間は。

「僕が追いタックル(ランナーを後方から追いかける形)をして、内側(接点に近い位置)から味方もタックル。そして、(自身が倒れたところへ)相手が上に乗った。思いっきり耐えたんですけど、(首の筋を触りながら)ブチブチっと。めちゃ、痛かったです」

――(当方質問)意識はあったのですか。

「あったんじゃないですかね」

――(当方質問)グラウンド上で治療を受けているなか、レベルズの攻撃は続きます。結局、自身の目の前を走られ、トライが決まりました。

「あれ、気配は感じていたんですけど、だめでしたね。映像を見返すと、何か、(相手を止めようと)手を伸ばしていましたよね」

――当時は、覚えていない。

「…覚えている、と、思いますよ」

――交代時は、自分の足で歩いてベンチへ。

「レベルズのベンチの前を通ったんですけど、ベンチから『大丈夫か? 大丈夫か?』と。『大丈夫だー』って(返事をした)」

――(当方質問)改めて、試合を振り返って。

「ミス、ペナルティが多かったですね。ディフェンスでは前(相手)を観ていないから、(選手間の)幅が狭くなってしまっていた。前半は向こうがそれを把握し切れてなかったから、詰まっていた(6-11と、サンウルブズが5点差を追っていた)。後半のレベルズは、そこをうまく拾って(対応して)きました。外へワイドに展開してきました(最終スコアは9-35)」

――(当方質問)これからシンガポール、南アフリカでの遠征が続きます。

「ディシプリン。決まり事を守る。そこですかね」

――レベルズにいた昨季、南アフリカ遠征時にスーパーラグビーデビューを果たしました。

「向こうの人たちはラグビーが大好き過ぎて、ケープタウンは(地元の)ストマーズのファンだけで満員ですよ。ウォーミングアップをしてたら、『(荒っぽい口調で)ヘイ!』と喋りかけられる。でも、試合が終わったら褒めてくれる感じです」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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