「おかえりモネ」アイオン台風以来の豪雨が父と母のなれそめに関連するかどうか
令和3年(2021年)5月17日から、NHKの朝ドラ「おかえりモネ」が始まりました。
現在は、モネと呼ばれている主人公の永浦百音が、生まれ育った宮城県気仙沼市を離れ、宮城県登米市の森林組合で働きながら気象予報士の勉強を始めるというところまでドラマは進んでいます。
父と母のなれそめは昭和61年(1986年)
第6週の6月22日(火)の放送では、百音が、百音の父・耕治と母・亜哉子のなれそめの話をジャズ喫茶マスターの田中知久から次のような話を聞いています。
・昭和61年(1986年)に仙台の大学・教育学部で学生であった亜哉子は、たまたま訪れたライブハウスで演奏する耕治に一目ぼれをした。
・毎日のようにライブハウスを訪れ、交際を申し込む亜哉子に対し、「島に忘れられない人がいる」と言って耕治が断っている。
とまで言って、田中マスターは「ここから亜哉子の大逆転が始まる」と思わせぶりなことを言って、話を終えています。
これから、いろいろな展開があると思いますが、私が着目したのは昭和61年(1986年)という年です。
この年は、仙台で記録的と言われたアイオン台風以上の大雨が降った年でもあるからです。
アイオン台風以上の大雨
アイオン台風は、昭和23年(1948年)9月16日に紀伊半島をかすめ、関東地方を縦断したのち、仙台沖を強い勢力で北上した台風のことです(図1)。
名前は、当時日本に進駐していた連合軍が、台風が発生する都度、女性の名前を付けたことによります。
アイオン台風では、北上川が決壊するなど、東北地方を中心に死者・行方不明者838名、住家被害1万8000戸、浸水被害12万戸などの大きな被害が発生しました。
仙台での24時間降水量は350.9mmと、まず破られることがないという観測値でした。
しかし、昭和61年にはこの記録が破られています。
それは、台風10号から変わった温帯低気圧により、通称「8.5水害」と呼ばれる大災害が発生したからです。
フィリピンの東海上から北上してきた台風10号は、8月4日21時に伊豆諸島近海で温帯低気圧に変わりましたが、この低気圧が三陸沖で動きが遅くなっています(図2)。
このため、東海・関東甲信・東北地方の広い範囲で大雨が降っています。
仙台では、1時間降水量の最大値は8月5日4時の43ミリでしたが、20ミリ以上の雨が9時間も続き、24時間降水量381.0ミリという記録を作りました(図3)。
昭和61年(1986年)の仙台における百音の父と母のなれそめの話には、台風10号から変わった低気圧による大雨がからんでいると推測していますが、実際の物語はどうなのでしょうか。
放送を楽しみたいと思います。
第7週の「おかえりモネ」
第7週(6月28日から7月2日)の「おかえりモネ」の舞台は、平成27年(2015年)で、9月に朝岡覚気象予報士が訪ねてくることが予告されています。
それ以上の予告はありませんが、ネットで「平成27年9月」、あるいは、「2015年9月」と検索し、その中から仙台に関係しそうなことを探すと、「平成27年(2015年)関東・東北豪雨」がすぐに見つかります。
気象庁が命名するほどの被害が発生した豪雨です。
この時、日本海にある台風第18 号から変わった低気圧と三陸沖を北上した台風第17 号によって、多数の線状降水帯が発生しています(図4)。
栃木県から茨城県にかけては、線状降水帯が9日夜から10日昼ごろまで同じ地域にかかり続け、記録的な豪雨となりました。
10日から11日にかけては、宮城県と中心に東北地方で再び南北に伸びる線状降水帯が4時間ほど形成されています(図5)。
このため、月平均降水量が1日で降るという記録的な大雨となり、総降水量は関東地方で600mm、東北地方で500mmを超えています。
仙台での24時間降水量は269.5ミリを観測し、歴代5位の記録でした。
父・耕治と母・亜哉子のなれそめに関連するのが歴代1位の豪雨のときとすると、気象予報士になる前の百音と朝岡気象予報士が合うのが仙台で歴代5位の豪雨のとき、そして、気象予報士になった百音が直面するのは、歴代2位の令和元年東日本台風による豪雨です。
仙台の24時間降水量が多いときに何かが起きていそうです。
「おかえりモネ」は、気象考証がしっかりしており、ドラマの構成上少しデフォルメがあるだけです。
また、東日本大震災の描写についても事実に忠実に表現しています。
「おかえりモネ」の一週間の振り返りが放送される土曜日の案内役、「おかえりモネ」の一週間の振り返りが放送される土曜日の案内役、宮城県出身のサンドウィッチマン(伊達みきお・富澤たけし)は、百音が気仙沼市の安波山から気仙沼市街地とその向こうの大島の惨状を見つめたように、実際に安波山から惨状を見ています。
ドラマを見た後にネット検索をして詳しいことを知って再度楽しめる、あるいは、ドラマを見る前にネット検索して、実際の現象をどう扱っているかを予想して楽しむ等、ネット検索により、より深く楽しめる新しいドラマの形態ではないかと思います。
図1、図2、図3、表の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。
図4の出典:ウェザーマップ提供資料に筆者加筆。
図5の出典:ウェザーマップ提供。