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「食事からのフラボノイド摂取増」で「ガン死リスク減」。1万人8年弱観察データ【最新情報】

黒澤恵(Kei Kurosawa)医学情報レポーター

「ガン」も生活習慣病

日本では癌(悪性腫瘍)で亡くなる方の数が増え続けています。死因としてもダントツの一位。かつて最多だった、脳卒中や心筋梗塞などの脳心血管系疾患(脳血管疾患と心血管疾患)を追い抜いてしまいました。

ではガンを防ぐにはどうすれば良いでしょう?

手っ取り早いのは生活習慣の改善です。男性のガンの4割以上、女性でも3割弱は、生活習慣に原因があると言われているからです [国立がん研究センター「がん情報サービス」] 。

「食生活」も生活習慣の一つ。そして最近、「食事でフラボノイドをたくさん摂る人はガンによる死亡が少ない」という論文が発表されました [文末文献1] 。簡単にご紹介します。

発表したのは中国・安徽医科大学のツィーチャン・ツォン氏たち。2月25日に、ネイチャーが出している「サイエンティフィック・レポート」という国際学術誌が掲載しました。

「フラボノイド」の多い「食事」で「ガンによる死亡」リスクが低下

ツォン氏たちが調べたのは、米国在住の約1万2千人です。米国政府が実施した全国調査(NHANES [エヌ・ヘインズ])データから、食事内容の詳細な聞き取りを実施していた人たちを抽出しました。そしてこの人たちがその後どうなったか、約8年間追跡しました。

その結果、摂食フラボノイド量で4群に分けると、「最多」群では「最小」群に比べ、ガンで死亡するリスクが、なんと半分以下まで低くなっていたのです(0.45倍)。

さらに細かく調べると、フラボノイドはその種類(ケンぺロール、ケルセチン、ミリセチン、イソラムネチン)を問わず、多食に伴い「ガンによる死亡」リスクは減っていました。

ケンぺロールは、茶葉、ほうれん草、ケール、ブルーベリーなどに含まれています [北海道大学医学部保健学科]。
ケルセチンは玉ねぎや緑茶、ブロッコリーからの摂取が多いとの論文 [PDF] があります。
ミルセチンはクルミに豊富とされ、赤ワインにも含まれているといいます [Wikipedia]

さらにミレセチンは、食事からの摂取が多いと、アルツハイマー病で死亡するリスクも低くなっていました。

ガン細胞の増殖を止める、ガン細胞を自滅に追い込む

ではなぜ、フラボノイドで「ガンによる死亡」が減るのでしょう?

ツォン氏たちはまず、フラボノイドが「ガン細胞の増殖を止める」可能性を指摘しています。細胞が増える(分裂する)には「細胞周期」という過程をたどるのですが、フラボノイドはこの「細胞周期」を止める働きが基礎研究で報告されています。

さらにガン細胞を、自ら引き金を引く細胞死(アポトーシス)に追い込むスイッチを入れる働きも、フラボノイドには知られています。

これらが相まって細胞のガン化を防いでいると、ツォン氏たちは考えているようです。

大事なのは「食事で摂る」こと

このように、フラボノイド摂取が増えるに従い、ガンやアルツハイマー病による死亡のリスクが減る可能性が示されました。

ただしフラボノイドは「摂りすぎる」と有害です。かえって発ガンリスクを増やす可能性が指摘されているからです [文末文献2] 。

なので安易にサプリには走らず食事で摂取できる量にとどめておきましょう。ツォン氏たちもこの点には釘を刺しています。

まとめ

いかがでしたか?

「フラボノイドを食事からたくさん摂ると、ガンで死亡するリスクが減る」という論文の紹介でした。

フラボノイドについては次のような論文紹介記事も書いています。こちらもぜひ、ご覧ください。ではまた!

今回ご紹介した論文

  1. 食事からフラボノイドをたくさん摂るとガンで死亡するリスクが減る
  2. 食事で摂れる以上のフラボノイドはガンを増やす可能性がある

【注意】本記事は医学論文の紹介です。研究結果の文責は「論文筆者」にあります。また論文の解釈は論者により異なる場合もあります。さらにこの論文の内容を否定する論文が存在する可能性もゼロではありません。あくまでも「参考」としてご覧ください。

医学情報レポーター

医療従事者向け書籍の編集者、医師向け新聞の記者を経てフリーランスに。15年以上にわたり、新聞社系媒体や医師向け専門誌、医療業界誌、会員向け情報誌などに寄稿。近年では医師向け書籍も共著で執筆。国会図書館収録記事数は3桁。日本医学ジャーナリスト協会会員(含筆名)。

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