「男性は野菜」「女性は果物」で「肝臓がん」リスク低減?13万人データ解析で明らかに【医学論文】
がんによる死亡として5番目に多いのが「肝臓がん」
今回は久しぶりに「がん」の話題です。取り上げるのは「肝臓がん」。日本では「がん」による死因として5番目の多さです [国立がん研究センター「がん情報サービス」]。
早期に発見しても5年の間に、ほぼ半数の患者さんが亡くなります [国立がん研究センター「がん情報サービス」]。
治療法が進歩してきたとはいえ、やはり予防するに越したことはないようです。
肝臓がんの原因は大酒やウィルスだけではなかった
と書くと「いや、それほどお酒は飲まないから心配ない」という声が聞こえてきそうです。でも待ってください。「肝臓がん」が大酒飲みの病気」だった時代は過去のもの。
またウィルス感染による「肝炎」がなくても「肝臓がん」になる人が増えているのです。
では何が「肝臓がん」の原因に?
「メタボ」が原因の肝疾患から発がんも
答えは「NAFLD(ナッフル・ディー)」。「非アルコール性脂肪性肝疾患」の略称です。
この肝疾患はいわゆる「メタボ」により引き起こされます。余分な脂肪が肝臓に溜まってしまい、その結果、(ウィルスに感染したのと同様に)「炎症」が起き、肝臓が「傷害」され、発がんへつながってしまうのです [国立がん研究センター「がんの解説」] 。
となると、「メタボ」と密接な関係のある「食事」が肝臓がん発症に与える影響を調べたくなるのが研究者の性(さが)。
上海交通大学(中国)のシェン・チウミン氏もその一人だったようです。中国人およそ13万人を解析したデータを、2024年2月12日に「欧州栄養学雑誌」という国際学術誌で報告しました [文末文献1] 。
その結果、明らかになったのは「男性では野菜をたくさん摂る食生活、女性では果実をたくさん食べる食生活で肝臓がんになるリスクが低くなっていた」という事実です。
男性は「野菜をたくさん」、女性は「果実たくさん」で肝臓がんリスクが低かった
もう少しだけ、説明させてください。
チウミン氏たちの研究は以下のような内容でした。
肝臓がんのない男性およそ6万人、女性7万2千人を、男性は約10年、女性は17年観察しました。
そしてその間に肝臓がんを「発症した人」たちと、「しなかった人」たちの間で、食生活に差がなかったのか調べたのです(食生活は観察開始時に調査)。
すると、男性では「食事に占める野菜の割合」が最も高いグループでは最も低いグループに比べ、肝臓がんになる確率が33%、低くなっていました(0.67倍)。
また「野菜の割合が高くなるほど、肝臓がんのリスクが低くなる」という、反比例の関係も認められました。
同じように女性では、果物が占める割合の最も高いグループで最も低いグループに比べ37%、やはり肝臓がんになるリスクは減っていたのです(0.63倍)。
こちらも男性同様、果物が占める割合と肝臓がんリスクは反比例していました。
因果関係は不明
ただし「野菜」や「果物」に肝臓がん抑制作用があるかどうかは、この研究では分かりません。でも「野菜に富んだ食生活をしていた男性」「果物をよく食べていた女性」で肝臓がんが少なかったのは事実です。
だったら難しいことはさておき、男性は「野菜」、女性は「果物」を摂る量をちょっと意識して増やしてみませんか?
それで肝臓がんのリスクが減るなら損はないはずです。
最後に
いかがでしたか?
男性では食事に占める野菜の割合、女性では果物の割合が増えるほど、肝臓がんになるリスクが低くなっていたという論文のご紹介でした。
飲食物とがんの関係については次のような論文紹介記事も書いています。こちらもぜひ、お読みください。
今回も最後までお付きあいいただき、ありがとうございました。ではまた!
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今回ご紹介した論文
本記事は医学論文の紹介です。データの解釈は論者により異なる場合もあります。またこの論文の内容を否定する論文が存在する可能性も皆無ではありません。あくまでも「参考」としてご覧ください。