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“コロナゼロ”誇示の「3密」党大会――北朝鮮の主要プレーヤーの、なんと4人に3人が交代

西岡省二ジャーナリスト/KOREA WAVE編集長
代表者が密集する中で開かれる朝鮮労働党大会=朝鮮中央テレビより筆者キャプチャー

 北朝鮮の朝鮮労働党大会(第8回)が5日午前9時、平壌の4・25文化会館で開幕した。初日の様子は6日朝、北朝鮮公式メディアが報道した。会場には前回(2016年5月)よりも約2000人多い計7000人が集結。参加者の中でマスク着用者は見当たらず、巨大な会場に密集して座っており、「新型コロナウイルス感染者はひとりも出ていない」という主張を誇示するかのような発信ぶりだ。

◇会場入りは5000人+2000人

 党大会とは北朝鮮の最高意思機構であり、あらゆる国政運営の方向性が党大会を通じて決定される。

 朝鮮中央テレビの映像によると、会場の前方壁には「以民為天」「一心団結」と書かれた大きなスローガンが掲げられている。参加者は金正恩委員長も含め左胸に金日成主席・金正日総書記の肖像徽章をつけている。

 大会参加の各界代表は5000人(前回3667人)と大幅に増えている。ただ、前回719人いた軍人代表が今回は408人に急減。半面、国家行政・経済幹部代表(前回423人→今回801人)、党政治部門代表(前回1545人→今回1959人)、核心党員代表(前回786人→今回1455人)、科学や教育などの活動家(前回112人→今回333人)など、他の部門は大きく増加している。オブザーバーは1387人から2000人に増えている。

 さらに特徴的な変化は、大会執行部に選出されたメンバーだ。

 執行部の人数は39人と前回と同様だが、メンバーは10人(金委員長のほか、崔竜海、李炳哲、金徳訓、朴奉珠、李日煥、金英哲、崔富日、呉寿容、崔相建の各氏)以外の29人(74.4%)が交代している点だ。新メンバーの中には、金委員長に極めて近い実妹の金与正氏と趙甬元氏の両・党組織指導部第1副部長も含まれている。

 党大会の司会は金才竜副委員長(前首相)が司会を務めている。

◇現場の声を聴取か

 金委員長は黒の人民服姿で高級車で会場入り口に到着。会場の演壇に上ると参加者は一斉に席を立って拍手をしながら歓声を上げた。

 金委員長は開会の辞で「国家経済発展5カ年戦略の目標はほとんど全ての部門で遠く達成できなかった」と経済面での失敗を改めて認めた。

 前回の党大会で打ち上げた計画のうち、間違ったこと、怠慢した点、形式にとらわれた点など「党指導における欠点は何か、その真相を解剖学的に調べた」と明らかにした。

 その過程で「大衆こそ立派な師であるという真理を再確認し、大会準備を進めながら党組織と党員の意見を広く聴取したのが全く正しかったことを確信した」と述べている。金委員長自ら、内部の問題点を深刻に受け止めているとみられ、指導部からもたらされる情報だけでなく、より現場レベルでの事情聴取をしたことを示唆しているようだ。

 開会の辞は、落ち着いた雰囲気の中、15分ほど読み上げられた。映像を見る限り、金委員長は派手なジェスチャーもなく淡々としていた。

 党大会は数日間続けられる見通し。金委員長は5日に活動総括報告を読み上げており、6日もそれを継続したとみられる。

ジャーナリスト/KOREA WAVE編集長

大阪市出身。毎日新聞入社後、大阪社会部、政治部、中国総局長などを経て、外信部デスクを最後に2020年独立。大阪社会部時代には府警捜査4課担当として暴力団や総会屋を取材。計9年の北京勤務時には北朝鮮関連の独自報道を手掛ける一方、中国政治・社会のトピックを現場で取材した。「音楽」という切り口で北朝鮮の独裁体制に迫った著書「『音楽狂』の国 将軍様とそのミュージシャンたち」は小学館ノンフィクション大賞最終候補作。

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