『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』で学ぶ希望の心理学
■ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー
「もう一つのスターウォーズ」。スターウォーズのスピンオフ作品、外伝とも言える映画。他のスターウォーズ映画とは異なり、正義の味方のジェダイは登場しません(ただしデス・スターやスター・デストロイヤーは今までの映画にも増して見事に表現されています)。
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スターウォーズの第1作(『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』)の直前を描きます。第1作では、帝国の究極兵器デス・スターの弱点を示した設計図に関して、「これを入手するためにどれほど多くの仲間が命を失ったことか」と一言だけ語られていますが、今回は設計図を奪う話を1本の映画にしました。
面白いです! なるほど、こうして「新たなる希望」が生まれたのかとわかります。特に後半のスピード感あるれるストーリーと映像は必見。スターウォーズ初心者も楽しめますし、ずっと見続けて来たファンが嬉しくなるシーンも随所に登場です。
テーマは、「希望は、死なない─。」
今回は、フォースを使う正義の味方ジェダイは登場しないのですが、フォースは物語のやはり中心にあると私は感じました。フォースは、信仰であり、フォースは希望なのでしょう。
■フォースとは
フォースとは、ジェダイの騎士が使う超能力のもとになるものなのです(単に超能力というのも抵抗がありますが)。
物語の中で「フォースと共にあらんことを」という挨拶の言葉が出て来ます。これは、「神のご加護がありますように」といった意味でしょう。
フォースよる、サイコキネシス(念力)で、手を触れずに相手を投げ飛ばしたり、宇宙船(戦闘機)を持ち上げたりします。フォースの予知能力と俊敏な動きによって、ライトセーバー(剣のようなもの)で、敵からの銃撃にも負けません。
フォースによって人間業ではない操縦ができたり、コンピューターでなければ制御できないような繊細で素早い操作もできます(これでデス・スターを破壊しましたね)。
でも、フォースはそれだけではありません。フォースは宇宙全体に満ちていて、攻撃にも癒しにも使え、人の心と心をつなぎます。
■フォースと希望
スターウォーズですから、戦争です。この映画は、特に戦争映画です。でも、ただの戦争映画ではありません。愛国心のための自己犠牲を礼賛しているわけではありません。あくまで、SF映画であり、ファンタジーですから、戦いも一つの象徴でしょう。
平和で幸福だった宇宙が、悪の存在によって支配されようとしている。究極兵器も完成まじか。もう降伏するしかない。そんな状況で、微かな希望の光が見えます。
その希望によって戦う人々を描くのが、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』です。
それは、私たちの人生や、私たちの現実世界にもあることでしょう。私たちは宇宙船に乗って戦うわけではありませんが、戦いは必要です。辛い仕事や、無理解な人々の中で、相手を負かすことではなく希望を失わないことが、私たちの戦いです。
大抵の物語で、主人公は大活躍します。敵は簡単に銃で撃たれて死ぬのに、正義の味方には弾が当たりません。すごい運転で、ギリギリのところで危険から逃れるカーチェイスも、よく登場します。
ただのお気楽なストーリーかもしれませんが、もしもフォースの力がるなら、それもありうることでしょう。
もちろん、現実の世界にフォースがあるわけではありません。無謀なことをしてはいけません。けれども、本作ローグワンの中にも、無敵で不死身の主人公が登場するわけではありません。スターウォーズのスピンオフとして、普通の人間が懸命に戦う姿を描きます。
フォースとは、私たちの希望であり、あきらめない心、強さであり優しさであり、人の良心であり互いに信じ合う心なのでしょう。
希望を失った時、私たちは戦う力を失います。たとえば心理学の実験でも、「もうだめだ」と思った瞬間に、思考力はがくんと下がることがわかっています。希望を持ち続けチャレンジを続けることで巨大な壁が打ち壊されることは、滅多にないかもしれません。今回の映画でも、作戦の失敗確率は97.6パーセントでした。
それでも、現実世界でも滅多に起きないことが起きることはあります。
研究によれば、幸運な人とは特別恵まれて人ではなく、希望を持ってチャレンジし続ける人だとわかっています。幸福が失われ、人々が絶望だと感じた時こそ、希望は必要なのでしょう。
「希望は悲しみの涙から、希望は怒りのうめきから生まれる」(『きぼう こころひらくとき』ほるぷ出版)。
「フォースを信じて」「希望があれば、戦える」(『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』)。