台風多発 息を吹き返すエルニーニョ
50年ぶり、台風が多発
さくら前線が北上する今、日本のはるか南の熱帯域では今年4個目となる台風(メイサーク)が発生しました。台風のシーズン入りは例年、6月ごろからで、この時期までに台風4号が発生するのは1965年以来、50年ぶりのことです。台風4号は今後も西へ進み、日本への直接的な影響はありません。
ただ、ここで注目したいのは台風の多さです。
1951年以降の台風データからみると、1月から3月までに台風が3個以上発生した年は、これまでに5年だけです。やはり台風の発生ペースが速いと思わざるを得ません。この答えは熱帯海域の大気にあるのではないかと思い、調べてみました。すると、いずれの年もエルニーニョ・ラニーニャ現象が関係していることが分かりました。
再び、息を吹き返すエルニーニョ?
この表は1月から3月までの台風発生数の合計を調べ、1951年以降で最も多かった年を表にしたものです。
エルニーニョ現象が発生した年が3例、ラニーニャ現象が発生した年が2例と見方が分かれました。この調査から、あるひとつの方向性は言えませんが、興味深いデータです。
気象庁は今年2月、エルニーニョ現象は終息に向かっているとみられると発表し、昨夏から続いていた「ゆるやかなエルニーニョ現象」はいったん終わる見方を示しました。
しかし、1か月後の3月にはエルニーニョ現象はいったん、終息したが、この夏にも再び、エルニーニョ現象が発生する可能性が高まったと前回の予想を覆す見方を示しました。
少し込み入った話ですが、まとめると「エルニーニョ現象は終わったが、この夏にも再び、勢力を盛り返す可能性がでてきた」ということです。
実際、気象庁のほか、アメリカなど海外の気象機関の予測でも、エルニーニョ現象が継続、もしくは再び、発生すると予測が目立ちます。
昨夏はエルニーニョ現象の影響で、西日本では冷夏、記録的な大雨に見舞われました。エルニーニョ現象の発生予測はまだまだ発展途上ですが、海外の気象機関とも活発に情報のやり取りが行われていて、米海洋大気局はこの夏までエルニーニョ現象が継続する確率は50%から60%としています。まもなく迎える夏・大雨シーズンを前に、台風とエルニーニョの関係に目が離せません。
【補足として】
世界気象機関(WMO)によると、昨秋から「弱いエルニーニョ現象」が続いているが、大気への影響は限定的であり、最近は中立(ニュートラル)な状態となっている。今年5月にかけては「弱いエルニーニョ現象」が続く可能性が高い。
しかし、エルニーニョ・ラニーニャ現象は通常、春に終息することが多い。また、この時期のエルニーニョ現象予測は精度が低く、最新のコンピュータ予測では、平常状態からさまざまな強さのエルニーニョ現象まで、予測にばらつきがある。
【参考資料】
気象庁,平成27年2月10日 エルニーニョ監視速報 No.269(2015年1月)
気象庁,平成27年3月10日 エルニーニョ監視速報 No.270(2015年2月)
米海洋大気局,EL NINO/SOUTHERN OSCILLATION (ENSO)DIAGNOSTIC DISCUSSION issued by CLIMATE PREDICTION CENTER/NCEP/NWS and the International Research Institute for Climate and Society:5 March 2015
世界気象機関,WMO El NiNo/La NiNa Update:16 March 2015
世界気象機関,WMO Brochre on ENSO 2014