GPI(滑空段階迎撃用誘導弾)の主開発企業がノースロップ・グラマンに決定、迎撃弾頭の新イメージ絵公開
イージス・システムで制御する極超音速兵器迎撃ミサイルとして日米共同開発予定のGPI(滑空段階迎撃用誘導弾)は主開発企業をレイセオン社とノースロップ・グラマン社で受注を争っていましたが、この度ノースロップ・グラマン社が勝利してこれを担当することになりました。
ノースロップ・グラマンのGPIイメージ絵
キルビークル(迎撃弾頭):動画のページ
- GPI:Glide Phase Interceptor(滑空段階迎撃用誘導弾)
- Kill vehicle:キルビークル(体当り式の迎撃弾頭)
- HGV:Hypersonic glide vehicle(極超音速滑空体)
ノースロップ・グラマンが新たに発表したGPIのキルビークルのイメージ絵には、側面のサイドスラスターの噴射だけでなく後部に推進ロケットの噴射が描かれています。キルビークル自体に推進ロケットとしての機能があるので、これまでのアメリカ軍の大気圏外迎撃ミサイル(GBI、THAAD、SM-3)とは形式が異なっています。
※GBI、THAAD、SM-3の迎撃弾頭はサイドスラスター噴射制御のみで後部に推進ロケットは付いていない。
GPIの構成:主推進ロケット2段+推進ロケット付き迎撃弾頭
- 第1段ロケット:Mk.72ブースター(既存のアメリカ製)
- 第2段ロケット:日本担当
- キルビークル(第3段ロケット相当):アメリカ担当、日本も一部担当
日米のGPI開発担当の割り当てはSM-3ブロック2Aの開発時と同様の部位になります。迎撃ミサイルの肝心要となる迎撃弾頭のキルビークルをアメリカが主として担当し、その他の部分を日本が担当して補佐する形です。開発担当作業量が50対50の同等の比率であったとしても、重要性はアメリカ担当部分が圧倒的に重く、GPI開発が成功するかどうかはノースロップ・グラマンのキルビークル設計に掛かっています。
GPIの迎撃弾頭の構成:サイドスラスター+空力操舵+TVC?
新しいイメージ絵からではキルビークルの後部ロケットにTVC(Thrust Vector Control:推力偏向制御)の装置が付いているかどうかは確認できませんが、装着されている可能性が高そうです。極超音速滑空ミサイルを迎撃するためにはサイドスラスターだけでは不足なので(細かい位置調整は得意だが大幅な軌道変更は不得意)、空力操舵かTVCを追加で装着する必要がありますが、ノースロップ・グラマン案のGPIは全ての種類を装着する複雑な構成となるのかもしれません。
各国の極超音速兵器迎撃ミサイルの迎撃弾頭の構成要素
- サイドスラスター+空力操舵+TVC?:GPI(日米共同開発)
- サイドスラスター+空力操舵:HGV対処用誘導弾(日本、防衛装備庁)
- サイドスラスター+TVC:IRIS-T HYDEF(ドイツ、Diehl)
- サイドスラスター+TVC:アクィラ(フランス、MBDA)
- 空力操舵+TVC:アロー4(イスラエル、IAI)
- 空力操舵+TVC:スカイソニック(イスラエル、ラファエル)
※ただしGPIのキルビークルのイメージ絵にある後部の推進ロケット部分が、キルビークルと一体化しているものではない可能性もある(イメージ絵を見る限りは一体化しているように見える)。
各国の極超音速兵器迎撃ミサイルの迎撃弾頭(推進ロケット付き)
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