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『M-1』決勝でも大暴れ! ランジャタイは悪ふざけのスペシャリストだ!

ラリー遠田作家・お笑い評論家

数年前、お笑いライブを見ていて気になった芸人がいた。おとなしそうな2人の男が普段着のような服装で舞台に上がり、片方が自分の妄想の世界に入り込み、奇声をあげて舞台を跳ね回る。もう一方は棒立ちのままでそれを見守りながら状況説明を加えていく。

特殊すぎる彼らの漫才は、当時は当たり外れが激しい印象があった。ウケるときは爆発的にウケるのだが、空気をつかめずにウケないまま終わってしまうことも多かった。

だが、彼らは頑なにその芸風を変えなかった。自分たちの漫才スタイルを貫いているうちに、少しずつウケ具合のムラがなくなり、大ウケすることが増えてきた。

そして2021年、彼らはついに『M-1グランプリ』の決勝の舞台にこぎつけた。伝説的な地下芸人・ランジャタイがついに地上に名乗りを上げたのだ。

その前年の『M-1』では、型破りな漫才を見せたマヂカルラブリーが優勝して「あんなのは漫才ではない」と批判する人が続出していたが、ランジャタイに比べればまだまだかわいいものだった。

この日、ランジャタイが見せたのは、ボケの国崎和也の耳の穴から猫が入り込んでいくという奇抜な設定の漫才だった。ツッコミの伊藤幸司は猫と格闘する国崎を温かく見守っていた。

ランジャタイの暴走に審査員一同は頭を抱えた。この破天荒すぎる漫才をどう評価すればいいのか、審査員の間でも評価が分かれた。事務所の先輩でもあるサンドウィッチマンの富澤たけしは「決勝だぞ、お前ら」と一喝し、松本人志は「見る側の精神状態によりますよね」とコメントした。

国崎はネタの前後にも終始ふざけた態度をとっていて、隙間なく小ボケを連発。手製のオール巨人の等身大パネルを持ち込んでボケるなど、『M-1』という大会そのものをおちょくるようなパフォーマンスで強烈な印象を残した。

彼らはこれをきっかけに注目されて一気に人気者になった。ランジャタイはただ面白いだけではなく、2人のキャラクターにどこか目が離せなくなるような魅力があり、熱心なファンも急増した。

彼らの芸を楽しむコツは、ブルース・リーの言葉を借りるなら「考えるな、感じろ」。一度ハマったら抜け出せない蟻地獄のような笑いがあなたを待っている。

作家・お笑い評論家

テレビ番組制作会社勤務を経て作家・お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など、多岐にわたる活動を行う。主な著書に『松本人志とお笑いとテレビ』(中公新書ラクレ)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと『めちゃイケ』の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)、『なぜ、とんねるずとダウンタウンは仲が悪いと言われるのか?』(コア新書)、『M-1戦国史』(メディアファクトリー新書)がある。マンガ『イロモンガール』(白泉社)では原作を担当した。

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