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【アジア杯】ヨルダンに負けた韓国メディア "予想外に厳しい批判"の理由 「76年間で最悪」とさえ…

ヨルダン戦に敗戦後、韓国選手を慰めるクリンスマン監督(写真:ロイター/アフロ)

韓国でアジアカップ準決勝を見た。7日0時にキックオフとなった韓国―ヨルダン戦だ。

アジアカップの話は当然のことながら“サッカーファンの間では”沸騰している(試合中継は基本的に有料サブスクアプリやケーブルテレビのみ)。サッカーファンの声を聞いていくと、予想外にこういった声が多く聞こえてくる。

「優勝でもしたら、クリンスマン監督はどうなるの?」

「逆に勝ったらどうしよう」

クリンスマン監督の「戦術なし」のサッカーに対して批判の声も最高潮に達しているのだ。そこまでも「就任後5試合勝てず」「米国の家からリモート会見多発」に対して不満の声が高まっていた。もちろん純粋に優勝を望む声もあったが。

写真:ロイター/アフロ

翌日のメディアの報道ぶりも、そういったスタンスが感じられた。

「ヨルダン戦より恥ずかしい敗戦は76年間なかった」

なんと1948年のロンドン五輪決勝トーナメント1回戦でスウェーデン(この大会で金メダル獲得)に0-12で負けた試合を引き合いに出して、批判を展開している。

キツい。ここまで劇的な展開でベスト16でサウジ、ベスト8でオーストラリアを下したものだからあまり強く出られなかった分をぶつけるかのように強い見出しが打たれているのだ。また「NEWS1」は「記録的な衝撃敗戦…1996年のベスト8イラン戦の2-6敗戦以来の大敗」と見出しを打ち、こちらも歴史的な敗戦であることを伝えた。

その他にも「ソウル新聞」が8日に予定されている記者会見について「クリンスマン『辞任? 試合の分析をやるつもり』…選手たちは監督を讃える」と見出しを打った。辞めるのか、という話にまで言及している。

韓国のYouTube番組で「協会のこと」を言及したら…

この敗戦の直前、筆者は5日に現地で最高峰のサッカーYouTube番組「ダルスネライブ」に出演した。国内で超有名な解説者パク・ムンソン氏が運営するチャンネルで、フォロワー数は56万。本来は1月31日のベスト16の試合で日韓戦も予想されたため、オファーを受けた。しかし実際にこの対決は実現せず、「ならば2月5日でどうか?」と話をいただいた。

番組内で韓国語でやりとりするなか、こういうことをずばり聞かれた。

「大韓サッカー協会をどう思う?」

外国人にぶった切ってほしい。そういう願いを感じた。こう答えた。

「カタールW杯のあと、自分たちのサッカーをどう持っていきたいのか。まったく明言しないでしょう? 2018年のカタールワールドカップの時のパウロ・ベントによるビルドアップ志向のサッカーは韓国にとって大きな変化に見えた。大会後、それを継続するのか、しないのか。協会からのちゃんとした宣言がないように見えますよね。京郷新聞がちょっと書いていたようにも思いますが。どういう方向に行こうとしてクリンスマンに頼んだのか。道が分からないから、現在地も分からない。そりゃイライラするでしょう? 傍から見てて、そう思うよ」

一方の日本について、良いか悪いかは別にして、こういうストーリーがあることも伝えた。ロシアW杯のベスト16ベルギー戦でポゼッションばかりを志向するあまり、大逆転負けを喫した。だから当時ヘッドコーチだった森保一監督の第1次政権の時には「遅攻」に加え「速攻(カウンター)」をプラスし、臨機応変に使い分けることを目指した。しかしカタールでは遅攻部分は機能せず。カウンターでドイツ、スペイン相手に勝点を得た。だから第2次政権の就任会見ではポゼッションも機能させる、という話が出たという点が出た、とも。

ああ言い過ぎたか。わざわざアウェーにまで出向いて、韓国のそんな込み入った事情まで、日本人が憎き日本と比較しながらあれこれ指摘するのだ。炎上する。そう思ったが…結果は違った。

むしろそこが「ぶっちゃけ発言 クリンスマンの後ろで大韓サッカー協会は何をしている?」として動画のタイトルとなり、これが25万アクセスを記録した。

筆者がYouTubeで挙げた「京郷新聞の記事」とは、2023年3月1日のもの。同年3月9日のクリンスマン監督就任前、2月28日に大韓サッカー協会のマイケル・ミュラー技術委員長(ドイツ)が記者会見で話した内容を指摘した。

こういった内容だった。

「しかし、マイケル・ミュラー韓国サッカー協会国家代表強化委員長は、先月28日の記者会見で、これまで積み重ねてきたビルドアップサッカーを放棄するともいえるニュアンスを漂わせ、ファンの間で物議を醸した。ミュラー委員長は、これからヨルゲン・クリンスマン監督と共に韓国サッカーに進むことに際し、『パウロ・ベント監督が代表チームを去った後、韓国サッカーの未来について考え続けてきた』と述べ、『悩んだ末に、いま私たちが考えているのは、もっと多くの得点機会を作り出し、得点を多くできる方法を見つけることです。カウンターアタックを通じて、もう少し単純に速い速度で得点できることを期待している』と述べた」

関連の発言はこれだけ。当のクリンスマン監督は「攻撃的なサッカーを好む」と口にしているだけでは…。ファンやメディアの怒りも当然というところか。「なんとなく勝ってきた」と感じさせたチームに結果が出たところで、強い批判を浴びせる。そういった傾向が出ている。

吉崎エイジーニョ ニュースコラム&ノンフィクション。専門は「朝鮮半島地域研究」。よって時事問題からK-POP、スポーツまで幅広く書きます。大阪外大(現阪大外国語学部)地域文化学科朝鮮語専攻卒。20代より日韓両国の媒体で「日韓サッカーニュースコラム」を執筆。「どのジャンルよりも正面衝突する日韓関係」を見てきました。サッカー専門のつもりが人生ままならず。ペンネームはそのままでやっています。本名英治。「Yahoo! 個人」月間MVAを2度受賞。北九州市小倉北区出身。フォローお願いします。https://follow.yahoo.co.jp/themes/08ed3ae29cae0d085319/

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