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金建希韓国大統領夫人 盗撮動画で「高級バッグ賄賂疑惑」発覚 「取材側も卑怯」韓国で大モメ

(写真:ロイター/アフロ)

暴露された盗撮動画には、こんなやりとりが映し出されていた。

チェ牧師:ああ、就任のプレゼントもお送りしましたよね…

金建希:何でこんなのを買ってくるんですか?

チェ牧師:いや、いや、ただ。次からはプレゼントはできないけど…

金建希:あー、こんなことしないで…本当にやめてください、もう。

海外有名ブランドのクリスチャン ディオールのポーチが画面に映る。

金建希:こんなに高いもの、絶対に買ってこないでください

チェ牧師:はい、了解しました。それでも気持ちですから。

そう言いつつも、韓国の尹錫悦大統領夫人、金建希(キム・ゴニ)氏はバックの受け取りを拒否しなかった…。

事務所でディオールの高級ポーチを受け取り…

尹錫悦大統領の配偶者、金建希(キム・ゴニ)夫人に再び騒動が勃発だ。

自らのオフィスで300万ウォン(約30万円)のディオールのバッグ(ポーチ)を受け取る隠しカメラ映像が国内左派系のYouTubeメディアに暴露された。昨年9月に撮影されたというこの映像、11月27日と28日、YouTubeチャンネル「スピークス」、「ソウルの声」などを通じて、公開された。仕掛け人は地上波MBC記者出身のチャン・ジンス記者だ。このリークと前後して同社を退社している。

この報は、28日にポータルサイトNAVER上のデイリーアクセスランキングで「MBC」の2位、「JTBC」の3位となった。

金建希氏が運営する会社「コバナコンテンツ」のオフィスを訪れたチェ・ジェヨン牧師。在米韓国人で、南北を行き来しながら統一運動を行ってきた人物で、昨年1月にカカオトークを通じて金夫人に最初に連絡を取った。尹錫悦大統領の候補当時の反北公約に問題意識を抱いた彼は、統一問題について助言をしたいと考え、金建希氏に近づいたという。

一連の報道に対し、最大野党「共に民主党」のパク・ソンジュン報道官は猛批判を繰り出している。

「金建希夫人は高級バッグを贈り物として受け取ったのか、責任を持って説明せよ」

「大統領府の立場とは何なのか、明らかにすべき」

「YouTubeチャンネルの主張が事実であれば、明らかな違法行為である。したがって、見返り性のある賄賂であるかどうかも明らかにしなければならない」

「大統領府は、贈り物をしたチェ氏と面会した理由は何か、不適切な請願があったかどうかも明らかにしなければならない」

パクジュミン民主党院内首席副代表も「本当にディオールのバッグを受け取ったのか。受け取ったのであれば、まだ所持しているのか。バッグを贈ったチェ牧師とはどんな人で、どんな関係なのか。何のために面会をしたのか。このような部分について大統領府側から答えてほしい」と声明を発表した。

大統領夫人側の問題「法的」「倫理的」そして「警備」

何が問題なのか。

まずは金建希氏側の法的問題。彼女が受け取ったとされる高級バッグの授受が、韓国の贈賄禁止法に抵触している可能性がある。韓国では公務員やその配偶者が職務と関連して一定額以上の金品を受け取ることが禁じられている。チェ牧師は、部屋に入ってすぐに自分が準備したディオールのポーチを金建希氏に渡し、彼女は「なぜこれを買ってくるのか」、「こんなことはしないで。本当にやめてください。もう」と言いながらもプレゼントを拒否しなかった。

法的問題はなくとも、倫理的な問題が指摘されうる。金建希氏が高価な贈り物を受け取ったことが事実であれば、公職にある者の配偶者として、公共の信頼を損なう可能性がある。リークしたチャン記者は、チェ牧師が昨年6月にも尹大統領の当選を祝って彼女のオフィスを訪問し、180万ウォン(約18万円)相当のシャネルの香水と化粧品セットを贈ったと伝えた。

尹錫悦大統領側は今回の件について「何かを発表するに値しない」とコメント。しかし、これについて保守系メディアの「JTBC」は「バッグを受け取ったのかどうかは明らかにすべき」と報じている。

大統領府側の要人警備問題も指摘されうる問題だ。動画は昨年9月のもの。まだソウル市内龍山の新大統領府への移転前の時期で、夫人は市内のソクチョにある自宅マンション地下のオフィスで業務をこなしていた。盗撮された映像には、大統領府の警護員と推測される人物たちは、チェ牧師の身分証明書を確認後、簡単なセキュリティチェックを行い、スムーズに通過させている。

第2の「朴槿恵罷免」を狙った策略

最も大きな議論を生みそうなのが、取材した側の行動の是非だ。

隠しカメラ映像は当然、金夫人の知らないところで秘密裏に撮影されたものであり、報道手法としての「おとり取材」の是非が問われている。

チャン記者によると、公開された隠しカメラ映像は、チェ牧師の腕時計に取り付けられたカメラで撮影されたもの。 ディオールのポーチ購入過程なども映像で記録されており、最初から金夫人の金品授受を狙った作戦とも見られる。

さらに、 高級バッグを渡したチェ牧師が韓国の記者団に対してこう「暴露」している。

「北朝鮮に関する特別講義、統一に関する特別講義を私に依頼し、人を集めて講義をして欲しいと約束しました」

そして、朴槿恵政権を罷免に追いやった大統領友人による国政介入「チェ・スンシルゲート事件」の再現を狙ったものだとも。

「大統領への人事介入や忖度、国政介入がカメラに捉えられた場合、それを指摘しようと思って撮られた映像です」

そしてそれは、左派YouTubeメディア「ソウルの声」が仕掛けたものであったと。

「腕時計型の隠しカメラも『ソウルの声』が提供したものであり、バッグについても牧師である私にお金があるわけではなく、『ソウルの声』の関係者が購入したものです。私はそれをただ渡しただけです」

ちなみのこの「ソウルの声」、2022年の大統領選挙の際に金建希氏との電話通話内容の「オフレコ部分」を公開。批判覚悟の取材手法で尹大統領サイドを追い詰めるするスタンスを取っている。

仕掛け人の記者の「古巣」も強い抗議

さらにここにステークホルダーとしてチャン記者の「古巣」、地上波MBCが関わってくる。チャン氏は21日付で同社を退社したが、取材時にはMBC記者の身分で動き、退社後に元々繋がりのあった「ソウルの声」でこの映像を発表した。

MBCの労働組合(3労組)は、「第三者が高級品を購入し、贈り物を購入してその過程を隠しカメラで撮影し、記録した後、伝達者であるチェ牧師を利用して金夫人の反応を観察する行為は、当事者間の録音を許可する我が国の法規の許容範囲を超えるもの」とし、「そのような録音は一般的に違法と考えられる」と声明を発表。

さらにプライバシーの問題について厳しく言及した。

「大統領官邸が設置される前に大統領夫婦の住居と生活空間として使用されていた瑞草洞の自宅と地下オフィスは、大統領夫婦の警護のために指定された警護区域の可能性が非常に高い」

「プライバシーが護られるべき空間で大統領夫婦の名誉を傷つけ、国の品格を下げようとする不純な意図を持って侵入した」

当のチャン記者は「海外ではおとり取材を使用しなければ取材源へのアプローチや取材が不可能な場合、またその対象が社会的弱者でなく権力者である場合には、おとり取材を認めている」と主張。

今後も論争は続きそうだ。

吉崎エイジーニョ ニュースコラム&ノンフィクション。専門は「朝鮮半島地域研究」。よって時事問題からK-POP、スポーツまで幅広く書きます。大阪外大(現阪大外国語学部)地域文化学科朝鮮語専攻卒。20代より日韓両国の媒体で「日韓サッカーニュースコラム」を執筆。「どのジャンルよりも正面衝突する日韓関係」を見てきました。サッカー専門のつもりが人生ままならず。ペンネームはそのままでやっています。本名英治。「Yahoo! 個人」月間MVAを2度受賞。北九州市小倉北区出身。仕事ご依頼はXのDMまでお願いいたします。

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