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なでしこジャパン 郷里凱旋ゴールの杉田妃和 試合前に語っていた「北九州への思い」

(写真:築田純/アフロスポーツ)

なでしこジャパンの杉田妃和(ポートランド/アメリカ)が、地元北九州での凱旋ゲームを自らのゴールで飾った。

23日に北九州スタジアムで開催されたアルゼンチン女子代表戦。先の豪州・ニュージーランド共催のワールドカップを終えた後の初の国際親善試合は、10月26日に始まるパリ五輪アジア2次予選へのスタートでもあった。

杉田は後半スタートからふだんのボランチよりも前目のポジション、右サイドMFとして出場した。相手との距離感をしっかり目視した上でのポジション取り、左利きながらも右足もふんだんに織り交ぜる技術の高さを見せつけた。

迎えた66分、チームにとって6点目となるゴールを決める。

GKのスローを清家貴子(浦和)が受けた瞬間、杉田は相手の攻守の切り替えが遅れている隙を見逃さなかった。一気に相手ゴール裏のスペースに走り込むと、杉田も「ボールを受けた瞬間から笑顔が見えた」と感じ取っていた清家から絶妙のボールが送り込まれる。

センターサークル付近でオフサイドラインをかいくぐった時点で「勝負あり」。

3度バウンドしたボールをゆっくりトラップし、余裕を持って左足でゴールにボールを流し込んだ。自身にとって代表チームでは2021年6月以来のゴールだった。

試合後、杉田は中学時代までを過ごした郷里北九州でのゴールをこう喜んだ。

「代表で得点できるっていうのは、それだけでも嬉しいことです。さらにこういう場所で取れたというのは見に来てくださる方も多いですよね。家族や友達が見に来てくれているなかで、ちゃんとした形で届けられたというのは嬉しいことです」

地元でのプレーについては「いつもよりスタンドがあたたかい感じはしました」。

また、試合中には自らが幼き日にプレーしたFCグローバル(宗像市)の子どもたちの声援がスタジアムに轟いた。

「アップの時から聞こえていました。可愛かったですよね」

試合後の杉田にこんなことも聞いてみた。

相手のDFラインの裏をとってから、「独走状態」になり、GKと1対1になる。そしてゴールが決まるまでの時間は7秒だった。サッカーでは結構「長い時間」だ。その間、スタンドの注目を一気に浴びた。

写真:築田純/アフロスポーツ

もしや、その時郷里のことが頭をよぎったりしませんでしたか? 漫画みたいに…。

「それにはちょっと、時間が足りませんでした。もう少しあれば!」

郷里の地を踏んだのはいつ以来?

いっぽう、杉田は試合前にじっくりと北九州への思いを口にしていた。

JFA(日本サッカー協会)の公式動画にて、今回なでしこジャパンのメンバーたちが北九州に集った様子がアップされた。

ここで杉田は「大トリ」として地元への思いを口にしている。

「W杯を見て、楽しいと言ってくれて、(23日のアルゼンチン戦を)観に行きたいと言ってくれている人がいる。(女子サッカーは)楽しいんだよ、という点をしっかり見せたい」

いっぽう、北九州への帰還はじつは「ワールドカップ後に帰ってきたので1ヶ月ぶりくらい」。練習場となった本城陸上競技場の思い出についてこう話した。

「ここは陸上記録会で使う場所。ここで(サッカー)練習はしたことがないですね。サブグラウンドで自主練はしたことがありますけど」

そう言った後、若き日に「陸上トラックを走った時の辛かった記憶」を話している。

杉田妃和(すぎたひな)

北九州市出身。1997年生まれ。小学校時代には二島藤木フットボールクラブに入り、男子に混じってプレーしたことも。高校から名門の藤枝順心高等学校(静岡)に進学。世代別代表に選ばれるなど活躍した。AFC U-16女子選手権2013ではMVPを獲得。2015年にINAC神戸レオネッサに入団後、2022年からはアメリカNWSLのポートランド・ソーンズFCへの完全移籍を果たす。なでしこジャパンメンバーとして42試合出場3ゴール。W杯に2度出場(2019年、23年)。東京五輪への出場も果たした。身長162センチ。

写真:築田純/アフロスポーツ

吉崎エイジーニョ ニュースコラム&ノンフィクション。専門は「朝鮮半島地域研究」。よって時事問題からK-POP、スポーツまで幅広く書きます。大阪外大(現阪大外国語学部)地域文化学科朝鮮語専攻卒。20代より日韓両国の媒体で「日韓サッカーニュースコラム」を執筆。「どのジャンルよりも正面衝突する日韓関係」を見てきました。サッカー専門のつもりが人生ままならず。ペンネームはそのままでやっています。本名英治。「Yahoo! 個人」月間MVAを2度受賞。北九州市小倉北区出身。仕事ご依頼はXのDMまでお願いいたします。

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