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堂安律 カタールでのドイツ戦勝利後 所属クラブのサポに「言われたこと」

ドイツ戦を控えたトレーニングに望む堂安律。@ヴォルフスブルク/筆者撮影

日本代表がドイツと9月9日(現地時間)に対戦する。

カタールW杯で勝利したからこそ得られた再戦の機会だ。

本来、あの勝利の感激はもっとじっくりと噛みしめるべきものだった。

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なにせ日本にとってのドイツは、1960年代から薫陶を受けてきた国。伝説のメキシコ五輪銅メダル獲得はドイツ人指導者デットマール・クラマーの下での快挙。後にJリーグとなる日本サッカーリーグも彼の提言でスタートした。Jリーグ開幕時のロールモデルはドイツだったことは有名だし、選手だって1970年代に渡った奥寺康彦を皮切りに多くが現地で成長し続けた。

そんな国に勝った。

でもカタールではすぐに次の戦いが待っていた。余韻に浸る時間などなかった。

写真:ロイター/アフロ

というわけで、今回、再戦を前に改めて掘り起こしてみた。

「あの日本の勝利、ドイツではどう見られているのか」

9日の試合会場ヴォルフスブルクで、ドイツでプレーする日本代表選手などに話を聞いた。

現地は今週だけが特別に暑い! 練習中のスプリンクラーの豊水から逃げる代表選手たちも少し楽しげ/筆者撮影
現地は今週だけが特別に暑い! 練習中のスプリンクラーの豊水から逃げる代表選手たちも少し楽しげ/筆者撮影

ドイツでの日本サッカーへの関心は…

そもそもドイツのほうが日本サッカーに強い関心を持つ、という話はあまり聞かない。もう20年近く前の話になるが、2006年のドイツW杯前に同国で暮らした。当時、日本メディアの方からの依頼でちょっと困った内容があった。

「日本はどう見られていますか?」

現地メディアに目を凝らしても、ほとんど情報がなかった。当時暮らしていたケルンで、周囲の人に話を聞いても「え? 日本はW杯に出場するの?」と聞き返されたものだ。これが実態だ。まあ世界で日本について細かく見ている国なんぞは、韓国くらいのものだ。

今回、ドイツの街中や旧知の知人にも「カタールWでの対戦では日本が勝ったけど、どう思う」と聞いたが…

「ドイツにとって悪い機会だった」「ドイツが良くなかったんだよ」といった適当な返答。

ただひとり、ケルン在住の40代女性はこう答えた。

「起こるべくして起きた面もあると思います。ドイツはもっと注意深くあるべきでした。日本にはとても速くていい選手が多かった。あとゴールキーパー(権田修一)はとてもいい選手だった」

いっぽう、7日の日本代表の練習場(@ヴォルフスブルク)には元ドイツ代表のピエール・リトバルスキー氏が訪ねてきた。話を聞くと、こう答えてくれた。

「結構、驚いたと思うよ。日本って強いんだって」

翻って言うと、「あまり知らなかった」ということだ。ちなみにリトバルスキー氏、すべて日本語での回答だった。

筆者撮影
筆者撮影

ならばもう彼らに話を聞くしかない。

ドイツにいて、ドイツ人たちからの反応を一番近いところで聞ける人たち。

それでいてサッカーに最も深く関わっている人たち。

「ブンデスリーガでプレーする日本代表選手たち」だ。

堂安が自チームサポーターに言われた内容とは?

遠藤航

カタールW杯代表。ドイツに勝った試合、当然のごとくピッチにいた。当時はドイツのシュトゥットガルト所属だった。

いや、あんまり、別になんも言わなかったですけどね。なんかちょっと悔しいのかわかんないですけど、ドイツ人はあんまり話しかけてこなかったです。まあ、でも、前半で2-0とか3-0になったら(結果は違った)、みたいなことは言っていましたけど。そこはまあ、ちょっと悔しさもあるのかなみたいなのありますけど、はい。

―9月7日(現地時間)の練習後に

田中碧

カタールW杯代表。先のドイツ戦では先発し71分出場。ブンデスリーガ2部デュッセルドルフ所属。

(ドイツ人たちも)まあ悔しさとかは、もちろんあると思いますけど(あまりその話にはならなかった)。でも試合の内容が「日本が圧倒したか」って言うと、そうでもなかったんで。彼らも負け惜しみって言ったらあれですけど、プライドがあるんで。日本が圧倒して勝っていれば、自分たちの力がより印象付けられたと思うんですけど。

やっぱり世界的に見て、ドイツも強いチームだと思います。そういう結果(カタールでの勝利のような結果)っていうのを繰り返していくことが、日本が強い国になるための、第1歩にはなると思うんで。それを継続できるかどうかだと思います。

―9月6日の練習後に

試合については周囲のドイツ人たちからは話があまり出なかった、というのが実際のところのよう。

ではなぜ、そうだったのか。

一般的に考えられる理由のひとつが、ドイツ国内でカタールW杯での注目度が低かった、という点も言われてきたことだ。大会前、独公共放送ARDが行った世論調査によると、56%が今大会を「全く見ない」と回答したという。スタジアム工事段階での死者が出たことについて、人権意識から抗議する風潮が強かった。

いっぽう、コアなフットボール的文脈で行くと少し違った事情があるようだ。堂安律の話が非常に興味深かった。

堂安律

言うまでもない。カタールの地でドイツ相手に75分に起死回生の同点ゴールを決めた。ブンデスリーガ1部フライブルク所属。

筆者撮影
筆者撮影

フライブルクのサポーターからは「よくやったぞ」というか…自分ら(所属チーム)の選手ってことで、かなり褒めてくれた感じはありましたね。

まあ、ドイツ代表のことをあんまり応援してないドイツ人が多いのかなって印象で。というのは、サポーターが(ブンデスリーガの)各チームだけを応援してて、特に代表チームに対して「ワンチームを応援」ということになってるイメージはないので。そこに関してはあんまりない。ないっすね。

まあ、日本は勝つことで得られる経験値っていうのも大いにあるだろうし、そういうものを通して、より成長していくことが、日本 という国として必要なことなのかなと思います。

―同上

代表人気に頼りすぎずとも、サッカー人気が揺るがない。これまた強い国の姿。「カタール」の枠が外れたところで、今一度相手に強いインパクトを。

吉崎エイジーニョ ニュースコラム&ノンフィクション。専門は「朝鮮半島地域研究」。よって時事問題からK-POP、スポーツまで幅広く書きます。大阪外大(現阪大外国語学部)地域文化学科朝鮮語専攻卒。20代より日韓両国の媒体で「日韓サッカーニュースコラム」を執筆。「どのジャンルよりも正面衝突する日韓関係」を見てきました。サッカー専門のつもりが人生ままならず。ペンネームはそのままでやっています。本名英治。「Yahoo! 個人」月間MVAを2度受賞。北九州市小倉北区出身。仕事ご依頼はXのDMまでお願いいたします。

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