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遠藤航リバプール加入 韓国はどう見る?「クロップと日本の縁起」「デュエル通用?」「韓国にもいいこと」

(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

18日、日本代表の遠藤航のリバプール移籍が発表となった。これを韓国がどう報じているのか。概ね好意的で、「クロップが日本人を獲得した初年度の好成績」について報じるメディアもある。

まず韓国でのイングランド・プレミアリーグのステイタスは「日本でのそれよりも圧倒的に高い」。欧州リーグのなかでもトップオブトップ。「このリーグだけを見る」と言ってもよいほどの人気を誇る。スペインやドイツ、イタリアのリーグも人気を有してきた日本とは事情が違う。

日本は1960年代からサッカー雑誌文化が発展し、多様なリーグをじっくり楽しむ傾向があったが、韓国はスポーツ紙での報道が中心。国内にせよ海外リーグにせよ、速報中心の傾向があった。

さらに03年のパク・チソンのオランダPSV移籍からチャンピオンズリーグでの活躍、そして05年のマンチェスター・ユナイテッド移籍の流れがこれを決定づけた。彼の足跡とともに「テレビで欧州サッカーを観る」という習慣が定着。選手の欧州移籍も「イングランド・プレミアリーグに行ってこそ」という見方がある。

いっぽうで遠藤航の韓国での認知度は、攻撃系の選手と比べて「これから」というところ。2022年カタールW杯前に韓国記者たちと「日本の選手層がいかに分厚いか」という話になったことがある。そのなかで「替えの利かない選手は誰?」と

聞かれ「遠藤航」と答えると、キョトンとされたこともある。

そういった事情のなかで、世界最高峰リーグにライバル日本の選手が加わったのだ。

歓迎、熱狂といった表現で「好意的報道」

昨日の移籍確定から今日にかけ、韓国内最大のポータルサイト「NAVER」では、80本近い記事が掲載された。

移籍に関しては、おおむね好意的に報じられている。インターネットメディア「EXPORTS NEWS」が特徴的な見出しを打ち、韓国内の見方を伝えている。

「遠藤航のリバープール移籍急上昇、日本列島が大興奮…『これがまさにクロップの構想』」(EXPORTS NEWS)

「日本人選手の獲得→リーグ優勝…『リバプール入団』の遠藤航、クロップの『日本人方程式』を継続するか?」(同)

リバプール監督のユルゲン・クロップはドルトムント(ドイツ)を率いた2011年-12シーズンに香川真司を獲得してリーグ優勝。またリバプールでは2019-20のシーズン途中に南野拓実を獲得して優勝。いずれも「日本人選手を獲得した初年度に優勝」という"縁起のよさ"がある。これが引き継がれるかに注目する記事だ。

「リバプールの遠藤、日本最高齢PL進出記録…クロップ歓迎『30代の選手を買わない我々が獲得するほど』」(SPOTV NEWS)

「日本のキャプテン遠藤航が驚くべき加入…リバプールの「新しい中盤のトライアングル」プレミア頂点奪取への重要ポイントへ」(EXPORTS NEWS)

この記事では遠藤のことをこう紹介している。

「1993年生まれで30歳の熟練ミッドフィールダーの遠藤は、2019年の夏にシュトゥットガルトにレンタルで加わり、ドイツのブンデスリーガのピッチに立った。その後、2020年1月に完全移籍に成功し、正式にシュトゥットガルトの選手となった遠藤は、4年間で133試合に出場し、15ゴール12アシストを記録して中盤の要として活躍した」

「ディフェンスからのビルドアップとプレスからの脱出能力が優れていると評価される「6番」のミッドフィールダーとして、遠藤は2023/24シーズンを控えたシュトゥットガルトのキャプテンに任命されたが、プレミアリーグの名門リバプールが求愛の声をかけたことで移籍を決意した」

ビルドアップ、というより遠藤航の特徴といえばまずは「1対1の守備の強さ」「デュエルの強さ」というところか。

いっぽう、リバプールが遠藤を獲得した背景についてはこう続ける。

「世界的なビッグクラブ、リバプールは、昨季のプレミアリーグを5位で終え、UEFA(欧州サッカー連盟)チャンピオンズリーグ出場権獲得に失敗した。リバプールが不振のシーズンを過ごした理由として、中盤の度重なる負傷と不振が大きな要因とされている」

そこあって遠藤は「怪我しにくい選手であるという点で高評価を受けている」。過去3シーズンで102試合中99試合に出場し、このうち欠場した3試合は、それぞれ出場停止、新型コロナウイルス感染、脳震盪により出場できなかった試合であったと伝えている。

ファンのコメント「世界最高峰でデュエル通じる?」

いっぽう、サッカーファンたちの意見はどういったものか。サッカー記者ハン・ジュン氏が運営するチャンネル「ハン・ジュンTV」では、移籍説が浮上している段階から動画が発信されていた。こういったコメントが寄せられている。

「遠藤は良い選手で、価格に対してもまあまあだけど…プレミアリーグはブンデスリーガとの試合のスタイルが大いに異なるので、テンポと体のぶつかり合いに耐えられるか…気になりますね」

「問題はプレミアリーグの荒々しい体のぶつかり合いと速い攻守の切り替えに適応できるかどうかだと思う。これまでの日本人選手がほとんどイングランドで長く持たず、すぐに外れていった理由だったから」

「当然、アジアの選手がイングランド・プレミアリーグに増えるのは韓国にとって良いことだ...韓国の選手がプレーするのも少し楽になり...プレミアに行くべきアジアの選手の国は韓国、日本、イランくらいだ」

「困難はあっても上手くやれば素晴らしい獲得だろうね。やはりリバプールのミッドフィールダーの位置は誰が来ても厳しい場所だから、ファビーニョの全盛期の半分でもやってくれれば成功だよ」

デュエルが強みの遠藤が、その点で世界最高峰と言われるリーグで果たして通用するのか。この点に関心が集まっているようだ。

吉崎エイジーニョ ニュースコラム&ノンフィクション。専門は「朝鮮半島地域研究」。よって時事問題からK-POP、スポーツまで幅広く書きます。大阪外大(現阪大外国語学部)地域文化学科朝鮮語専攻卒。20代より日韓両国の媒体で「日韓サッカーニュースコラム」を執筆。「どのジャンルよりも正面衝突する日韓関係」を見てきました。サッカー専門のつもりが人生ままならず。ペンネームはそのままでやっています。本名英治。「Yahoo! 個人」月間MVAを2度受賞。北九州市小倉北区出身。仕事ご依頼はXのDMまでお願いいたします。

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