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ネトフリ韓流ドラマ「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」 韓国で爆裂ヒット中「すごいの来た」「次が待てない」

韓国での同ドラマ放映会社「ENA」公式サイトより

きょう27日の夜、韓流ドラマ「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」の第9話がネットフリックスで配信される。

なにせこの夏、韓国で大シンドロームとなっている作品だ。

「国民ドラマ」

「突風」

「熱狂」

現地メディアではそんな表現が飛び交う。アメリカCNNが「イカゲームを継ぐ作品」と評価したという報道の引用や、はたまた毎度毎度のお家騒動「Netflixがないはずの中国で盗み見している」という話まで。ついには今週、世論調査会社「韓国ギャラップ」の「韓国人の好きなテレビ番組」の1位にもなった。

とにかく「めっちゃキてる」のだ。Netflixにて6月29日から配信中で、全16回。韓国ではまず水・木の夜(韓国での21時からのリアルタイム放送の後)に「ENA」という新設のケーブルテレビ局で放映される。日本でも直後にNetflixで配信となっている。

放映8回目(7月21日)にして韓国の全国視聴率13.093%。これはかの「愛の不時着」11.349%(同作8回目2020年1月12日)を上回る数字だ。

日本のユーザーにもめちゃくちゃオススメ。内容の紹介はここから記すとして、なにせ「まだ8話しか放映されていない」。それゆえ、頑張れば「今から見始めて」「リアルタイム視聴に追いつく」ことが可能。

それでも全16話の半分が残っているのだ。

はぁ~今、ここで内容の話に入る前に、前段を言っていることすらもどかしい。早く内容の話がしたい。それくらいに面白い。

筆者も4話放映後(7月7日)あたりから「韓国での評判がスゴイ」と嗅ぎつけ、ドはまり。YouTubeでアップされている「主人公ヨンウと親友グラミが友達になるシーン」を何度も見返すほどになった。コロナ時代の「第4次韓流ブーム」からまんまとドラマにハマったクチだが、劇中のあるシーンを見直すなんて初めてだ。

ご覧になってない方へのガイドとして、ネタバレをできる限り少なく。かつ詳しい方には「韓国の見方」および「オフィシャルの説明」のご紹介を改めて。

  • このシーンで使われているピンクの手袋は小道具ではなく、ヨンウ役パク・ウンビン本人の個人的所有物だそうです。

キャラクターが"売り"のドラマ

天才的な頭脳と自閉症スペクトラムを同時に持つ新人弁護士ウ・ヨンウの大手法律事務所でのサバイバル記

と、いうのが韓国のオフィシャルサイトでのドラマの説明。ドラマの原語タイトルは「おかしな弁護士ウ・ヨンウ」。

主人公のウ・ヨンウはソウル大法科大学院首席合格にして、自閉症スペクトラムのある新人弁護士。コミュニケーションがちょっと苦手だったり、動きにクセがあるが、小さな頃から読んだ本はすべて記憶しているという「天才」。そんな彼女が抜群の法知識と独自のひらめきで法廷で活躍する、というストーリーだ。

韓国でもこのキャラにドはまりする人が続出中。

「かわいいのにたくましさもある」

「親友グラミとの友情もまた泣ける」

オフィシャルもまた「キャラクターが立っている」点がこのドラマのみどころだと説明する。

面白くて愛らしいキャラクターが見せてくれる「脚本のドラマ」

「自閉症スペクトラム障害」を持つヨンウは、一つの体に長所と短所があるキャラクター。ヨンウの長所はほとんどの人にとって手の届かないものですが、ヨンウの弱点は私たちのほとんどにとって驚くほど脆弱です。164の高いIQ、膨大な量の法律文書や判例を正確に覚える記憶力、先入観や感情にとらわれない自由な考え方。これらがヨンウの強さです。いっぽう敏感な感覚により、しばしば不安から身体をバランスよく扱えなくなり、歩いたり、走ったり、靴ひもを縛ったり、回転ドアを通り抜けたりするのが苦手です。ヨンウは、極端な強さと極端な弱さ、高いIQと低いEQの組み合わせを持つキャラクターで、私たちのほとんどよりも優れており、 私たちのほとんどよりも劣っています。一言で言えば、興味深い存在なのです。

韓国での放映局「ENA」の公式サイトより
韓国での放映局「ENA」の公式サイトより

なにせこのウ・ヨンウ役を演じる主演のパク・ウンビン(29)の演技がスゴイ。韓国ではこんな評価がされている。

「さすがの子役から25年のキャリアの蓄積。ストーリーに没頭できる」

「演技自体がヒーリング」

子役時代の2007年にデビュー。幾多の作品に出演してきた。2012年に「プロポーズ大作戦」(TV朝鮮)に「大人の主役」として抜擢された後、ドラマを中心に11作で主演を務めている。

「ウ・ヨンウ」制作陣はそんな彼女を1年「待った」のだという。本来は2021年に放映しようと主役としての出演をオファーしたが、パク・ウンビンは「役づくりに自信がない」と固辞。

しかし制作陣は諦めなかった。1年後、再びオファー。今度はパク・ウンビンがその情熱に折れた。制作陣はスタッフをほとんど入れ替えず、1年前と同じ体制で彼女を待っていたのだ。パク・ウンビンは一度決めたら突き進む性格、自らノートに丹念に自閉症スペクトラム障害のある人の動きの特徴をメモしていき、役作りに採り入れていった。この姿勢は2019年に出演した野球ドラマ「ストーブリーグ」でも見られたものだという。とにかくメモを続けて、野球の知識を入れていったのだった。

ストーリーを引き立てる「破格の制作費」 

オフィシャルはドラマの説明をこう続ける。

エピソード主導の法廷ドラマ

このドラマは、ソウル大学法科大学院を首席卒業し、司法試験に合格したウ・ヨンウが、大手法律事務所ハンバダの弁護士になるところから始まります。「ウ・ヨンウは天才肌」は、ヨンウと大手法律事務所ハンバダの弁護士が「1話1事件」を解決する構成。毎回、興味津々な新しい事件が挑戦状を差し出してきた時、私たちの主人公がいつものようにカッコよく問題を解いていく姿を見る快感、つまり「エピソード中心の法廷ドラマ」のみが持ちうる魅力を伝えたいのです。

毎度毎度、弱さを抱えた依頼人が現れ、法廷でそれを解決していくストーリーもまた、見どころだ。その「弱さ」や「悩み」が見事に韓国社会の一面を切り取っており、この点も関心度を高めている。

細かいストーリーについてはネタバレが起こりうるゆえ、ここではそれを引き立てる「経費」の話を。

ドラマは韓国では破格の「16話で制作費200億ウォン」で知られる。これは円安の今、20億7800万円に値する。イカゲームの「10話で250億ウォン」にまでは届かないものの、かなりの高額だ。

多く予算が割かれたのは、作中でヨンウが趣味で好む「クジラ」のCG制作だという。ソウルの巨大ビルの横をクジラが舞う絵もあり、彼女の世界観を表現するのに大きな役割を果たしている。

そのほか、彼女が勤務する大手法律事務所「ハンバダ」のセット、エキストラの出演料にも割かれた。たしかにヨンウの勤務先のセットは、これまでの韓流ドラマにもあったような「それだけでも見どころ」というような美しさがある。この制作費の情報が報じられるや、韓国のネット掲示板では「やっぱりすごいドラマが来てるって感じだ」「俺はもう次の回が待てない」といった書き込みが見られた。

キャスティングでは「旬なヒト」が多数出演

いっぽう、これまたすごいのが…スゴイのがヨンウの周囲を固める脇役陣だ。

大物ではなくとも「旬のすごいヒト」をぶっこんできている。

まずは、ヨンウの高校時代からの同級生「グラミ」。

扮するチュ・ヒョニョンは、2021年秋以降、韓国で「旬の人」。最もよく知られるのは、2021年9月に急成長中のウェブアプリ「クーパンプレー」内での「SNLコリア」という番組レギュラー出演からよく知られるようになった。

女優ながらに「お笑いの人なの?」と思われているほどのものまね上手。「尹錫悦大統領夫人のものまね」「韓国にオーディションを受けに来た日本人歌手のものまね」など持ちネタが多い。作中の役さながらに「ぶっ飛んだ人」なのだ。

最も有名なのが「チュ記者」というキャラ。インターン記者のモノマネだ。日本語でいうと「細かすぎる~」部類に入るものだ。筆者自身、SNSに韓国語で「グラミかわいい」と書き込んだところ韓国の友人たちから「これ見ろ」と次の動画を勧められた。

しかも彼女、このインターン記者役のまま大統領候補時代の尹錫悦氏にインタビューまでしているから、なかなかのもんだ。

もうひとり、第3話で登場する「キム・ジョンフン」を演じるのは、超人気YouTuberムン・サンフン(登録者数77万人)。作中のクライマックスシーン、法廷証言の場面ではほとんど「ネ(はい)」と言うだけの演技だったが韓国内では「それもまたスゴかった」との評価を得た。

なにせ、YouTube上では「何かを演じる」ことに強みを発揮してきた存在だ。「予備校講師のものまね」や「ムン・サン記者」などが看板ネタ。

韓国語が分からずとも伝わりそうなのがこの2本だ。

ドラマ出演で人気急上昇のイ・ジュノ役カン・テオ

いっぽう、ドラマへの出演を通じて人気爆発となっているのが、主人公ヨンウの会社のスタッフ、イ・ジュノ役のカン・テオ。ヨンウの入社当日からのロマンスの行方がストーリーに花を添えている。

韓国「ENA」ドラマ公式サイトより
韓国「ENA」ドラマ公式サイトより

国内最大の経済紙「毎日経済」はその魅力をこう評している。

「カン・テオはあたたかみのあるルックスと、情に深い性格で誰からも好かれるイ・ジュノ役を完璧に消化している。のみならず純粋で柔らかい目線でロマンチックな瞬間を作り出し、連日話題を集めている」

1994年6月20日生まれの28歳。この作品を終えた後、兵役に行くことを宣言している。2013年にデビュー後、映画5作、ドラマ18作(うち13作が主役級)に出演してきたが、この「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」が代表作に。「軍隊行き直前に訪れた全盛期」というストーリーがまた女性ファンの関心を高めている。8月7日には韓国プロ野球KTウィズで始球式が予定されるなど、人気も絶頂だ。

そのほか、このドラマはアドリブの多さでも知られる。

第4話でヨンウが上司のチャン・ミョンソク弁護士(カン・ギヨン)のデスクを訪れた際、ヨンウが言いたいことを言って去った。その後、チャン弁護士の「一言多いんだよね」はアドリブ。

また韓国で大人気のヨンウとグラミの挨拶「ウ to the ヨン to the ウ」は、本来台本には「ウヨン・ウ・ヨンウ」と書かれていたという。これに対し、脚本家がグラミ役のチュ・ヒョニョンに「この通りにはやってほしくないんで、これをベースにヒョニョンさんがいいのを作って」とリクエスト。

  • 韓国の制作スタジオ側が紹介する「挨拶の仕方」

チュ・ヒョニョンは「宿題を抱えちゃったな~難しい」と悩み、現場で「ウ to the ヨン to the ウ」を披露した。「自分としては満足な出来ではなかったけど、脚本家の先生からめちゃくちゃ褒められて」採用に。ドラマの代名詞とも言えるほどの有名なフレーズとなったのだった。

もう、ホントに今日の夜が楽しみで仕方がない。Netflixの画面が「新作エピソード」と赤く表示される瞬間が。

吉崎エイジーニョ ニュースコラム&ノンフィクション。専門は「朝鮮半島地域研究」。よって時事問題からK-POP、スポーツまで幅広く書きます。大阪外大(現阪大外国語学部)地域文化学科朝鮮語専攻卒。20代より日韓両国の媒体で「日韓サッカーニュースコラム」を執筆。「どのジャンルよりも正面衝突する日韓関係」を見てきました。サッカー専門のつもりが人生ままならず。ペンネームはそのままでやっています。本名英治。「Yahoo! 個人」月間MVAを2度受賞。北九州市小倉北区出身。フォローお願いします。https://follow.yahoo.co.jp/themes/08ed3ae29cae0d085319/

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