尹錫悦大統領就任で日韓関係が変わるのか。

そういう観点で日本の地上波ニュース、ワイドショーは多くニュースを報じている。

では韓国での反応はどうなのか。

じつのところ、韓国では全体的に見ると「静か」だ。それもかなり。驚くほどに。

確かにこの日は「国内の新大統領就任」の日だ。自国がどうあるべきかを考える時であって、日本について考える時ではない。就任演説で少しでも日本や日韓関係に直接的な言及があればメディアの反応も違ったのかもしれない。

参考：日本にも"すごくさりげなく"触れていた　尹錫悦新大統領就任スピーチ（筆者による）

が…それにしてもちょっと注目度が低すぎる…就任式に参席した林外相の話題は2大ポータルサイトで244本配信されたのだが…

とはいえ、「日本」が全くネット上で話題にならない日などはない。ではこの日、韓国人はいったい何を語っていたのか。

韓国語環境でのWeb上での「言及量（どれほど話題になったか）」のビッグデータを提供する「SomeTrend」で調査してみた。

Twitter,Instagram,ニュース、ブログの合計で「24,281」の言及があった。全体の54％が肯定的だった。

国内で影響力のある「ネット掲示板」のデータは含まれないが、「公共性の高い場所」での発言データだ。「韓日」や「韓日関係」は検索結果のデータ数があまりにも少なく、今回の調査結果からは除外した。

これに紐づいた「関連ワード」でより「日本の何が語られていたのか」が分かる。見事に「韓日関係」や「懸案事項（慰安婦や徴用工の問題）」の話題が…入っていない。

1. ジャンル 2,162
2. アルバム 1,870
3. 右翼 1,841
4. 状態 1,026
5. イベント 959
6. 尹錫悦 912
7. カード 750
8. セブンティーン 748
9. 交換 742
10. 韓国語 737
11. 人口 707
12. アルバム703
13. txt 702
14. 新報 680

1位「ジャンル」と3位「右翼」はコスプレイヤーのツイートが「バズった」結果によるものだ。筆者自身もパッとみて「韓国のおじさんがまた怒ってる」と想像したのだが、実際は若い女性のこういった内容のつぶやきだった。

「いくらコスプレの題材で日本のアニメが多いと言っても、（ソウル市内の）伝統的な宮殿で、作品中に右翼的な傾向が見られる日本ジャンルの作品のコスプレはやめよう」

右翼的、というのは「第二次大戦前や戦中を描いた作品のなかに、日本の軍国主義を想起させるものが登場する作品」と思われる。あまり新大統領就任の話題とは関係がない。あまりどころか「あまりにも」関係がない。

2位「アルバム」、5位「イベント」、7位「セブンティーン」、14位「TXT」は、ここ1年の「韓国での日本」の大いなる実態だ。

「K-POPの男性グループが日本でやる活動についての情報」

アルバムを発売した。ライブをやった。そういう情報。さらに海外旅行が少しずつ解禁になっている昨今、人気グループが日本での活動を発表した際には「旅行」「航空券」といった関連ワードが上位に入ってくる。ちなみに先月あたりは「NCT」が1位になった。今回の「セブンティーン」は、7、8日に日本でのファンミーティングを終えたばかりだ。

ホントにこれが「韓国での日本に関する最大の関心事2022」。いつ調査してもこれが上位に入る。もしくは「地震」「サッカーで日本がひどい目に遭ったり、韓国人プレーヤー(ソン・フンミン)

に嫉妬している」という話題だ。

4位の「状態」は様々な情報と紐づいていているが、これも大統領就任と関係がない。

ひとつめは「ヤフー知恵袋」のような場所で、韓国の若者と思しきユーザーからこんな質問が入ったことによる。

これに対し、日本人ユーザーが韓国語で「日本では漢字が分からない状態で日常生活はできません」と答えたもの。これがポツポツとリツートされた。

さらに「BTSのファンが中学校の時に友達からもらった日本みやげのチョコレートの話」や「韓国の宇宙産業はかつて『日本の1960年代の状態』と言われたが、文在寅政権が発展させた」という内容。

5位にようやく「尹錫悦」が登場。これは「日本は尹錫悦が好き」「尹錫悦のお父さんは奨学金をもらって日本留学した」という内容のツイートに紐づくものだった。

ちなみに「韓国ネット上での"日本"」を知るツールはもうひとつある。"何を調べたか（つまりは何を言ったか、ではなく）"「キーワードに関する検索量」のビッグデータを提供する「BLACK KIWI」だ。

ここでは、この1ヶ月間の「日本（일본）」に関する関連キーワードが分かる。こちらでは…「コロナも落ち着いて海外旅行行けそうだから、日本のことでも調べようか」という内容が上位を占めた。5位まではBLACK KIWIの評価が「関心度が非常に高い」だった。そのほかパラパラと、流行りの「韓国が経済力で追い抜くかも」という話題がある程度だった。ランキングは欄外に記した。

いずれにせよ「日韓関係改善」「両国間の懸案」といったものは上位まったく入らなかった。今、日韓の政治方面で起きている諸問題に「韓国の一般層は低関心」ということだ。これは政治家諸センセイにとっては「何かの仕掛け時」でもあるか。

（了）

「日本」に関する検索関連ワード調査結果（2022年4月10日～5月10日）

1. 日本 旅行 431,800
2. 日本 レート 415,100
3. 日本 入国 180,300
4. 日本 地図 27,720
5. 日本　観光 26,350
6. 日本 飛行機 19,510
7. 日本 経済 9,550
8. 日本 GDP 9,490
9. 日本 IMF 6,890
10. 日本 航空 6,840
11. 日本 就職 5,850
12. 日本 温泉 5,820　
13. 日本 お金 5,600
14. 日本 東京 5,460
15. 日本 旅館 5,000
16. 日本 出国 4,600
17. 日本 GDP 順位 4,250
18. 日本 ホテル 2,360
19. 日本　船 1,900
20. 日本　ゴルフ　1,830