「（退任後は）自然に戻って忘れられた暮らし、自由な暮らしをする。忘れられた暮らしをする、ということは（政界に影響力を残しながら）隠遁生活をするということではなく、現実政治に関与しない、普通の市民として生きるという意味」

文在寅大統領が20日、こう発言したのだという。イ・ナギョン前国務総理ら、自らの政権下での歴代ブレーンたちとの昼食会でのことだ。同日、大統領府のスポークスマンが明らかにした。

任期が切れる今年5月9日後の生活について、こうも続けたという。

「私邸の近くにある寺に行き、嶺南アルプスの登山をし、菜園を耕し、犬猫ニワトリを育てて暮らすつもり。自然と近所を行き来していれば、お会いできると思う」

• 文大統領の「猫好きぶり」を伝えるJTBC

文大統領退任後の「忘れられた暮らし」の発言は今回が初めてではない。

先月30日に国内仏教系の行事でこのキーワードを使い、今月11日には自身のTwitterにこう記している。

「退任したら政治から離れ、新しい生活の話により新しい対話ができるだろうと期待しています」

18日には慶尚南道ヤンサン市の新居周辺のご近所さんに挨拶まわりを行った。夫妻の名前の入った餅の菓子を配ったのだという。

ちなみにこの住居建設を巡っては昨年4月に地元で反対運動が起きている。

大統領府側は「建設に問題はない」としたが、昨年4月27日に現地メディアが現地の横断幕を数えたところ、じつに40以上の「静かな生活が壊される」といった内容の反対の横断幕があったのだという。

夫人のスキャンダルで暗雲が…

しかし望む暮らしがはたして出来るだろうか。

ここにきて新たな疑惑が韓国メディアで注目を集めている。

「金正淑夫人の衣装購入費不正疑惑」

2017年頃から"公費（特別活動費）でプライベート用の服や靴を大量に購入している"という指摘がされていたが、3月29日に大統領府側が公式的に「違法行為はない」と発表。これに対して反発が高まっている。

文在寅大統領の年収は2500万円水準だが、推定でもこれを上回る金額の衣服、アクセサリー、靴などを身に着けているという疑いが持たれているのだ。

今年の2月10日、新大統領選挙の話題で真っ盛りのなか、この件について裁判所から大統領秘書室に対し「詳細を公開せよ」という判決が出た。

しかし秘書室（つまり大統領府）側はこれを拒否した上に3月2日に控訴。理由は「私費での購入であるうえに、特別活動費には領収書提出の義務がない」。

さらに3月29日に大統領府は「この疑惑は事実無根」という立場を公式表明した。

やましくないなら、出せばどうだ？　という話になっている。原告の市民団体は疑惑および資料提出拒否について「強要、業務上横領、特別犯罪荷重処罰法違反」などで訴えている。合わせて韓国納税者連盟は15年来「特別活動費の詳細報告がない」点について、不公平だとして憲法裁判所に訴えることも表明。さらに今回は「被告側の裁判費用は大統領府持ち」となっており、この点からも世論の反発を買っている。

• 疑惑を報じる東亜日報系「Channel　A」

朴前大統領も「同罪」。検察の捜査の恐怖が伝えられる

これに対し、2人の人物の発言が注目を集めている。

一人目は朴槿恵前大統領の最側近の発言。ユ・ヨンハ氏（弁護士）が1日に国内メディア「YTN」に出演し、その際の"捜査の恐怖"を口にした。特捜部に"目をつけられたら、終わり"と言わんばかりに。

なぜかというと…朴前大統領も今回の「特別活動費」関連で逮捕されたのだ。16の有罪判決のうちのひとつ。「国家情報院から特別活動費により不正に支援を受けた」というもの。そのカネを、個人的な服の購入費や医療費、家の管理費用に充てたのではないかという疑惑だ。

朴大統領側は大統領側は今でもこの点を否定している。

いっぽうで当時、特別検察官はこういうロジックで"責めて"きたのだという。

「朴前大統領におかれまして、使用された衣服代は3億ウォン（およそ3000万円）程度になるのですが、その3億を（政治スキャンダルの中心人物となった旧友）チェ・スンシルが代わりに（情報院からカネをもらって）負担しましたね。だからチェ・スンシルと大統領は経済的な共同体です。賄賂罪の共同犯罪です」

後にユ氏は検察側の捜査資料を見たが、結局「どの部分が不正に受け取った金から買った服なのか」は明らかにされていなかったのだという。

次期大統領夫人も「チクリ」

文在寅大統領もまた、任期末期で「検察捜査権廃止法案」を通そうとしている。強すぎる検察、を制御しようとするものだ。確かに5年の任期を通じて「検察改革」に取り組んできたが、捜査権自体を廃止にしようとするとは…「保身」と捉えられても仕方がない。

こういった流れのなかで、尹錫悦政次期権側からチクリと刺された。大統領のキム・ゴニ夫人の21日の"発言"が注目を集めたのだ。12歳年下の「美魔女」。自身も選挙期間中に「経歴詐称」や「ぶっちゃけ発言暴露」などのスキャンダルを経て"時の人"となった。

夫の当選後、保守系の「月刊朝鮮」誌が電話でインタビューを幾度も申し込んだが、拒否。「やりましょう」「やりません」というというやりとりが行われるなかで…記者側が強引に現大統領夫人たる金正淑氏の上記スキャンダルの話題を振った。「どう思います」と記者が聞いたところ、ポロッと答えたのだ。

「私は、自分の服は自分のお金で買います」

尹次期大統領といえば、その文在寅大統領時代に検察総長に抜擢され、結果として「検察改革」に反発して辞任した人物でもある。辞任時には「私は政治家の部下ではない」と言い放った。

さて、次期政権の心の内はどうなるか。

そして現政権側が目指す「検察捜査権廃止法案」について、「共に民主党」は「今月中に国会で可決、来月3日の文在寅政権最後の閣議での公布を目指す」と党議決定している。まさに運命の時、となりそうだ。

文在寅現大統領の夢、「穏やかな田舎暮し」は実現するだろうか。

• 退任後の新居完成を報じるYTN。4月21日