北朝鮮のW杯予選「不参加表明」 やっぱりツッコみたくなる”謎”

2019年アジアカップでの北朝鮮代表(写真:ロイター/アフロ)

北朝鮮がソウルで集中開催予定のカタールW杯アジア2次予選辞退を表明した。当初の予定では韓国で6月3日から15日まで集中開催で行われるH組予選に参加(コロナ禍によりホームアンドアウェーから日程変更)、韓国に2週間近く滞在する予定だった。

韓国側では6月7日に予定されていた南北戦への期待が高かった。コロナ時代前の2019年10月15日の対戦時には、かなりキツめの”アウェーの洗礼”を浴びており、リターンマッチとして見られていたのだ。

平壌での試合は「事前通知なしの無観客試合開催」だった点は知られたところだが、ほかにも「韓国側の陸路入国要請を無視」「韓国メディアの取材を一切許さず」「後に画質の落ちる試合映像をDVDで渡す」といった話があった。また、韓国選手団からは「現地では空港、ホテルなどで”タメ口”で話された」「試合中ずっと口汚い言葉で罵られた」などの証言も。試合は0-0のスコアレスドローで終わった。

高い注目度のいっぽうで、今回の「不参加表明」は煮え切らない印象だ。韓国内でこの報をスクープしたのは3日の「スポーツ東亜」。”複数の韓国サッカー界情報筋からの情報”として「北側がAFC(アジアサッカー連盟)に一方的に不参加を通告」と報じた。同媒体によると、理由は「北朝鮮国内での新型コロナ対策」であり、「AFC側への事前の相談はなかった」とも。これに関する大韓サッカー協会(公式サイト)からの正式な発表な5日午前時点ではまだない。

次に情報発信があったのが4日。韓国政府統一省からだった。「AFCは北朝鮮に再考を要請している」「北朝鮮の立場が最終確定すれば我々にも通告が来るだろう」「韓国政府はそれを見守る」。ただしこれも統一省関係者と出入り記者による「ぶら下がり取材」から出てきたもの。韓国統一省からの正式発表はない。

さらには北朝鮮から通告を受けたというAFCもこの報を公式には報じていない。つまり韓国ではさっぱり「どんな通告文だったのか」が報じられておらず、その具体的内容を目にしていないのだ。

じつは近年、韓国側にとって北朝鮮サッカー界からの情報確認は「お手上げ状態」だ。2019年10月の対戦時もそうだった。北朝鮮側の情報はすべて、AFCと北朝鮮側の交渉結果を知らされるだけ。待つしかない。確認に時間がかかる。「韓国からの陸路(板門店経由)による入国要請」については結局返事がなく、大韓サッカー協会は自らの判断(経由地中国のビザ獲得ギリギリの日程)でこれを諦めた経緯がある。

そして、さらに今回の「不参加表明」は北朝鮮側からの正式発表もない。「労働新聞」「朝鮮中央通信」には一切の記事掲載なし。4月5日に東京五輪不参加が発表された「朝鮮体育」にも関連のニュースはなしだ。

もし北朝鮮側が当局の決断として堂々と「コロナ対策のために外国での試合参加を見送る」というのなら国内外のメディアでそう宣言しそうなものだが。先日の東京五輪不参加表明に似た面もある。その際に話を聞いた大手紙「中央日報」の統一文化研究所所長のイ・ヨンジョン氏は「後に”参加”となる場合、立場を変えやすくするための処置だとも考えられる」と言うが…。

男子サッカー北朝鮮代表は1993年にドーハで行われたアメリカW杯予選で敗退後、98年、02年W杯予選には参加しなかった。93年時にチームの指導者だったユン・ミョンチャン氏は後に韓国に亡命し、「国際大会不参加は、ドーハでの結果が悪かったことも一因」と認めている。時の最高指導者金正日氏はかなりのサッカー好き(それもカウンターアタック好き)だったという。

その後、1998年のバンコクアジア大会に参加しつつ、03年秋のシンガポールでの国際試合から本格的に国際舞台への復帰を果たしてきた。今回の顛末は果たして? この先、AFCから「変更後の試合日程」と「不戦勝チームの勝ち点・得失点差の扱い」などが正式発表となれば、それが開催地・韓国にとっての「通達」となる可能性もある。

参考記事:北朝鮮の東京五輪不参加 ”表明文の怪” 北は後に態度を変える!?