北朝鮮の東京五輪不参加 ”表明文の怪” 北は後に態度を変える!?

平昌五輪では南北合同応援を行うなど積極的に参加した北朝鮮だが… 筆者撮影。

6日に日韓を駆け巡った「北朝鮮、東京五輪不参加」の報。

日本では関係者の「コロナだけではなく、政治的理由があるのでは?」という反応が報じられ、韓国からは「東京五輪を通じた南北交流が立ち消え」「不参加国のドミノ倒しが始まるか」といった声が挙がるなか…

ここでは日本のテレビが報じない少し掘り下げた内容を。

まずは今回の発表の形式が、一連の「金与正談話」や「韓国批判」、はたまた「金正恩員委員長の動向」などと違う点について。

日本にも伝わってくる上記のような北朝鮮発の情報は通常、官営メディア「朝鮮中央通信」や「労働新聞」で報じられるものだが…今回は「体育省HP」の「朝鮮体育」を通じての発表だった。4月5日に掲載され、翌6日の朝に韓国メディアが”発見”。これが大きく報じられていったのだ。

該当サイトのトップメージのキャプチャ
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サイト最上段のメニューバーのうち「体育活動消息」をクリックすると、別ウィンドウが開き、該当の「不参加表明」の記事が出てくる。

その短い全文の紹介を(お忙しければ、前半部分は斜め読みを)。

主体(チュチェ)110(2021)年 朝鮮民主主義人民共和国 総会 進行

主体110(2021)年の朝鮮民主主義人民共和国のオリンピック委員会総会が3月25日、平壌で行われた。

オリンピック委員会委員、体育部門、関連部門の活動家たちがここに参加した。

画像会議(リモート)の方法で行われた総会では、朝鮮民主主義人民共和国オリンピック委員会の主体109(2020)年での事業の総括と、主体110(2021)年の事業の方向について討議がなされた。

朝鮮民主主義人民共和国のオリンピック委員会委員長である体育相キム・イルグクの報告に続いて討論があった。

報告者と討論者は、朝鮮労働党第8回大会と党中央委員会第8期第2回総会で、朝鮮が体育先進国隊列に入るための課題と方向性が具体的に明らかになったことについて述べた。

彼らは、新しい五カ年計画により国際競技でのメダル獲得数を継続的に増やし、全国に体育熱気を高めなければならないと強調した。

総会では、今年の専門体育技術の発展のための基盤を整え、大衆体育活動を活発に組織進行するうえでの提起や、実務の問題が討議された。

朝鮮民主主義人民共和国のオリンピック委員会は、総会における、悪性ウイルス感染症による世界的保健危機から選手たちを保護するための委員からの提案に基づいて、第32回オリンピック競技大会に参加しないことを討議決定した。

該当ページよりキャプチャ、筆者編集
該当ページよりキャプチャ、筆者編集

日本や韓国で衝撃的に報じられたニュースの割には…最後にサラッと「東京五輪不参加表明」が行われただけ。それも記事掲載の10日以上前、3月25日の会議の結果を報じる中でのものだった。

”不参加表明文”は、過去記事に宣言内容を付け足しただけのものだった

もしや翌日に北朝鮮メディアでも正式に報じられているのではないか。

次にそんなことも思い、北朝鮮対外宣伝メディアであり同国官営メディアの記事が閲覧できるサイト「我々の民族同士」上で「オリンピック」と記事検索してみた。

ところが...結果は「逆」だった。むしろ過去に「怪しい」文章を見つけたのだ。3月26日の「労働新聞」の記事だ。

【報道】主体110(2021)年 朝鮮民主主義人民共和国 総会 進行

つまり、「東京五輪不参加表明」を行った4月5日付の体育省公式サイトの記事とと同タイトル。さらに記事を読み進めていくと、「不参加表明」までの内容がまったく同一だった。

”東京五輪不参加表明文”は概出の記事に末尾部分を付け足しただけだった――

国際的な注目も予想されるだろう、大きな表明にしてはかなり大雑把なのでは? そこのところを韓国の北朝鮮専門にぶつけてみた。

大手紙「中央日報」の統一文化研究所所長で、同紙北朝鮮専門記者として100回以上の訪朝経験があるイ・ヨンジョン氏だ。

――今回の不参加表明は、体育省のサイトを通じてのものでした。「朝鮮中央通信」や「労働新聞」によるものではありません。

「後に”参加”となる場合、立場を変えやすくするための処置だとも考えられます。あくまで官営メディアでは伝えていない、というかたちを残しておくのです。東京五輪の開催自体がどうなるか分からない。ましてや大会に対して中国やロシアもどう出るかも分からない。未知の部分が多い状況のうちに、国際社会に対して動揺を与えようと考えたのではないか。また一度不参加を表明して自分たちの値打ちを上げる。つまり電撃的な参加を演出する効果も考えているのではないか。そうとも受け取れます」

――さらに「表明」は、10日以上前の会議結果報告に付け足されたものでもありました。この時期の発表についてはどう見ますか? 

「文在寅大統領への揺さぶりでしょう。4月7日にはソウルと釜山の市長選が同日に行われています。文大統領は今年の3月1日の演説で「東京五輪を南北対話再開の場に」と切り出した。しかし、北はこれに賛同しないという姿勢を示したのではないか。そうも見ています。選挙の前々日に体育省のサイトで宣言を出し、前日に韓国メディアが報じるよう、タイミングを図ったのではないでしょうか」

7日、「IOC側には正式な不参加表明の通知は届いていない」との報道もあった。果たしてどうなっていくだろうか。ちなみに韓国では6月にサッカーW杯アジア2次予選での北朝鮮代表の訪韓が予定されており、この動向にも注目が集まっている。

平昌五輪の女子アイスホッケー会場での北朝鮮応援団。筆者撮影
平昌五輪の女子アイスホッケー会場での北朝鮮応援団。筆者撮影