長谷部誠のブンデス・アジア人出場記録更新。「抜かれた」韓国の反応は? 元同僚「あえて言うが、尊敬」

コロナ禍のドイツにあって、同僚と距離を置いてのインタビューに応じる長谷部誠(写真:代表撮影/アフロ)

309試合。

ドイツのサッカー・ブンデスリーガ1部アイントラハト・フランクフルト所属の長谷部誠が偉業を達成した。

同リーグでのアジア人最多記録だ。07-08シーズンにヴォルフスブルクに加入以降、3クラブで13年をかけ達成した。

これについて、韓国が反応を見せている。

「長谷部誠、車範根監督を超えブンデスリーガアジア最多出場記録をつくる」(スポーツソウル)

現サッカー解説者の車範根(チャ・ボングン/1953年生まれの67歳)の記録を更新した点で注目を集めているのだ。70年代後半からかの地で活躍した伝説的ストライカー。IFFHF(国際サッカー歴史統計連盟)、イギリスESPN、AFC(アジアサッカー連盟)がそれぞれ選出した20世紀アジア最優秀選手は、同リーグ通算308試合出場、98ゴールを挙げた。これは1999年にスイスのステファン・シャプイサに破られるまで、歴代ブンデスリーガ外国人選手最多ゴール記録だった。

つまり、このレジェンドの出場記録はとうてい破られない。そう思われたものだった。

韓国メディアはどう報じているのか。この点から長谷部誠の記録の偉大さを、また別角度から知ることが出来る。

冷静な論調多し。そこには悔しさとリスペクトが。

7日付の「スポーツ朝鮮」がこんな書き出しの記事を掲載した。

永遠不滅の記録などない。いつかは違う誰かによって変えられることは当然だ。ドイツブンデスリーガで30年以上維持されてきた“チャボム”の記録が破られた。日本の長谷部誠(36歳・フランクフルト)がブンデスリーガのアジア人歴代最多出場記録を更新した。長谷部は“チャボム”こと車範根前韓国代表監督がレバークーゼンで盛んにプレーしていた1984年に生まれた人物だ。

出典:フランクフルト長谷部誠「チャボム」を超え記録更新

それまでの記録ホルダー車範根は、78年から89年の間に308試合に出場した。

1978-79(1シーズン)ダルムシュタット 1試合 

1979-83(4シーズン)フランクフルト 122試合

1983-89(6シーズン)レバークーゼン 185試合

長谷部が在籍するフランクフルトとも縁が深く、ドイツでの最初の活躍をここで見せ、また息子のチャ・ドゥリも同クラブでプレーしている。

2014年ブラジルW杯前に韓国で放映されたフランクフルト再訪記。オール韓国語ながら、フランクフルトと車範根氏の馴染みの深さが感じられる。

そんな”日韓選手が交差する地”での今回の長谷部の記録更新を、他メディアも上記「スポーツソウル」と同様に淡々と報じている。

「日・長谷部、車範根超えブンデスリーガ亞最多出場記録」(ニューシス)

「チャボムの記録破られた... 日・長谷部、アジア人ブンデスリーガ最多出場」(京郷新聞)

冷静な論調に、少しばかりの悔しさも感じさせる。数は少ないが日韓のライバル意識を見せた記事も最大ポータルサイト「NAVER」に見受けられた。「マニアリポート」という媒体の「チャボムを超える日本人選手はいない」という記事だ。また、記事コメントにもピリッと刺激するものがあった。「チャボムの80年代の記録が破られるまで40年かかった。やはり偉大なチャボム」。「車範根は途中で徴兵に行っているのにこれまで出場記録を持っていたのは偉大」。

いっぽうで長谷部へのリスペクトも大いに示されている。記事に寄せられているコメントも全般的に「偉業を認める」というものが多かった。

「偉大な日本人選手。長くプレーしてほしい。韓国人選手の現地適応も助けているというし」

「(同じ時代に代表ボランチとして活躍した)奇誠庸(マジョルカ/スペイン)よりも起伏なくプレーしてきた点は偉大」

「正直なところ最近の日本人選手のことは知らないが、以前の選手は認める。本田、香川、岡崎、長谷部まではすべて実力も人格も備えており、韓国選手たちとも交流があって好感が持てる」

「ダルビッシュ有、本田圭佑と並んで称賛されるべき日本のスポーツ選手」

ヴォルフスブルク時代のチームメイトが、長谷部を大絶賛

長谷部はこれまで、韓国では決して有名な日本人選手、ということではなかった。筆者自身、韓国メディアとも仕事をしてきたが、関連情報の提供を常にリクエストされてきたのは「本田圭佑と香川真司」。攻撃的ポジションの選手がどうしても多くなる。

そんななか、大手メディアではないものの、このかたちでの称賛も今回の記録達成を韓国に知らしめた。元韓国代表ク・ジャチョル(アル・ガラファ/カタール)のYouTubeチャンネルだ。ヴォルフスブルク在籍に2011年からの2年間長谷部ともにプレーした。

一編をまるまる「ク・ジャチョルが語る長谷部誠」という内容でアップ。「驚くべき」と言えるほどに日本人選手・長谷部誠を絶賛している。

僕が一緒にプレーしてきた選手のなかで、性格、実力、などすべての面で見た時、もっとも尊敬できる選手が二人います。(パク)チソン先輩と長谷部です。

長谷部誠は、日本代表チームの主将でした。

でも2年間一緒にプレーしました。ルームメイトでもありました。

このふたりは似ているところがあるんですよ。人格者であり、サッカーも上手い先輩は多いのですが、僕は長谷部を見ながら「チソン先輩に似ているな」と思うことがありました。

長谷部誠はピッチ上を動き回る、そういうスタイルではないのですが、「崩れることがない」という印象です。チソン先輩のようにメンタルがかなり強い。そういった印象です。どんな状況でも「崩れない」。僕が見る限りの、2人の共通点ですね。

試合の流れや結果が上手く行かない。すると次のトレーニングでも引きずって、またミスしたりすることもあります。でも長谷部は凹まない。一日休むと、トレーニングではまた自信あふれる姿を見せるのです。それどころかミスしても不安な表情を見せないのです。堂々としている。トレーニングが終わってもまたそうで。そういう姿から多くを学びました。

一緒にいた頃には気づかなかったことなんですよ。でも振り返ると、なぜ長谷部がブンデスリーガでレギュラーとしてい続けてこられたのか。なぜまだフランクフルトが長谷部を必要とするのか。そこが分かります。

起伏がないのです。「一文字」と言ってもいいくらい。いいときにも調子に乗らないし、悪いときにも平然としている。「中間を見つけ出せる」とでもいいましょうか。

出典:ク・ジャチョル公式YouTube"ShootingStar"

だから自分も必要ならば日本人選手を助けようとした

この後クは、若干日韓のライバル関係に気を遣ったか、「あえて」という言葉を使いつつも、さらに長谷部を褒めちぎる。そしてその後「彼にやってもらったことを自分も取り組むよう心掛けた」のだと。

だから僕はあえて「尊敬」という言葉を使いますね。これほどまでの精神力を持っている選手は、アジア圏ではほとんどいないのではないかと思います。

今でも時折携帯のメッセンジャーで連絡を取り合います。

最初にドイツに行った時のルームメイトでした。何も知らない21歳の若造がヨーロッパに行って、そこで長谷部誠が本当によく助けてくれたのです。

当時は……自分にも変なプライドがあったのですぐに長谷部に対して「先輩~助けて~」という風には行けなかったのです。今となれば「は? プライド? それが何なの? 生き残ることのほうが大事」と考えられるのでしょうが、当時はそうではなかった。ただの「寂しい東洋人」だったのです。

そこに長谷部が声をかけてくれた。「ジャチョル、行くぞ」と。監督の話すドイツ語が分からない時も噛み砕いて説明してくれて。しかも「この単語は覚えておいたほうがいいぞ」なんて言ってくれて。

本来なら(ポジションが被るMFの選手に)やってくれなくてもいいことなんですよ。でも彼は違った。

だから僕はその後に、ドイツで別のチームに移ったんですが、そこに日本人選手がいて、助けを必要としていると感じたら、躊躇せずに自分から歩み寄って助けようとしたのです(YouTube画面上ではアウクスブルグで一緒になった宇佐美貴史の写真を掲載)。あの時、長谷部誠が自分を助けてくれたことがとてもありがたくて。

本当に多くのことを学びました。そしてありがたかった…まあ、この言葉は少し考えて使わないといけないんですけど。なぜならこれからも会うことはあるので! 本当に素晴らしい選手だと思います。

出典:ク・ジャチョル公式YouTube"ShootingStar"

元韓国代表選手による日本選手の大絶賛。5月7日に今回の出場記録更新を見越してアップしたと思われる内容が、6月8日現在10万7000アクセスを集めている。