【K-POP論】TWICEメンバーも受験。韓国の大学入試「修能(スヌン)」にはどんな科目があるのか。

賑わう会場前で最後に抱擁しあう受験生と母。ソウル市の景福高校前にて。筆者撮影。

当日、ソウル市内の試験会場前で日本メディアのカメラを見かけた。日本でも小さなニュースとして報じられたのではないか。

11月14日、韓国の受験シーズンが幕を開けた。日本の大学入試センター試験に近いイメージの「2020年度 大學修學能力試驗」が行われたのだ。

韓国では一般的に「修能(スヌン)」と呼ばれる。1993年よりアメリカのシステムを倣うかたちではじまった。私立大学も含め、多くの大学が参加し、年明け以降の各大学の2次試験への最初のステップに挑む。

受験生本人たちはいたってシビアな勝負だ。いっぽうでこの「修能(スヌン)」は季節の風物詩ともなっている。

毎年のように「試験時間に遅刻しそうになり、パトカーに乗せてもらう受験生」「高校の後輩たちの熱烈な応援」「試験会場前で祈る保護者の姿」などが話題になる。

会場入室期限20分前の様子。彼は会場へ向かう横断歩道を渡らず、警察に先導されて別方向へ。おそらく場所を間違った。この後パトカーに乗る。カンニング防止のために会場が直前に受験者に通知されるのだ。
会場入室期限20分前の様子。彼は会場へ向かう横断歩道を渡らず、警察に先導されて別方向へ。おそらく場所を間違った。この後パトカーに乗る。カンニング防止のために会場が直前に受験者に通知されるのだ。

いっぽうで、K-POP歌手にとっても、一般の韓国人として「通るべき道」となる。じつのところ、韓国では現在、大学合格者全体の80%が推薦入試によるもの(つまり「修能」の成績に関係なく合格)だが、例年「修能を受験する芸能人」「しない芸能人」が記事となる。

近年ではこういった芸能人が受験した。

2017年(2016年実施)

TWICE ダヒョン

G FRIEND シンビ、オムジ

MOMOLAND ナユン

宇宙少女 ウンソ

APRIL チェウォン

SEVENTEEN ディノ

PENTAGON チョン・ウソク

(BTS ジョングクは受験せず)

2018年(2017年実施)

Red Velvet イェリ

Wanna One パク・ウジン

NCT マーク

APRIL ナウン

2017年(2018年実施)

IZ*ONE キム・チェウォン

Golden Child チェ・ボミン

男性芸能人の徴兵時期や徴兵制度についてはかなり日本でも情報が伝わってきたが、この受験も”通るべき道”。

とはいえこの話題、「なんか大変そうだね」という話で片付けられてきたのではないか。今ここに、少し詳しい状況を。当日のタイムテーブル(韓国の入試センターサイトの翻訳)を基に、少し掘り下げてみよう。どんな科目があって、どう進行していくのか。

超名門校受験を描いたドラマ「SKYキャッスル」が今年年始に大ヒット。視聴率24%超え。(写真は公式サイトより)
超名門校受験を描いたドラマ「SKYキャッスル」が今年年始に大ヒット。視聴率24%超え。(写真は公式サイトより)

日本との違い。朝が早い! そして受験会場が「高校」

ここまでもこのテーマを幾度か取材してきた。「日本のセンター試験とはいくつかの違いがあるな」と感じてきた。

まずは日本の場合は基本的に大学が試験会場となるが、韓国は高校で受験する。本稿写真の現場も、ソウル市内景福宮近くの景福高校だった。そこに他校の2年生も集まって、「応援」が繰り広げられるのだ。なかには1年生から「受験現場の雰囲気を見に来たんです」という声も聞かれた。

続いて、日程部分。1日で最大7科目を済ませるため、朝が早い。2日に分けて行われる日本は近年、9時台スタートなのに対し、韓国は8時10分までに入室を済ませなければならない。受験の準備段階では、学生の多くが意外なほどに苦味の高麗人参をよく飲んでいるという点だ。体が暖まり、コンディションが整うのだという。

日の入り前(この日のソウルは7時10分)から開場前で高校の後輩たちの応援が始まった。筆者撮影
日の入り前(この日のソウルは7時10分)から開場前で高校の後輩たちの応援が始まった。筆者撮影

何より、受験科目に違いがある。時間割とともに、受験内容を見ていこう。

受験生 入室完了 - 08 : 10まで

1 国語 08 : 40 ~ 10 : 00 (80分) 45問

休憩- 10 : 00 ~ 10 : 20 (20分)

2 数学 10 : 30 ~ 12 : 10 (100分) 30問 

カ型、 ナ型※ のうちひとつを選択。短答型 30% 含む。

※“カ”、“ナ”は日本語の“ア”、“イ”に相当。

昼食- 12 : 10 ~ 13 : 00 (50分)

3 英語 13 : 10 ~ 14 : 20 (70分) 45問 リスニング 17問含む- 13:10より 25分 以内。

休憩- 14 : 20 ~ 14 : 40 (20分)

国語、数学、英語の順序で進み、途中に昼食が入る。ここまではシンプルな順序だ。

後輩たちに太鼓で応援されつつ会場入りする受験生。筆者撮影
後輩たちに太鼓で応援されつつ会場入りする受験生。筆者撮影

午後からは複雑な選択科目へ。

いっぽう、ここからは日本とは大きく内容が変わる。”社会科”は韓国史が必修。さらに「探求領域」という選択科目が続く。本入試制度が導入される1993年以前には、「暗記科目を重視しすぎ」という批判があり、最近では言語力、推理力、思考能力、資料解析能力、状況判断能力を試す問題が課されている。

4 韓国史 および 社会/化学/職業探求 14 : 50 ~ 16 : 32 (102分)  

韓国史(必須領域) 14 : 50 ~ 15 : 20 (30分) 20問

韓国史領域の問題を回収後、15 : 20 ~ 15 : 30 (10分)で探求領域の問題紙を配布。探求領域を受験しない者は待機室へ移動。

社会/科学/職業探求

試験 : 2科目選択 15 : 30 ~ 16 : 00 (30分) 20問 

社会/科学/職業探求(2科目め)

試験 : 1~2科目選択 16 : 02 ~ 16 : 32 (30分) 20

休憩- 16 : 32 ~ 16 : 50 (18分)

選択科目の受験順序は受験願書に明記される。また、受験の順番は探求領域別科目の順序に従わなければならない。

各選択科目の内容が興味深い。次のとおりだ。

社会   生活と倫理、倫理と世の中、韓国地理、世界地理、東アジア史、世界史、法と政治、社会・文化のうち最大2科目選択可能。※文系の学生が多く選択。

科学   化学1、生命科学1、地球科学1、物理1、化学2、生命科学2、地球科学2のうち、最大2科目選択可能。※理系の学生が多く選択。

職業   農業の理解、農業の基礎技術、工業一般、基本制度、産業経済、会計原理、海洋の理解、水産・海運産業基礎、人間の発達、生活サービス業の理解。※実業系高校の学生が多く選択。

社会科の選択で「東アジア史」がある。また、実業系高校のための選択科目がある点も日本との違いという点では目立つところだ。

直前まで勉強しつつ会場入りする受験生。筆者撮影
直前まで勉強しつつ会場入りする受験生。筆者撮影

”第2外国語”も試験科目! 日本語の受験者数は?

最後に、第2外国語もしくは漢文の試験がある。これもまた、日本とは大きく違う点だ。

5 第2外国語 / 漢文 17 : 00 ~ 17 : 40 (40分) 30 問

リスニングは実施せず。

ドイツ語、フランス語、スペイン語、中国語、日本語、ロシア語、アラビア語、ベトナム語、漢文から1科目を選択。

ちなみに日本語の受験者は2001年から09年はではダントツの第1位だったが、以降は新設のアラビア語、ベトナム語が1位となっている。理由は明確。「新しい科目は問題が簡単だから」。2022年以降は採点方法が変わることもあり、状況が変わると見られている。

受験生に「あたたまって」とカイロが渡される。そのほかウェハースなどのお菓子も渡されていた/筆者撮影
受験生に「あたたまって」とカイロが渡される。そのほかウェハースなどのお菓子も渡されていた/筆者撮影

一般の韓国人(イベントの現場で会う韓国ファンなど)と接していても、この受験科目を知ると、経験とピンと繋がる点があるのではないか。「そういえば、少し日本語を話す人が多いな」「歴史のことはやっぱりよく勉強しているな」といった点だ。

韓国の芸能人とて、苦しい受験を踏ん張って頑張ってきた。いよいよここから、日本での受験シーズンも始まっていく。