【日韓比較】ハリルホジッチはそもそもが”危険”。3月のAマッチ、W杯準備過程の”速度感”から考える

ウクライナ戦での日本代表ハリルホジッチ監督。韓国との比較から”監督像”をまとめた(写真:ロイター/アフロ)

大会直前以外最後のAマッチウィーク。韓国は2連敗

”ポーランドの対戦相手”として大きな注目を集めてきたこの3月の国際Aマッチウィークでの韓国代表。

筆者自身も韓国を通じてのポーランド分析に多くのパワーを使った。Jリーグが再開するギリギリのタイミング、かつ3月最終日に日韓比較からのAマッチウィークの振り返りを。”今回の韓国はどうだったのか”。そして”それと比較した時、日本はどういう状況なのか”。

シン・テヨン監督率いるチームの今回のテーマは「仮想スウェーデン、ドイツ」だった。日本が「仮想セネガル、ポーランド」を戦ったように。結果は2連敗だった。

■3月24日 ベルファスト 北アイルランド2-1韓国 (7分 クォン・チャンフン、20分オウンゴール、86分ポール・スミス)

■3月27日 ホジェフ ポーランド3-2韓国 (32分レバンドフスキ、45分+1グロシツキ、85分イ・チャンミン、87分ファン・ヒチャン、90分+2ジリエンスキ)

参考:【プレビュー】今週、ポーランドも”仮想日本”韓国と対戦! 大韓サッカー協会「昨年12月に対戦決めた」

韓国の速度感。時間がないからこそ、速く固める。

シン・テヨン監督、チームについての評価は、「株を下げたが、最後だからもはや見守ろう」というところ。29日のチーム帰国後、まず韓国メディアは2試合で5失点の守備陣について監督に問うた。監督はこう答えた。

「チーム全体で80%の完成度。当然守備の問題は認識している。5月のテストマッチでここは改善していく。今遠征での成果は大きかったが、”プランB”が上手く行かなった点は残念に思う」

プランB、とはベースとする4-4-2に対して、3バックを使うということだ。ポーランド戦の32分に失点を喫した後、36分にCBの1人が負傷。4-4-2に変更を余儀なくされた。

いうまでもなく、日本とはチームづくりの速度感が大きく違う。昨年6月に就任したシン・テヨン監督はこれが”実質5試合目と6試合目”。実際は12試合を戦っているが、うち2試合は就任直後に崖っぷちのW杯最終予選で「ただひたすらに突破だけを考えた」(同監督)ため、連続スコアレスドロー。あとは国内組ベースのE-1東アジア選手権3試合と、1月下旬からのトルコ遠征3試合(モルドバ、ジャマイカ、ラトビア)を行ったというところ。欧州組も合流し、監督の考えを伝えたゲーム機会となると、本当にわずかというところだ。2010年南アW杯以外は、「突貫工事」でチームを作ってきた韓国のことだから、これは毎度のことでもある。

日本はのんびりしている? 「試合開催形式」「明確なチームの中心選手のあるなし」に違い

こういった「速度感」が今回のAマッチウィークを通じて感じる点でもあった。具体的にはふたつ、思うところがある。

(1)開催地・開催時間について。

韓国は2試合ともに「アウェー」での開催とした。ベルファストでは小規模のスタジアムに2万人弱、ポーランド戦は5万5千の大観衆の前でのゲームになった。後者に至っては「韓国での中継時間が深夜になってでも現地の夜の時間帯開催」としたこともあり、相手への大声援があった。いっぽうの日本は「中立地」「日本の中継時間に合わせ、現地は平日昼の試合に」という方式にした。つまりスタンドは空席が目立つという状況だった。

一長一短ある。日本の方法には決して無視してはならない「おカネ(つまり放映権料、スポンサーフィー)」のメリットがある。そして「雰囲気に乱されずテストをやりきれた」ということ。

韓国も過去には欧州中立地での主催試合を開催したことがあるが、今回はより「本番のシュレーション」に取り組んだか。とはいえ、本大会では開催国や第三国のファンも会場を訪れるため、最近の大会では「圧倒的アウェー」という雰囲気はできにくいが。あるいはドイツサポーターはロシアまで大挙して訪れるか。考えどころだ。はたまたロシアにより近いポーランドサポーターのほうが現地を訪れるか?

あくまで両国の比較だけで見ると、日本のほうが「まだまだテスト期間」という感覚があったとも捉えられる。

(2)チームの「軸」のあるなし。

今回は特にポーランド戦を観つつ、「韓国を日本に置き換えて考えてみると......」と考える時間があった。すると日本についてこういう考えが巡っていった。

「チームの中心選手が見えない」。

韓国は前線のソン・フンミンを2トップの一角か、3トップの左サイドもしくは中央で使うのかという議論の核がある。そこをもって相手にどう向かうのか。パートナーを誰にするのか。そういう観点だ。

日本に置き換えた時、あれ? それはどこだろうと。古株は長谷部誠、長友佑都、吉田麻也あたりだが。そこがチームの軸? 前線、2列めにはパッと軸が思い浮かばない。本田圭佑や今回選出外の香川真司、岡崎慎司がその座に戻るのか?

直前まで競争を続けることがハリルホジッチの戦略なのか。あるいは意図せずそうなってしまったのか。むしろ中心選手の選定では韓国のほうが「後から来たのに追い越した」との感がある。こればかりはタレントが出てくるかどうかがもちろん重要だが、監督の手腕が反映される部分でもある。

今振り返る「前回大会のハリル」。大会中の策で大逆転評価を得た

だからハリルホジッチが悪いんだ、という具体的な批判論調は、より日本代表をつぶさに観ている他の書き手に任せる。ここではもうひとつ、少し違う角度の「日韓比較」の視点から情報の紹介を。

ハリルホジッチが前回のブラジル・W杯時にアルジェリア代表を率いた際のことだ。

グループリーグ第2戦で韓国と対戦している。

メディアとの関係は最悪だった。大会前から「アルジェリア協会からのW杯後の契約延長オファーを保留し続けた」という点から猛批判を浴びた。同時に「国内組軽視」「試合に出ていない海外組への過酷なまでの切り捨て」「代表招集時の厳しいトレーニング」にも。ハリルホジッチの言い分は、「個人や家族に攻撃が及ぶのは許せない」。

大会初戦のベルギー戦には1-2で敗れ、大会中の解任論まで出た。試合後のこの発言がひんしゅくを買ったのだ。

「ハーフタイムにもっと攻撃しろと指示した。にもかかわらず若い選手は経験不足なのかこれを実践できなかった」

しかし。

続く韓国戦では、5人のメンバーを入れ替えた。これで4-2の勝利を挙げている。「相手の弱点の守備陣の裏を突く」という方針が成功した。4ゴールのうち3ゴールは初出場の選手たちだった。ハリルホジッチは試合後、こう言い切った。

「彼らの闘志に期待した」。

続くロシア戦に1-1のドロー。ラウンド16ではドイツ相手に延長後半終了間際まで好勝負を繰り広げたが惜敗。そこで評価をひっくり返し、英雄となったのだ。ほんの最後の2~3試合での出来事だ。それも大会の途中で大胆な策を打ち、流れを変えている。

この時の実績が今の日本代表監督就任に大きく繋がったはずだ。直近のインパクトの強い実績から言うと、「最後の最後で結果を出すかどうか」が問われる監督だということ。最初からそういう監督にオファーをしたのだ。言い換えるなら「中間で解任しては、そもそもの意味がなくなるタイプ」でもある。彼の現在の成績に対する感情は別にして。

前回大会との比較でひとつ言えるのは、途中でメンバーを大幅に入れ替えながらも、まだスリマニ(のちにレスターで岡崎慎司の同僚となる)という軸がいた。韓国戦でもチームの流れを変える素晴らしい先制点をカウンターから決めている。今回はどうだ? という点だ。これさえも直前までの競争から作り出そうとしているのか、そうなってしまったのか。

2018年W杯へ向かう時間は、日韓の比較でいうと、従来の歩み「準備期間で安定する日本が、揉めながらも最後にまとまる韓国に本大会の成績面で逆転される」とは違う。日本に限っていえば、2002年W杯以降、ほぼ初めて「準備期間の安定」を捨てて臨む(ことになった)実験だ。ここ最近巻き起こるハリルホジッチ批判は、この実験をやりきるのか途中でやめるのか、という問いにもなる。