韓国代表監督解任  最終予選アウェー0勝の惨状、そして厳しい今後

解任された元韓国代表監督のシュテーリケ。最近はメディアを避ける様子もあったという(写真:ロイター/アフロ)

大韓サッカー協会は午後2時にソウル郊外パジュの代表チームトレーニングセンター(NFC)で技術委員会を開催し、ウリエ・シュティーリケ(ドイツ)の解任を発表した。後任は未定。韓国メディアでは「来月頃に決定では」との見通しもある。イ・ヨンス技術委員長も同時に辞任し、技術委員会が再任されるためだ。

13日に行われたワールドカップアジア最終予選A組第8ラウンド、アウェーでのカタール戦で3-2の敗戦を喫して2日。本日付の技術委員会開催は昨日あたりから韓国メディアでも大きく報じられており、解任は既定路線と捉えられていた。

韓国メディアの評価「各国に新しい歴史をプレゼント」

我慢ももう限界。世論やメディアにはそんな雰囲気があった。2014年9月から韓国代表監督に就任したシュティーリケの解任理由は明確。成績不振だ。現地のサッカー専門メディア記者は言う。

「コミュニケーション能力不足、無戦術、コーチンスタッフの管理能力不足。問題は山積みでした」

実際にこれまで、戦力分析官(チャ・ドゥリ)を含め6人のコーチングスタッフが「Kリーグ監督就任」や「年代別代表監督・コーチ就任」などで辞任していった。なかには「もうシュティーリケから学ぶものはない」と公言する者もいたという。

そんなチームが残した結果に対する評価はどうだったのか。「ニュース・エン」はこう評している。

”(2015年1月の)アジアカップ準優勝とワールドカップアジア2次予選で信頼度を引き上げたシュティーリケ監督は最終予選7試合で同じパターンの試合を繰り返しながら限界を見せていった”

”韓国は弱小国の中国、シリア、カタール相手にホームで渋いゲームを繰り広げ、なんとか1ゴール差で勝ち、アウェーでは一度も勝てていない。シュティーリケ監督は各国に新しい歴史をプレゼントした。史上初の中国アウェーでの敗退(2017年3月23日)により中国の”恐韓症”は崩れ、カタールも韓国に33年ぶりの勝利を挙げた”

実際にアウェーゲームではシリアに中立地のマレーシアで0-0と引き分け、イランと中国に敗れるなど厳しい戦いが続いていた。直近のカタール戦では、JリーガーのGKクォン・スンテ、元Jリーガーのクァク・テヒ、キム・ジンス、チャン・ヒョンス、ハン・グギョンを起用し、南野拓実のザルツブルグでのチームメイト、ファン・ヒチャンを1トップに据える4-2-3-1で臨んだが、2-3の敗北を喫していた。

これが早くも”ドーハの惨事”と形容されていることからも敗戦の衝撃度が伺える。そのほかに近年で別称がつく敗戦は06年ワールドカップ選のオマーン戦敗戦の「オマーン・ショック」、2011年8月の札幌ドームでの日本相手に0-3の惨敗を喫した「札幌大惨事」があるくらいだからだ。

サッカー専門誌「ベストイレブン」は自国のワールドカップ予選の状況をこう表現している。

”最終予選8戦目で勝ち点を追加するのに失敗した韓国はA組2位の座を守ったが、勝ち点は13ポイントに留まり、12ポイントのウズベキスタンからの『追撃圏』を抜け出すのに失敗した”

そもそも就任からして「肩透かし」だった

就任当初からシュティーリケは「肩透かし」の存在と捉えられてきた。

前任のホン・ミョンボ監督体制がブラジルワールドカップでグループリーグ敗退。それでもホンが指揮を執り続けることが韓国サッカー界の本来の願いだったが、大会前後のいくつかのスキャンダラスな報道(ホンの土地買収の問題を報じるなど)もあり、ホンはその座を辞した。

新体制づくりは02年ワールドカップでヒディンクを招へいし評価を大きく上げたイ・ヨンス氏を技術委員長に再任し、進められた。当然、オランダラインの再現が期待された。技術委員会が最優先で交渉に臨んだのが、2010年南アワールドカップで母国を準優勝に導いたファンマルバイクだった。2014年2月にドイツのHSV監督を解任されフリーの身だった。

しかし交渉は決裂した。理由はなんと、先方が「ヨーロッパに居住しながらの韓国代表指揮」を希望したからだったという。

その他、イタリアのチロ・フェラーラなどの名も報じられるなか、カタールのアル・アラビの監督を務めていたシュティーリケと契約を結んだ。就任時期は2014年9月。ブラジルワールドカップ後、すでに3カ月が経っており、技術委員会としては代表チームの活動空白時間をこれ以上避けたい狙いがあった。

現役時代はドイツ代表として80年欧州選手権、82年スペインワールドカップ準優勝、さらにレアル・マドリーで77年から85年まで活躍した実績がある。しかし指導者としてはユース世代のドイツ代表監督としての実績がある程度。中東でのキャリアは6シーズンに及んだが、一度も優勝経験がなかった。

「私が行かない方がいいのかもしれない」とさえ発言

そんな指導者に対し、筆者自身も韓国記者の冷めた態度を目にしてきた。「よく知らない監督が来て……」といった言葉を聞いた。また筆者から見ても、会見をスペイン語で行う姿はコミュニケーションの困難を感じさせた。いかにも堅牢なドイツ人がラテン言語を操る。フィジカルコーチがアルゼンチン人だったがために、”使用言語を絞る”という狙いだったという。

就任当初から選手に対しては「自由な発想でボールを持っていい。しかし、ボールを奪われない責任は持て」と説いてきた。2部リーグのゲームにまで視察に訪れる姿は好感も持たれた。2015年1月のアジアカップでは開催国オールストラリアに敗れての準優勝。一度は信頼度がピークを迎えた。

しかし時間が経つにつれ、評価が下降していった。特に2016年末、ワールドカップ最終予選に入ってからは「守備的」あるいは「レギュラー固定で競争がない」といった批判が沸き起こった。同時に批判を受けた際のシュティーリケ自身の態度の悪さもメディアに叩かれるところになった。2016年10月6日、ワールドカップ予選でカタールにホームで3-2の辛勝。5日後いアウェーのイラン戦が待ち構えていたが、その遠征前に「私が行かない方がいいのかもしれない」と発言するなど、もはや士気の低下は隠せない状況にあった。

通算成績は39試合で27勝5分7敗。総得点69、総失点24。勝率は69%だった。

今後はイラン、ウズベキスタンと対戦

逆にここまで解任されなかった理由は「大韓サッカー協会のトラウマ」にあったと現地メディアは指摘する。06年ワールドカップ以降、予選時期に監督交代がなかったことが一度もない。できれば4年間、一人の監督に任せたいと。

しかし決断は下された。韓国代表の残りゲームはこうなっている。

8月31日 ホーム イラン戦

9月5日 アウェー ウズベキスタン戦

なんとも厳しいカードが残った。イランは過去29試合を戦い、9勝7分13敗と大きく負け越す天敵だ。前回ブラジルワールドカップ予選でも最終予選最終ゲームをホームで戦い、敗れながらも辛くも得失点差で予選通過を決めたという苦い過去がある。イランが前節、予選通過を決めたことが韓国にプラスに作用するだろうか。この点は韓国の運命を大きく握るところだ。

いっぽう、ウズベキスタンには10勝3分1敗と分がいい。1敗は1994年広島アジア大会で同国が初出場・初優勝した際に準決勝で敗れた時まで遡る。過去、アウェーでも1勝2分(すべてワールドカップ予選で対戦)の好成績を残している。しかし同国とて、初のワールドカップ出場に向け、プレーオフなしのストレートインは当然狙いたいところ。8月31日の対戦結果にもよるだろうが、かなり高いモチベーションで臨むことは想像に難くない。

「まだ予選敗退の可能性は残っている」。監督解任の報で、現地メディア『スポータル』はこんな表現で現状を説明した。「しかし仮に敗れるなら韓国サッカー界の払う代償はとてつもない」とも。危機感は最高潮に達している。

近年の日本にはない「予選途中の監督更迭」をまたしても決断した韓国。それが吉と出るか凶と出るか。あるいはその時期は正しかったのか。そこに最終予選の「アナザーストーリー」があるのではないか。