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<新型コロナ>ワクチン接種 4月から高齢者接種「可能」5割台にとどまる = 全国662自治体独自調査

米重克洋JX通信社 代表取締役
菅政権は新型コロナワクチン接種の担当大臣を任命するなど、接種計画に力を入れている(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

JX通信社では、昨日国内で初めて新型コロナウイルスのワクチンが特例承認されたことを受けて、きょうから、自分がいつワクチンを接種できるかをアプリで簡単に予測できる「ワクチン接種予測プロジェクト」を開始した。

本プロジェクトは「人口の7割の接種が必要」とされるワクチンの接種機会がスムーズに確保できるかどうかや、スムーズに進まない場合ボトルネックがどこにあるのかを検証することを目的とした、データジャーナリズムのプロジェクトだ。データサイエンスを専門とする米イェール大学の成田悠輔助教授監修のもと、共同で進めている。

このプロジェクトの開始に先立ち、JX通信社では2月上旬に全国の基礎自治体を対象とした独自のアンケート調査を行い、13日までに662の自治体から回答を得た。今回の新型コロナワクチン接種計画やその準備状況をめぐる調査としては、公表されているものでは最大規模だ。

この調査で、国が進める4月からの高齢者向け接種について「4月に開始可能」と回答した自治体は5割台に留まったほか、接種の作業にあたる医療従事者について、約半数の自治体で調整が進んでいないなど、今回の「国家プロジェクト」のロジスティクス上の課題が明らかになった。

4月から高齢者向け接種「可能」5割台にとどまる

国は新型コロナワクチンについて、4月から高齢者への接種を開始し、3ヶ月程度で終えることを目指している。だが、調査では現時点で4月から高齢者の接種開始が「可能」とした自治体は56%に留まった。4月の高齢者接種開始が「可能かどうか分からない」「遅れる可能性がある」とした自治体は合わせて44%に上っている

※小数点以下は四捨五入
※小数点以下は四捨五入

自治体側の接種計画をめぐるスケジュール感は、現時点では国の目算よりも弱気であると言えそうだ。

担当する医療従事者の調整「全く決まらず」約半数

実際の接種準備にあたって欠かせない要素である、接種会場の選定と医師・看護師などの調整の進捗についても聞いた。その結果、接種会場については78%の自治体が「全て決まった」もしくは「一部決まった」とした。接種会場として、公共施設と診療所を併用するとした回答が多いほか、一部の自治体では民間事業者と連携して大型商業施設を接種会場とする計画もある。

一方で、実際に接種を担当する医師や看護師など医療従事者の調整について「全て決まった」とした自治体はわずか2%にとどまり、「一部決まったがまだ調整中」を合わせても54%と約半数に留まった。「全く決まっていない」とした自治体は46%に上り、接種会場と比べて調整が難航していることが窺える。

※小数点以下は四捨五入
※小数点以下は四捨五入

医療従事者の調整状況について内訳を見ると、町村では6割以上が「一部決まった」としているのに対して、一般市以上の自治体では半数以上が「全く決まっていない」と回答しており、人口規模に比例して調整に時間を要している可能性がある。

約2割の自治体が「越年」見込む

今回の調査では、準備状況に加えて各自治体が現時点で見込む、接種終了時期の見通しについても聞いた。

その結果「9月頃」終わるとした自治体が最多で31%だった。次いで多かったのは「年内には終わらない」とした回答で23%だった。東京五輪が開催される予定の7月よりも前に終わるとした自治体は2%、冬季に入る前の11月頃までに終わるとした自治体は約6割にとどまっている。

※小数点以下は四捨五入
※小数点以下は四捨五入

国の情報提供「不足」9割

このように、自治体が接種体制の確保を行うにあたって、国からの情報提供が十分かどうかも聞いた。その結果「十分だと思う」とした自治体は6%にとどまる一方「やや足りない」「もっと情報提供してほしい」とした自治体は合わせて94%に達した

※小数点以下は四捨五入
※小数点以下は四捨五入

定性的なコメントとして「ワクチンの供給量や供給時期を明確に示してほしい」との趣旨の意見が多数に上るほか「補助対象となる経費などの不明点が多い」「医師会への情報提供が遅い」「報道や不確実な情報が先行している」といった指摘も目立った。

あなたのワクチン接種時期はいつ?AIワクチン接種予測プロジェクト(リンク)

※アプリ内予測ページより生年月日、職業などの情報を入力することで、ご自身の接種時期予測を確認することが可能です。

JX通信社 代表取締役

「シン・情報戦略」(KADOKAWA)著者。1988年(昭和63年)山口県生まれ。2008年、報道ベンチャーのJX通信社を創業。「報道の機械化」をミッションに、テレビ局・新聞社・通信社に対するAIを活用した事件・災害速報の配信、独自世論調査による選挙予測を行うなど、「ビジネスとジャーナリズムの両立」を目指した事業を手がける。

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