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データで見る日本保守党の「善戦」― どんな人が投票したのか、独自調査で分析する

米重克洋JX通信社 代表取締役
(写真:アフロ)

4月28日に行われた衆院東京15区補欠選挙では、日本保守党公認の飯山陽氏が選挙前の下馬評を覆して「善戦」した。立憲民主党の酒井菜摘氏が終始リードしていた一方、他の4候補が小差で横並びの「2番手争い」を繰り広げたすえ、飯山氏は4位(得票率14.2%、2万4264票)につけた。

日本保守党は政治団体であり、国政政党ではないため選挙報道のうえでは「諸派」として取り扱われていた。こうした「諸派」の国政選挙初陣としては一定の存在感を示す結果となった。

そこで、今回は、投開票日1週間前に江東区内の有権者を対象にインターネットで実施していた情勢調査をもとに、どんな有権者が飯山氏に投票したのかを分析し、今後の日本保守党の支持拡大の可能性を読み解く。

調査の概要は末尾に記載した。

どの政党の支持層から得票したのか?

日本保守党は今回の東京15区補選が国政選挙の「初陣」だった。日本保守党の得票がどの既成政党を支持する有権者から多いのかを確認することは、今後の選挙での日本保守党の議席獲得の可能性を読み解くうえで大きなヒントとなる。

そこで、調査では有権者に「現在の支持政党」や、「前回2022年の参院選での比例代表で投票した政党」を聞いた。

まず、飯山氏を投票先に挙げた有権者が現在どんな政党を支持しているのかは下記の通りだ。

「支持する政党・政治団体はない」とする無党派層が半数近く、次いで自民党が2割弱と続く。国民民主党や日本維新の会を支持するとした回答もあった。また、「その他の政党・政治団体」を挙げた回答が2割あった。

日本保守党は政党要件を満たさない政治団体であり、調査の選択肢に含まれていなかった。このため、ここで「その他の政党・政治団体」を挙げた有権者の支持政党・政治団体は日本保守党である可能性がある。つまり、飯山氏の得票の2割程度が日本保守党支持者によるものとも解釈できる。

次いで、飯山氏を投票先に挙げた有権者が前回参院選(2022年)の比例代表でどの政党に投票したかを示すのが下図だ。

特に自民党、日本維新の会、国民民主党、参政党を挙げる有権者が多い。自民党は今回の東京15区補選に候補者を擁立していないが、日本維新の会、国民民主党、参政党の3党については、いずれも候補者を公認ないし推薦して選挙に臨んでいる。

この3党の普段の政党支持率の水準や今回の選挙結果も合わせて考慮すると、かつて3党に投票してきた潜在的な支持者のうち、少なくない割合が日本保守党に流出している可能性が見えてくる。

どんな政治的意見を持っているのか?

調査では、様々な政治的意見を例示し、それに対する賛否や共感の度合いを5択で聞いた。そのうち、特徴的な結果を以下の4つの図で紹介する。質問文における政治的意見の例示にあたっては、日本保守党を含む各政党・政治団体が掲げた政策を参考にしたほか、2003年から衆院選・参院選に合わせて実施されている東大・朝日新聞共同調査を参考にした。

図はいずれも、飯山氏の支持層と回答者全体(他候補を支持する有権者を含む)の違いを可視化するため、回答者全体に占める割合をグレーで、飯山氏支持層に限定した割合を紺色で示した

このように、日本の防衛力の強化に「賛成」、選択的夫婦別姓に「反対」の傾向が強い。これらをはじめ、日本保守党の訴える主な政策や飯山氏の主張と、支持層の回答は概ね一致する傾向が見られる。

加えて、「既存の政治家は自分のような人々のことをあまり顧みない」「現在の政党は既得権益にとらわれており、より直接的に人々の意思を代表するリーダーが現れてほしい」という意見に共感する割合が高い。つまり、既成政党や政治家への信頼が弱く、いわゆる大衆主義的な傾向がみられる点も特徴だ。

どんな情報源に接している?どんな生活をしている?

調査では、有権者が普段、政治や社会に関する情報源としてどんな媒体を使っているかについても聞いた。そのうち、特徴的な結果を以下の4つの図で紹介する。

全体と比べて、X(旧Twitter)、YouTube、Yahoo!ニュースを「よく使う」とした割合が高い一方で、テレビを「よく使う」とする割合は低く、逆に「全く使わない」「あまり使わない」とする割合が相対的に高かった。

特にYouTubeにおいては顕著で、飯山氏を投票先に挙げた有権者の7割近くが「よく使う」「たまに使う」とした。この割合は、飯山氏を含む上位5候補の中では突出して高かった。

加えて、調査では他の人と比べた自身の生活実感について、回答者自身がどのくらいだと思うかも答えてもらった。その結果を、飯山氏を含む得票率上位5候補の内訳が分かるように示したのが下図だ。

日本維新の会の金澤結衣氏を投票先に挙げた有権者は、4割以上が自らの生活実感を「中の上」以上だとしている。一方、飯山氏を投票先に挙げた有権者は自らを「中の下」だとする有権者の割合が上位5候補で最も大きかった。政治的主張は大きく異なるが、無所属で立候補した須藤元気氏を投票先に挙げた有権者も「中の下」以下を回答する割合が高かった。

より支持層の解像度を高めるため、有権者の最終学歴についても聞いた。その結果は下図のようになった。飯山氏を支持する層は、高校卒業までの割合と、大学院卒の割合が他候補と比べて多かった。

今後、日本保守党が勢力を伸ばす可能性は?

今回の結果を総合すると、飯山氏が下馬評を超えて得票した背景には、飯山氏や日本保守党の「保守」的な政策のみならず、最近の「政治とカネ」の問題をめぐる政治不信も大きく寄与した可能性がある。

また、今回の東京15区補選で飯山氏を投票先に挙げた有権者に占める自民党支持層の割合は2割弱と限定的だった一方、無党派層や他の政党の支持層から集票する割合が多かった。各社の出口調査でも類似の結果が得られている。このことから、来る衆院選の各選挙区でも、自民党候補の擁立の有無に関わらず、一定の得票をもって存在感を示す可能性がある。

本調査結果の一部は、4月28日(日曜日)にTBSテレビがCS/YouTubeで放送した衆院補選開票速報でも解説した(1:43:50頃〜)。

調査の方法
4月20日(土曜日)と21日(日曜日)の2日間、江東区内の有権者を対象に、大手リサーチ会社に登録したモニターを対象としたインターネット調査を実施した。909人から有効回答を得た。

JX通信社 代表取締役

「シン・情報戦略」(KADOKAWA)著者。1988年(昭和63年)山口県生まれ。2008年、報道ベンチャーのJX通信社を創業。「報道の機械化」をミッションに、テレビ局・新聞社・通信社に対するAIを活用した事件・災害速報の配信、独自世論調査による選挙予測を行うなど、「ビジネスとジャーナリズムの両立」を目指した事業を手がける。

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